りかさん

4037444208りかさん
梨木 香歩
偕成社 1999-12

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ようこは自分の部屋に戻り、箱を見た。お人形のおいてあった下には、着替えが幾組かたたんであり、さらにその下のほうにもう一つ、箱のようなものが入っている。開けると、和紙にくるまれた、小さな食器がいくつか、出てきた。「説明書」と書かれた封筒も出てきた。中には便せんに、おばあちゃんの字で、つぎのようなことが書いてあった。『ようこちゃん、りかは縁あって、ようこちゃんにもらわれることになりました。りかは、元の持ち主の私がいうのもなんですが、とてもいいお人形です。それはりかの今までの持ち主たちが、りかを大事に慈しんできたからです。ようこちゃんにも、りかを幸せにしてあげる責任があります。』…人形を幸せにする?…どういうことだろう、ってようこは思った。どういうふうに?梨木香歩・最新ファンタジー。


ようこがリカちゃん人形を欲しがったところ、祖母の麻子が送ってきたのは、りかさんという名前の日本人形だった。最初はガッカリするのだが、寝ている間に、その失望感をりかさんが祈りの力で浄化してしまう。りかさんは、不思議な能力を持ち、人間と意思疎通が可能な人形だった。

りかさんには取り扱い説明書がついていた。朝は着替えさせて髪を櫛でとき、柱を背に、座布団に座らせないといけない。朝食の用意までしなければいけない。昼食は要らないが、夕食にはおかずを一品。そして寝る時も着替えさせ隣に寝かさなければいけない。

かなり面倒な儀式のようになっているのだが、書かれていた通りの事を続けていたところ、りかさんの声が聞こえるようになる。

ようこの家のお雛様は、別々のセットだったものを、親が要るところだけ他所から持ってきて補充したため、調和が乱れておかしな事になっている。そういう人形同士の収まりの悪さも、今までは気づかなかったのだが、りかさんという存在によって、分かるようになってくる。

友達の登美子の家にも、祖父が集めて来た人形がたくさんあるのだが、そこでも人形の間で厄介な事が起こっているらしい。普通の人間には分からないけど、人形のいざこざが、人間にも影響したりするようである。

登美子の家から帰る時に、浅葱色の着物を着た小さな子がついてきてしまった。小さな子は背守を無くして探しているようだが、帰りたいと泣き出す。背守が無いと帰れないらしいのだが、帰るべき場所は登美子の家ではないらしい。

ようこの家のお雛様が抱えている問題は、祖母が持ってきたもので解決するのだが、小さな子は帰れないままで、最初の話が終わる。

次の話には、アメリカから来たアビゲイルという青い目の人形が登場する。これh、日米友好のために贈られた親善使節人形だった。しかし、この後、太平洋戦争が起こってしまい、青い目の人形は敵性人形として、大半が処分されてしまう。アビゲイルにも、悲惨な運命が待っていた。

それにしても12,739体も寄贈されて、334体しか生き残らないというのが酷い。人形を虐待したところで、アメリカには勝てないのに、馬鹿なのだろうか。アメリカに寄贈された日本人形の多くが生き残っているのと比べて、対照的である。

アビゲイルも、クズどもによる同調圧力が発揮された結果、悍ましい姿へと変貌してしまう。全員がクズではなく、中には人形を守ろうとした高島先生のようなまともな人間もいるし、人形を愛した比佐子のような優しい子もいるのだが。


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ワニ―ジャングルの憂鬱草原の無関心

ワニ―ジャングルの憂鬱草原の無関心ワニ―ジャングルの憂鬱草原の無関心
(2004/01)
梨木 香歩

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ジャングルでは沢山の命が生まれ、生きるために食べ食べられ、全てが夢であるごとく皆死んでいく。傲慢でジャングル一の嫌われ者のワニは仲間・兄弟さえ食べて生きてきた。だが…。自己中心と他者尊重の境界を問う一冊。


梨木香歩の絵本は、何で考えさせる作品が多いのか。絵本にはなっているけど、内容が大人味である。殺伐としたジャングルや草原の世界は、そのまま人間社会のアレコレを表しているようで、読むだけで生きるのが辛い。

