よるのばけもの

4575240079よるのばけもの
住野 よる
双葉社 2016-12-07

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夜になると、僕は化け物になる。寝ていても座っていても立っていても、それは深夜に突然やってくる。ある日、化け物になった僕は、忘れ物をとりに夜の学校へと忍びこんだ。誰もいない、と思っていた夜の教室。だけどそこには、なぜかクラスメイトの矢野さつきがいて――。


夜になると化け物になるというのは比喩表現なのかと思ったが、本当に変形して異形の何かになるのか。真っ黒で六本の脚を持ち、目玉が八つもついている。どう考えても、地球の生物ではない。クトゥルフ神話大系に出てきそうな何かになっているのだが、この化け物設定があまり生かされないのが意外である。

宿題を学校に置き忘れたので、安達が化け物の姿で取りに行ったところ、何故か深夜の学校に、虐められっ子の同級生、矢野さつきが居た。化け物の姿をしているのに、何故か矢野は恐がる様子もなく、正体が安達であると見破ってしまう。

正体をバラされたくなければ、深夜の学校に来るよう言われてしまったので、翌日から通う事になってしまった。昼間は人間の姿なので、虐められっ子とは接点が無いのだが、夜休みの時間になると、一緒に過ごし、色々と話す事になる。

矢野さつきは、好きな呪文がファイヤ派なのかかメラ派なのか、ハリー・ポッターを観るのは映画派なのかDVD派なのか、ラピュタ派なのかナウシカ派なのか等、どうでもよいような事をよく聞いて来る。

教室がおかしな事になっているのに、良いクラスだなんて、教師は馬鹿と節穴とクズしかいないのは、現実と同じ感じである。虐めの最初のトリガーを引いているのが、矢野さつき本人だから仕方がない部分もあるのだが、虐めは無視までだろう。誰しも、嫌いな人間と無理に付き合わないくらいの権利はあるからね。しかし、それ以上は、虐めではない。物を壊したら器物損壊罪、物を隠したり捨てたら窃盗罪、暴力行為は暴行罪、傷害罪であり、全て犯罪だから。この国は、犯罪者を「虐め」の一言で片づけすぎである。

夜休みと、憂鬱な昼間の学校が、交互に語られるのだが、夜の学校で元田という生徒が化け物を見た事を聞かされる。元田は夜の学校に侵入して、化け物を捕まえようとしているらしい。

クラスメイトの靴がボロボロにされるという事件が起こるが、証拠もないのに元田は矢野さつきが犯人だと決めつける。元田はクズ野郎だ。というか、このクラスにはクズしかいない。夜休みの時間は良いのだが、このストレスばかりかかる不愉快な昼の時間は、後で綺麗に片付くのか?

夜の化け物は一体だけだったが、昼間はヒロイン以外の全員が化け物だった。虐めに気づいている教師ですら、「難しいことはいい、生き延びなさい。大人になればちょっと自由になれる」としかアドバイス出来ない化け物だった。確かに、大人になれば逃げる自由くらいは与えられる分、ひたすら耐えるか死ぬかの二択しか用意されない中学時代よりはマシと言えるかもしれないけど、それで事態が好転する訳ではないからね。

クラス内部の同調圧力によるファシズムが、そのまま日本の姿でもあるわけだし。学校の外に出たところで、この国は全員が同じ時期に同じ方向を向いて同じ事をするように、同調圧力で強制しているじゃないか。大人になって、クラスの外側に出られるようになり、ほんの少しの自由を得たところで、待ち構えているのは日本という名前の、より大きな教室でしかない。

何も解決しないどころか、この先は卒業まで酷い事になるのが目に見えているし、最後まで不快感が残る話のままだった。イヤミスと比べたらマシだけど、心が荒んで化け物になりそうだ。


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異郷の友人

4103367334異郷の友人
上田 岳弘
新潮社 2016-01-29

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阪神大震災を予言し、信者を増やす淡路島の新興宗教。イザナキ、イザナミの国生みの地で、新たな世界創世を説く教祖のもと、アメリカ西海岸から謎の天才ハッカー集団が訪ねてくる。彼らは何を企んでいるのか。すべてを見通す僕とは、いったい何者か?世界のひずみが臨界点に達したとき、それは起きた。世界の終末の、さらに先に待つ世界を問う、大注目の新鋭の集大成!芥川賞候補作。


第154回芥川賞候補作。

主人公の山上甲哉は前世記憶を持っている。前世だけでなく、それ以前も存在しており、全ての人生を完全に記憶したまま生きている。一度覚えた事は忘れないので、今回の山上甲哉という人生においては、かなり手抜きをしている。適度にサボるのだが、前世も現代という訳ではないから、今までに習得した歴史や物理、算術の知識が間違っていたりする事もあって、成績が下がって来る。

それでも、それなりの大学に受かり、それなりの食品卸会社に就職し、一般人として生活している。前世記憶を持つというのが本当なのか、それとも勝手に信じているだけの電波系の人なのかは、最後になるまで分からないのだが、前世では歴史に残る大物だったりするのだから、もっと頑張れば良いのになぁ。でも、何度も何度も産まれて来るのなら、毎回全力を出すのは嫌になってくるか。

今までの人生と違って、淡路島で新興宗教団体を興したSという教祖様と、スタンフォード大学に進学したJという野心家の男の人生がリンクしてしまう。相手は自分の事を知らないが、自分は相手の人生を好きに覗く事が出来るのである。

実際には会った事も無かったので、その二人が実在するのか、自分が勝手に作った脳内妄想に過ぎないのか分からなかったが、Jに関しては実在する事が分かったので、日本語でeメールを送り始める。

Jは日本語が読めない外国人だったので、スパムと思いそのままメールを捨てていたのだが、彼が裏組織に所属していたため、上司のEが奇妙なメールに気づいてしまう。Eは世界を本当に支配している者に成り変わろうという野心を持っており、転生を繰り返す山上甲哉の力を利用して世界を正しいあり方にもどそうと、日本までやって来る。

山上甲哉は人間ではなく、神ではないかという疑惑が浮かぶのだが、主要な人物が東北に集結しているところで、東日本大震災が発生して全てが終わってしまった。

何これ? 転生を続ける神の力で何かを始めるのかと思ったら、大震災に巻き込まれるだけの話じゃないか。エンタメ系の話かと思っていたのに、やはり芥川賞系統の純文学だった。他の人間の人生とリンクするような転生者を起用しておいて、こんなどうでも良い結末しか描かれないなんて……。

とりあえず、主人公の山上甲哉が電波さんなのか、本当に転生者だったのか、その結論だけは出たけど。


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年下のセンセイ

4344028783年下のセンセイ
中村 航
幻冬舎 2016-01-27

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みのり28歳。恋は3年していない。美味しい料理があって、気が置けない友達がいて、わたしの生活はどうにか回っている。そんなとき、通い始めた生け花教室で、8歳年下の透と出会い…。でも、この気持ちは封印しなければいけない。


題名がこんなのだから、教師物なのかと思ったが、本当の先生ではなかった。前カレに振られてから3年間、恋をしていないアラサー女子が、生け花教室の爺さん先生を手伝っている孫とフラグ立てる話だった。

中村航だからいつも通り、ストレスを感じずに読める胸キュン系の小説ではあるけれども、歳の差設定があざとくて嫌だなぁ。最近、高年齢負け犬女子が増えたからか、TVドラマでも、アラサー、アラフォー女子を好きになってくれる、とても都合の良いイケメンが出て来る話が増えているじゃないか。本書も負け犬女子に人気の出そうな作品ではあるけれども、個人的には「うわー、ないわー!」としか思えない。

20歳のイケメンは、小さい頃から生け花を習って育ち、今では生け花教室を手伝っているので、本当の先生ではないけれども、センセイと呼ばれている。名古屋にある大きな予備校に契約社員として働いているアラサー女子のみのりは、後輩に誘われて、生け花教室に通い始めたのだが、徐々に透センセイが気になり始める。

過去の恋が失敗に終わっている事と、相手との年齢差を考えると、そこから先へ進む事が出来ずにいたが、なんと、相手のほうも、みのりが好きになるというミラクル展開に! しかし、春になれば透は東京の大学へ進学して、名古屋からいなくなってしまうので、一夜限りの恋として封印する事に。