自分の兄弟すら食ってきた、自己中心的なワニが主人公である。彼は自分がライオンの友達だと思っており、他の生き物を食って生きている。ある日、見つけたカメレオンを食おうとしたところ、カメレオンは同じ爬虫類で、仲間だから食うなと言われてしまう。

そんな事を言い出したら何も食えなくなるので、構わず食ってしまうのだが、腹の中からナカマ、ナカマと声が聞こえ続ける。堪らずワニは、ライオンに相談しに行くのだが……。

「ジャングルの憂鬱」と「草原の無関心」という、一言だけしかないシーンが途中で挟み込まれるのだが、無力感と無関心が滲み出ていて、いろいろと余計な事を考えさせられる。

一体、この絵本の中にどのような主張を込めようとしたのか謎であるが、自分の事しか考えないワニだけでなく、登場する動物が全て気持ち悪い。

同じ爬虫類だからというわけの分からない理由で、自分を食べるなというカメレオンも気持ち悪かった。その論理だと、人間も牛や豚などの哺乳類を食べてはいけなくなるではないか。一体、何処までが仲間で、どこから食べても良いのか。爬虫類も、哺乳類も、鳥類も、範囲を広げれば動物という仲間である。

純粋に食べ物の好き嫌いではなく、ある種の宗教としてベジタリアンになっている者は、野菜が同じ生物という仲間であるのに、トマトやキャベツは仲間だと看做さない。その線引きは、完璧に俺様ルールに基くものである。そうか、カメレオンの主張も、ベジタリアンのように胡散臭いから気持ち悪いと感じたのか。

人間は直接口にするわけではないけど、ワニのように他の人間を平気で食い物にする。何を喰おうと自分だけ良ければ構わないといったワニの生き様は、歪んで自壊を始めた資本主義みたいではないか。

ワニは一方的にライオンを親友だと思い込んでいるのだが、最後には自分もまたジャングルや草原を支配する論理に飲み込まれてしまう。油断してはいけない相手に気を許し、妄信してしまう姿は、まるで何処かの島国のようである。

自分が捕食される立場になるまで無関心を決め込む他の動物達も、キナ臭い世の中になっても何も反応しない無関心な小市民を表しているみたいで気味が悪い。

ジャングルの憂鬱は、残酷な修羅世界に産み落とされて、嫌でもその場所にいるしかないやるせなさを表現しているように思えて仕方がない。何でこの世界は、生物同士がひたすら殺し合うような、殺伐とした場所になっているのか。


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蟹塚縁起

蟹塚縁起蟹塚縁起
(2003/02)
梨木 香歩

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あなたがその恨みを手放さぬ限り…蒼白い月の光は、時間を超えたいくつもの魂の旅路を優しく照らし出す。幻灯のように浮かび上がる、静かな一夜の物語。とうきち自身気づかずにいた前世の無念は、律儀な蟹の群れと共に月夜に昇華される。幻想的絵本。


とうきちは、名主の馬鹿息子が沢蟹を捕まえて脚をむしり取っているのを見て、蟹を奪って逃がしてしまう。しかし、馬鹿親の名主に怒られ、「蟹を返せないなら牛を貰う」と、牛を奪われてしまった。

牛がいなくなっても、自分一人だけなら何とかなると思っていたら、いきなり押しかけ嫁がやって来る! しかし、横歩きしているので、すぐに蟹の恩返しだとバレてしまう。鶴と違って、相手が蟹だと、やはり微妙だよなぁ(笑)。

蟹嫁は要らなかったらしく、帰ってもらうのだが、嫁がたくさんの蟹に分かれていなくなった後も、用意してくれた朝食だけは残っていた。中にはドジョウ、タニシ、セリ、ゴボウが入っていた。

蟹嫁は帰っていったものの、蟹の大軍団は、牛を取り返そうと名主の家に押し寄せていた。牛を捕えている鉄の輪を切ろうとして、蟹たちが次々と死んでいく。とうきちは何とか止めさせたいと思うが、蟹たちは敷石の下に埋まっている何かを掘り出そうとしている事に気づいた。