本当は両想いなのに、みのりに拒絶されてしまった透は、上京してからも悩み続ける事になるが、諦める事が出来ず、アプローチを続ける。こういう所は男前だよね。最近は草食男子化が進み過ぎて、イケメンでも打たれ弱いからな。一度断っただけで、フラグが折れてBAD ENDになると思う。

臆病になっていたみのりは、センセイが公園で行った渾身の生け花パフォーマンスに心打たれ、“愚か者のフットワーク”をやめてフラグを掴み取る事に。

こういうご都合主義な話、アラサー女子は好きだろ? 中には年上好きな男もいるけど、基本的に男が女に求めるモノは、美しさ、若さ、処女性の3種類だからな。

少なくとも、この主人公には内面も含めた美しさが備わっているようであるが、そこら辺に転がっている普通の負け犬女子には、年下イケメンとフラグが立ったりしないからな。有り得ないとは言わないけど、そこら辺に転がっている喪男なおっさんが、JKに拾われるくらいには低確率だと思う。

性格の悪いクズ人間も出て来ないし、ピュアな感じでストーリーも良かったのだが、フォースの暗黒面に堕ちた私にとって、これを素直に楽しむには、すでに魂が穢れすぎていた\(^o^)/


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ドール

4309024297ドール
山下 紘加
河出書房新社 2015-11-19

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僕はユリカを愛していたんです。愛なんです。先生とか、クラスの連中には、わからない愛。僕は真剣でした。真剣なことを、気持ち悪いなんて言わないで欲しい。時代を超えて蠢く少年の「闇」と「性」への衝動。第52回文藝賞受賞作。


第52回文藝賞受賞作。

文藝賞だからどうせオナニー作品なんだろうと期待していなかったのだが、意外に読めた。だがしかし、作者がオナニーする代わりに、主人公がオナニー野郎で気色悪かった。

母子家庭で暮らす人形フェチの根暗主人公が、大人用のドールを買って恋人代わりにする気色悪い話だった。DQNに絡まれ、プチ出戻りしたモンスター姉に部屋を奪われ、理不尽な目に遭うのだが、自分の境遇を変えようと戦いもせず、アサッテの方向に怒りをぶつけたり、さらに被害者を増やしたりするから鬱になる。

主要な登場人物全員がクズで、主人公すらキチガイだから救いが無い。可愛い系の表紙に釣られたが、こんな可愛い女子は全く出てこない。恋人代わりにするユリカだって、中途半端なやつを買っているので、きっとこんなに可愛くない。どうせなら某工業の愛ちゃんを買えと……おっと誰か来たようだ。


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小森谷くんが決めたこと

4093863849小森谷くんが決めたこと
中村 航
小学館 2014-07-30

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初恋相手が先生だった幼稚園時代。愉快だった小学生時代。暗黒面に落ちた中学生時代。悪友とのおバカな高校時代。美容師の女性と初めてきちんとした交際をした大学時代を経て、紆余曲折の後、憧れの映画配給会社に就職が決まる。しかし、そこで、彼に思わぬ出来事が出来してしまう--。作者が出会った、小森谷真というごく普通の男性の三十年近くに及ぶ半生の物語。


編集に紹介されたアラサー男性を取材して、彼の半生を描いた作品という事になっている。冒頭から、余命2ヵ月と言われたけど生き延びたという話をされ、彼が語る人生に引き込まれていく。

この物語の主人公となった小森谷くんが実在の人物なのか、実在の人物に取材して小説にしましたという形式の完全創作なのか不明であるが、内容自体は面白い。

両親の離婚により、母子家庭で育った小森谷くんは、幼稚園の先生に恋をしたり、ソロバン塾に通ったりしながら成長していくが、途中からDQN化してなかなか酷いな。

学校をサボってバイト三昧。バイクを買って山道を暴走したり、無銭飲食をしたり、不法侵入して夜のプールで泳いだりと、犯罪者の域に達している。

友人は一浪して中央の夜間に行くが、小森谷くんは勉強しないから二浪して、どこかよく分からん大学へ。そこでもバイト三昧で留年するし、かなりとんでもない奴だが、黒企業バイトを経てまともな映画関連会社に就職。今度は仕事三昧だったが、体調が悪いと思ったら、悪性リンパ腫で死にそうになる。

ごく普通の人の人生を描いたという事になっているが、普通の人は犯罪行為もしないし、致命的な病気にもならず、平々凡々と生きるよな。

かなり適当に生きているのに、まともな会社に就職したり、彼女もたくさん出来たりして、俺と比べたら日本人幸せランキングで8000万番くらいは上にいるじゃないか(汗)。小説としては面白かったけど、さほど努力していない割には、意外とイージーモードな人生で、なんか腹が立つ(笑)。


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デビクロくんの恋と魔法

4094060871デビクロくんの恋と魔法 (小学館文庫)
中村 航
小学館 2014-10-07

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やさしいけど、ちょっとへたれな書店員・光にはもうひとつの顔があった。夜になると、「デビクロ通信」という謎のビラを、全力でボム(配布)するのだ。そんな光に、ある日、運命的な出来事が訪れる―。圧倒的な多幸感に包まれる、この冬読みたい、新感覚ラブストーリー。


デビクロ通信という変なコピーを町中に撒いたり貼ったりしているデビクロ君は、ヘタレな書店員。いい年して、こういう中二病みたいな事をやっているのは、もしバレると社会的にいろいろと拙いのでは? コピーを撒いているところを見つけた安奈さんだけが、デビクロ君の正体を知っている。

ある日、デビクロ君は道で美女とぶつかって、恋に落ちる。安奈さんはデビクロ君の応援をするのだが……。すぐ傍に運命の出会いが転がっているのに気づかず、美女に向かって走り出すのが、読んでいて辛い。こういう奴は大切なモノに気づく前に横から攫われて本日のアンポンタンになって欲しい気もするが、やはり予定調和で終わるのか。くっそ、くっそ! リア充爆発しろ!

デビクロ通信1号から第364号(最終号)のうち、いくつかが載っていて結構面白い。


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おしかくさま

4309413331おしかくさま (河出文庫)
谷川 直子
河出書房新社 2014-12-08

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おしかくさまという“お金の神様"を信仰している女達に出会った49歳のミナミ。先行き不安なバツイチの彼女は、その正体が気になって…… “現代の神"お金を問う、文藝賞受賞作。


第49回文藝賞受賞作。

父親が女性の家に出入りしている事が分かり、不倫を疑った娘が後を付けるのだが、相手の家には女性がたくさんいた。父は不倫相手と密会しているのではなく、おしかくさまという存在を信仰する新興宗教で繋がった人々の集まりに参加していた。おしかくさまはお金の神様で、ネットを利用した詐欺行為だと思われたのだが……。

新興宗教に偽装した新手の詐欺なのかと思ったら、こっくりさんみたいな方法でおしかくさまと連絡を取って、会える事になる。指定された場所に現れたのはアイドル美少女みたいなおしかくさまだったが、通常では出来ない事をするので、本当に神か何かが宿っているのかもしれない。

定年退職した父親、父の浮気を疑う母親、相談された娘(妹)、そして離婚してから鬱病になって人生詰んだ娘(姉)と、時々視点が切り替わるので、少し読みにくかった。ちょっとだけしか登場しないのが残念だが、AKB風おしかくさまは神だった。(*´Д`)


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ピン・ザ・キャットの優美な叛乱

4309022057ピン・ザ・キャットの優美な叛乱
荻世 いをら
河出書房新社 2013-08-09

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六月、愛猫のあじが二度目の想像妊娠に入った翌週、ピンはやって来たのだが…新たな「猫小説」の誕生。


一発屋だと思っていた荻世いおらが3冊目を出していて驚いた。2冊目までがクソしょうもない純文学だったのに、純文学系によくあるどうでもよいオナニー駄文じゃなくて、物語として普通に読める作品になっていて、さらに驚いた。

猫が絡んでくる短編が3編。知り合いのAが“あじ”という猫を飼い始める話と、その続きで“あじ”の他に“平平”という猫も買い始める話。そして、猫を連れた不思議系の女の子と出会う話。