地面の下に埋まっていたのは刀だった。刀身はボロボロになっていたが、触れた途端に、前世記憶を思い出す。とうきちの前世は七右衛門という武将だった。埋まっていたのは、七右衛門が最期まで使っていた同田貫正国という刀だった。

敵方に家臣が捕えられたので、駆け付けたところ、討ち死にしてしまったらしい。そして、七右衛門を殺した敵方の大将が転生した姿が、今の名主であると直感した。

旅の六部に自分の前世を聞いた事があるのだが、その時に「あなたがその恨みを手放さぬ限り……」と意味深な事を言われていた。前世の恨みというのが、目の前にいる名主だった。

前世でも勝ち組の大将で、転生してからも名主になるとか、ちょっと格差が酷くないか? 主人公は殺されて転生しても貧しい農民だというのに。転生しても格差が解消されるどころか、ますます拡大するばかりで、ちっともバランスが取れていない点が、負け組としては物凄く不満である。

お互いにごめんなさいをして、前世の因縁を水に流すのだが、恨みを晴らして一件落着とならない手堅い結末なのが、ちょっと好みに合わなかった。まんが日本昔話に時々混ざっている、暗い物語みたいだった。

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マジョモリ

マジョモリマジョモリ
(2003/05)
梨木 香歩

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春のマジョモリは花が満開。ある朝つばきは、森から届いた招待状を手に初めて森の奥へ。そこで出会ったハナさんとノギクやサクラのお茶でティーパーティー。後からもう一人来た女の子は誰? 「小さな女の子の時間」を描く。


ある朝、つばきが目を覚ますと、机の上に手紙が置いてあった。手紙には「まじょもりへ ごしょうたい」と書かれていた。まじょもりは、つばきの家のすぐ側にある神聖な森なのだが、入ってはいけないと言われている。

大人達は、その森の事を御陵と呼んでいるが、子供達の間では、まじょもりと呼ばれている。あまり奥のほうに行くのは怖いので、つばきは森の外側が見える入口付近しか知らない。つばきを誘う空色の蔓に誘われて、奥に向かう。普段は入ってはいけないところだが、今日は招待されたので、特別なのである。

森の奥には、緑色の髪をした美女が待っていた。つばきを森に招待したのは、彼女らしい。つばきはお茶に誘われるのだが、美女が持っていたお菓子はお供え用の御神饌なので、美味しくない。生クリームを挟んでクレープみたいにすると美味しくなるという話をするのだが、緑髪の美女は、生クリームを知らなかった。

つばきは急いで家に帰ると、母親に生クリームを作ってもらい、まじょもりの中に戻る。緑髪の美女に生クリームを渡すと、空色の蔓が、また伸びて行く。家では母親が、私も招待されたいと、子供みたいに泣いていた。そこへ手紙が届く。

まじょもりへご招待
大至急来られたし


つばきがまじょもりの奥で、生クリームのお菓子の準備をしていると、向うから知らない女の子が走って来た。新たに加わったふたばちゃんという女の子が名前を呼んだので、緑髪の女の人がハナさんだと分かった。

ハナさんはお菓子の準備を手伝ってくれないが、ふたばちゃんは手慣れていて、側から助けてくれる。ハナさんは、空中からお茶を出し、みんなの分を入れてくれる。

ハナさんは初めて生クリームを食べるのだが、全く知らない味なので、美味しいかどうか分かるまで一ヶ月はかかるらしい。ハナさんは笹酒という、今までにつばきが飲んだ事もない、不思議なものを出してくれるのだが、それは気持ちのすっきりする飲み物だった。

つばきは笹酒を飲み過ぎて寝てしまうのだが、まじょもりの奥にいたはずなのに、いつの間にか家に戻っていた。ネタバレする前に分かったけど、招待されたのに母親が全然出てこないと思ったら、そういう事かっ! ハナさんは森の精霊や魔女ではなくて、木花咲耶姫だった。