飼い始めた猫と共に、Aと恋人Bの関係も進展して行く。“あじ”は途中で病気になり、猫闘病小説になってしまうのが辛い。猫を中心とした人間関係が形成されて行き、そのうち結婚して子供も生まれる。傍から見れば決して勝ち組ではないのだが、それなりに幸せそうに見えるので悲壮感は無い。

ちょっと変わった女の子と出会う話のほうは、直接語られるのではなくて、当事者Mによって語られた事なので、どこまでが本当で、どこから脚色されているのか、嘘が混じっているのか、聞かされる側は判断出来ない。

雇われ店長をしていたマンガ喫茶を出たところで拾った二十歳くらいの女の子をお持ち帰りしたところ、仕事に行っている間に連れていた猫とともにいなくなってしまう。服はそのまま残されていたので、警察に相談したが、よく分からないまま有耶無耶になってしまう。

自分には見えない子供が絡んでくるのだが、怖い話ではなくて、相手が精神を病んでいる様である。自分の恋人の夢の中にも登場するので、ちょっと気味が悪いけど。

マンガ喫茶を辞めて結婚し別の仕事を始めるが、その女の子が子供の父親を探していると、前の職場から連絡が来る。脳内子供が生まれたのかと思ったら、本当に存在して、里子に出された後、虐待を疑われる不審な死を遂げていたという嫌な展開に。しかも、父親候補は7人もいるとか、メンヘラビッチすぎ。


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架空列車

4062177706架空列車
岡本 学
講談社 2012-07-06

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他者との関係を作ることができず、仕事も失った「僕」は、ひとり東北の町に逃げる。そこで「僕」は、架空の鉄道路線を妄想の中で造ることに熱中する。緻密な計算と実地見分を繰りかえし、理想の鉄道が出来上がったとき、思いもかけない出来事が町を襲う…。39歳理系大学准教授、衝撃のデビュー小説。妄想のなか、僕だけの列車が走りだす―。3.11後の世界を鮮烈に描き出す問題作。


第55回群像新人文学賞受賞作。

コミュ障の主人公が、仕事を失い東北地方に逃亡した。前払い2年契約で住まいを見つけて、ニート生活を開始する。お金は無いけど、自分を成長させるような娯楽は禁止というマイルールを作ったために、読書等は出来ない。

する事が無いので地図を買って来るのだが、道を覚えまくるうち、実際に走って確かめたくなって来る。引き篭もり生活だったのだが、自転車を買って外に出るようになる。そのままだったら社会復帰に向けて走り始めたように見えるが、自分だけの脳内架空列車を町に走らせようとするから、物凄く気持ち悪い話になる。

架空駅の場所を決め、時刻表まで作り、自転車を列車に見立てて、自分の脳内で架空列車の運行まで始めてしまう。様々な脳内路線を作り、自転車で運行させて楽しんでいたところへ、3.11が絡んでくるとは! 巨大災害に巻き込まれながらも、架空列車の運行再開しか考えていない主人公が、ひたすら気色悪い。

大切な何かを失ってしまった人々と、失う何かすら最初から持っていなかった主人公。より不幸なのはどちらだろう? 失った何かを架空だと感じてしまう主人公の闇の深さは、家族、仕事、家、財産などを持っていて当然だと思っている勝ち組には決して分からないだろう。


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問いのない答え

問いのない答え問いのない答え
(2013/12/09)
長嶋 有

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震災発生の三日後、小説家のネムオはネット上で「それはなんでしょう」という言葉遊びを始めた。一部だけ明らかにされた質問文に、出題の全容がわからぬまま無理やり回答する遊びだ。設定した時刻になり出題者が問題の全文を明らかにしたとき、参加者は寄せられた「問いのない答え」をさかのぼり、解釈や鑑賞を書き連ねる。そして画面上には“にぎやかななにか”が立ち上がる―ことばと不条理な現実の本質に迫る、静かな意欲作。それぞれの場所で同じ時間を過ごす切実な生を描いた、著者四年振りの長篇群像劇。


大震災後に小説家が始めた「それはなんでしょう」という言葉遊び。出題の意図が分からぬまま答えていき、後から問題がわかるという遊びなので、むしろハズしてしまったほうが答え合わせのときに面白い内容となる。Twitterを通じていろんな人が繋がっていく。各章で主人公が違うのだが、通して一本の流れとなっているのが良い感じである。

直木賞受賞の某作品よりも、こっちのほうがTwitterを上手く使っているな。こっちがTwitter小説のジェダイだとしたら、むこうはフォースの暗黒面に堕ちたTwitter小説か(笑)。

問題がわからないまま、先に答えを言うゲームは面白そう。本当に長嶋有がやっているのかと……。ゆるやかに繋がりつつも、現実世界で会ったりもするリア充の交友関係がよく描かれていると思う。俺みたいに現実世界に存在しているのかどうかすら怪しい非リア充は混ざることの出来ない空気が流れているけど(涙)。

シャアのアイコンを使ってしまい「少佐」で定着する人なんて、ツイッターあるあるだよね(笑)。出来ればネルコさんのアイコンは亞北ネルでお願いしたかった。


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銀行強盗にあって妻が縮んでしまった事件

銀行強盗にあって妻が縮んでしまった事件銀行強盗にあって妻が縮んでしまった事件
(2013/09/11)
アンドリュー・カウフマン

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ある日、カナダの銀行に紫色の帽子をかぶった強盗がやってきた。彼はその場にいた十三人から“もっとも思い入れのあるもの”を奪い、去り際にこんな台詞を残した。「私は、あなたがたの魂の五十一%を手に、ここを立ち去ってゆきます。そのせいであなたがたの人生には、一風おかしな、不可思議なできごとが起こることになるでしょう。ですがなにより重要なのは―その五十一%をご自身で回復させねばならぬということ。さもなければあなたがたは、命を落とすことにおなりだ」その言葉どおり、被害者たちに奇妙なことが起こりはじめる。身長が日に日に縮んでしまったり、心臓が爆弾になってしまったり。母親が九十八人に分裂した男性もいれば、夫が雪だるまに変身した女性も…。いったい、なにがどうなっているのか?


この銀行強盗事件を銭形警部が担当したら、きっとこう言うはずである。「奴はとんでもないモノを盗んで行きました。それはあなたの魂です」

題名と設定が突飛すぎるので思わず釣られたのだが、軽く読むと訳が分からない不条理系小説になってしまう。銀行強盗は、偶々運悪くその場に居合わせた人々から、とんでもないモノを盗んで行った。

自分にとって大切な何かを奪われてしまった人々は、いろいろと酷い目に遭ったり遭わなかったりするのだが、笑うせえるすまんみたいなBAD END直行ではなく、人によって運命が違いすぎるのが何とも言えない。

銀行では大切な何かとして、具体的な物で回収されてしまうのだが、もっと精神的身体的な面で、有り得ないような災難に見舞われる。心臓が爆弾になったり、母親が98人に分裂したり、子どもがうんこの代わりにお金を排泄するようになったり、出世したり……。をいっ! 運不運の格差が酷過ぎるじゃないか!!

語り手となる夫の妻は、銀行に居合わせたために、何かを奪われてしまい、背が縮みはじめる。そのまま幼女になるのかと思ったら、サイズが小さくなるだけだから、そのうちポケットに入る人形みたいになるのか。それ何て南君の恋人?

ただの不条理小説として読んだため、あまり良さが分からなかったのだが、訳者あとがきを読むと、現実世界のアレコレを比喩表現しているらしい。どうやら物語の表層だけを捉えるのではなく、もっと深読みしないといけないようである。

世界一のクソゲーであるリアル人生ゲームの不条理感を表現しているのだとしたら、BAD ENDか否かはその人のリアルラック次第なのも頷けるな。


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ぐるぐる七福神

ぐるぐる七福神 (幻冬舎文庫)ぐるぐる七福神 (幻冬舎文庫)
(2014/02/06)
中島 たい子

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恋人なし、趣味なしの人と関わるのが怖い32歳ののぞみは、ただ家と職場を往復する毎日。そんなある日、祖母の家でたまたま七福神の御朱印を発見した彼女は、週末にひとり七福神巡りを始める。恵比須、毘沙門天、大黒天と訪れるうちに、彼女の周りに変化が起き始めるが…。ぐるぐるお悩み中のあなたに贈る、読むだけでご利益がある縁起物小説。