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ペンキや

ペンキやペンキや
(2002/12)
梨木 香歩

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しんやは小さい頃に亡くなった父親と同じペンキ屋になった。お客のもっとも望む色を探し出し、人々を幸せにするペンキ屋に…。一人の職人の一生を、異国的なタッチの絵と静かな言葉で奏でるファンタジックな本。


絵本なのに、またしても大人味。ペンキやの息子として生まれ、ペンキやになった男の人生。欧州で他界した父の墓を探して船に乗っている時に、謎の女性にユトリロの白で船を塗るように頼まれるのだが……。

知らない間に仕上がっていたユトリロの白。そして待ち受けていたのが、父と同じ運命。結婚して子供も産まれたので、満たされた人生だったのかもしれないが、この結末はハッピーエンドとして素直に受け入れられない。

結局、現世でどんなに足掻いたところで、上方世界で定められた運命からは逃れられないという事なんかね? あの不気味な女は、死神か?

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この庭に―黒いミンクの話

この庭に―黒いミンクの話この庭に―黒いミンクの話
(2006/12/13)
梨木 香歩

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雪のふる小屋にこもる主人公は、ある日、日本人形のような白い顔の少女に出会う。「この庭に」と、彼女が語りだす。「この庭に、ミンクがいる気がしてしようがないの」 不思議な魅力ある、もうひとつの「ミケルの庭」の物語。


何だかよく分からない、夢オチみたいな話だったけど、どうやら「ミケルの庭」というやつの続編らしい。また読む順番間違えてるじゃないかっ! 話が繋がっていたり、関連したりするシリーズならば、もっと判るように書いておいてくれよ。

で、検索すると「ミケルの庭」なんて本は見当たらない。さらに調べると、『りかさん』の中に含まれていて、読む順番は『りかさん』→『からくりからくさ』→『この庭に』という流れの様である。

後で、『りかさん』を借りてみたところ、「ミケルの庭」なんて入っていなかった。\(^o^)/ どうやら、「ミケルの庭」は、文庫版用に書かれた話のようである。図書館には単行本の『りかさん』しかないので、読めないではないか。



主人公が冬場に、窪地にある家を借りて住んでいる。冬場は雪が降り、家は埋もれてしまうのだが、オイルサーディンを食いながら、酒浸りの日々を過ごしていた。

ある日、不思議な少女が迷い込んできて、ミンクを探していると言う。自分のミンクがこの家の庭に迷い込んだという。少女は、ミンクを探してくれとミケルに頼む。半信半疑な話だったが、家の中までミンクが入って来たので、本当にいたのだと知る。

ミンクに餌をやってみたりするのだが、撫でようとすると指を噛まれてしまう。この本には須藤由希子の絵がついているのだが、基本的にほぼモノトーンなのに、いきなり目に赤いものが飛び込んできたから驚いた。図書館の本なのに、誰か鼻血を垂らしているじゃないかと思ったが、よく見たら印刷で、これはミンクに噛まれたミケルの指から流れた血だった。

ミンクにはミルクを飲ませていたのだが、いきなり立ち上がると口の中からオイルサーディンの頭を吐き出したりする。オイルサーディンは缶詰工場で処理されているので、頭なんて最初からついていない。

この辺りで、夢か現か曖昧な話になって、訳が分からない。まるで、村上春樹作品のような話である。何でミンクの口から飛び出たオイルサーディンの頭がくっついて、魚が動き出すのか? 主人公が「頭を外しなさい!」と命令すると、サーディン達は、自分の中に戻って来る。

突然、視点が変わり、母親達が高熱を出して寝込んでいるミケルを心配するシーンになる。ミケルはお気に入りだったミンクの襟巻きを無くしてしまった。

最後のほうで主人公の立ち位置がガラリと変わってしまい、よく分からない結末を迎える。なんか、「胡蝶の夢」みたいな物語だった。大人ミケルは子供ミケルの夢なのか。大人ミケルは未来の姿で、夢の中でリンクしたのか。子供ミケルのほうが過去の記憶なのか。夢オチの話なら結構あるけど、オチ以外は全て夢? みたいな変な話は初めてである。


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