元カレの死を知らないままでいた三十路女が、祖母の病気の件もあって、祖父がやり残した七福神巡りを始める。様々なモノに裏切り続けて神も仏も信じなくなった私には無縁だが、七福神巡りも読む分にはなかなか面白い。初詣すら数十年行っていないので、自分で菜巡る事は絶対に無いけど。

決められた期間でないと御朱印が貰えないので、意外に難易度が高そうだ。年に一度どころではなく、12年に一度のご開帳とか、かなり無理ゲーに近いものもあって大変だ。

自らの拙い理想論を押し付け、それに影響を受けた元カレがインドに行って消息を絶ったという知らせに、今ではすっかり現実に飲み込まれてしまった派遣社員の主人公は悶々とする。死体が見つかった訳ではないから、悲しむべきなのか、希望を持つべきなのか決められない。

七福神巡りをする現在の日常部分も楽しいのだが、過去の元カレエピソードにに想いを馳せるうち、相手の存在がどんどん大きくなっていくのも良い。ご都合主義的結末は用意されていないので、のぞみの歩いていく先に何が待ち構えているのか分からないけど、希望であって欲しいなぁ。


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大地のゲーム

大地のゲーム大地のゲーム
(2013/07/31)
綿矢 りさ

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私たちは、世界の割れる音を聞いてしまった――。大地はまた咆哮をあげるのか? 震災の記憶も薄らいだ21世紀終盤。原発はすでになく、煌々たるネオンやライトなど誰も見たことのないこの国を、巨大地震が襲う。来るべき第二の激震におびえながら、大学キャンパスに暮らす学生たちは、カリスマ的リーダーに未来への希望をつなごうとする。極限におかれた人間の生きるよすがとは何なのか。未来版「罪と罰」。


東日本大震災に影響されて大災害が絡む話を書きたくなったのかもしれないが、あまりにもペラくて驚く。首都直下型地震で壊滅的被害を受けた未来世界という設定が全く生かされておらず、早稲田大学を思わせる何処かの大学構内で、セカイ系のような狭い物語が展開される。

カリスマ的リーダーが指導する妙な洗脳系サークルに入っている女が主人公で、マッチョ系彼氏はリーダーの右腕。組織のリーダーは巧みな話術で学生を引き付け、影響力を増大させて行くが、再度、巨大地震がやって来る。マッチョ彼氏がいながらリーダーに心惹かれ、リーダーを容易く引き付ける美女マリに嫉妬するような主人公には全く魅力を感じない。

何処でも展開出来そうな小さな世界を描くのなら、巨大災害という大きな背景設定は要らないと思う。こんなの、大震災に巻き込まれた人が読んで気分悪くするだけの効果しかないのでは? 明らかに格上である「罪と罰」を持ち出して来て煽る販売者も意地汚い。原発が止まっている設定も安易。金儲け優先の自民党政権は、すでに原発使いまくる気満々ですが。世界一のドイツ人と違って、エコノミック・アニマルには脱原発なんか無理だと思う。どうせなら、ウランが枯渇して稼働できないという設定なら、まだ説得力があった。


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憤死

憤死憤死
(2013/03/08)
綿矢 りさ

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「命をかけてた恋が、終わっちゃったの! 」失恋して自殺未遂したと噂される女友達。見舞いに行った私に、彼女が語った恋の真相とは!? 綿矢りさの新たな魅力あふれる初の連作短篇集。


うーん、密林様で連作短編集と説明されているのだが、どこがどう繋がっているのか全くわからない。四編あるが、最初のは導入部分な感じなので、実際にはほぼ三編な仕様。

「トイレの懺悔室」は、キリスト教の真似事をして子供たちから弱みを聞き出そうとしてオヤジが、年老いてから逆にその中の一人に支配されていて気色悪い。主人公も誘い出されてトイレに閉じ込められ、使えなくなったオヤジの代わりにされるのはキ印臭が半端なくキモかった。

表題作「憤死」は、クラスヒエラルキーが下位の女子二人の話で、主人公を見下す友人と大人になって再会するのだが、性格の悪さに磨きがかかっていて堪らんなぁ。実際、自分をやたら大きく見せようとする嫌な奴ってよくいるけどね。

ラストの「人生ゲーム」は、世にも奇妙な物語っぽくて良かった。全部、このクオリティで仕上げてくれたら秀作だったのに。三人の小学生が人生ゲームで遊んでいると、兄の友達と思われる人物が現れて、ボードに印をつけてしまう。大人になり、そこに書かれていた通りの不幸が順番に襲ってくるのだが……。こいつらのリアル人生ゲームなんて、まだまだイージーモードじゃないか。ウルトラハードモードでプレイさせられている俺のリアル人生ゲームと交換して欲しいくらい。この程度で死亡フラグ立ててたら、「死んでしまうとは情けない」って、ドラクエの神官に怒られちゃうぞ!? 


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しょうがの味は熱い

しょうがの味は熱いしょうがの味は熱い
(2012/12/12)
綿矢 りさ

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仕事は別に苦じゃないけど、一生を捧げたいってわけではなし。そろそろ結婚もしたいけど、彼氏が運命の人って感じもしない。『勝手にふるえてろ』『かわいそうだね?』に続き、微妙な年頃の女性の行き場のない感情を独特の文体と飄々とした可笑しみで描き出す連作集。「しょうがの味は熱い」「自然に、とてもスムーズに」の二篇を収録。


二編入っているけど、登場人物は同じで前半戦、後半戦といった感じ。同棲中の二人を、女視点、男視点と切り替えながら物語が進んでいく。前半は同棲の話で、後半が結婚を巡ってプチ破局な感じになる。

最初は女のほうが全力で男人生にフリーライドしたがる嫌な感じの奴で、こんなに寄りかかられたら、そりゃ男は逃げるだろうといった感じの痛い言動なのだが、女が実家に戻ってからは、男のほうが頼りない感じでイライラしてくる。この二人は結婚しても絶対に破局すると思う。

もっさりした痛い主人公は、他の女流作家に任せておけば良いのに、と思ったのだが、視点や立ち位置切り替えで登場人物の印象が変化するのは、なかなか上手かった。


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ひらいて

ひらいてひらいて
(2012/07/31)
綿矢 りさ

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やみくもに、自分本位に、あたりをなぎ倒しながら疾走する、はじめての恋。彼のまなざしが私を静かに支配する――。華やかで高慢な女子高生・愛が、妙な名前のもっさりした男子に恋をした。だが彼には中学時代からの恋人がいて……。傷つけて、傷ついて、事態はとんでもない方向に展開してゆくが、それでも心をひらくことこそ、生きているあかしなのだ。本年度大江健三郎賞受賞の著者による、心をゆすぶられる傑作小説。


あまり期待していなかったのだけど、今回は本谷有希子作品に出てくる主人公くらい、ぶっ飛んでるのが良いな(笑)。クラスの男子に片思い中の愛ちゃんが、相手に彼女がいる事まで調べつつも、策を練り攻撃をしかける。彼女のほうにも近づいて友人関係となり、百合プレイとかなにこの俺得展開は(・∀・)

同性愛者ではないのに、勢いで相手を押し倒して、訳がわからない三角関係に。主要な登場人物全員が問題を抱えているが、愛ちゃんの性格が黒属性すぎて堪らんなぁ。恋は盲目と言うけれども、普通の人ならここまで暴走しないだろう。エンタメ風のしっかりとしたオチがあれば言う事無しだったのだが、ラストが文芸色の強いあやふやな終わり方だったのだけが残念。


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田中慎弥の掌劇場

田中慎弥の掌劇場田中慎弥の掌劇場
(2012/04/05)
田中 慎弥

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1600字読み切りで展開される著者初の短篇集は、怖ろしく、あり得なく、しかも美しく静謐な田中ワールド──。〈生老病死〉〈結婚・離婚〉〈殺人・自死〉など〝日常における非日常〟を味わえる37篇に加え、あとがきには自らの告白も収めた刺激的な一冊。毎日新聞西部本社版好評連載、待望の単行本化!


37篇も入っているが、「で?」って言いたくなるような、オチすらないどうでも良い話が多すぎる。オチがあっても「ふーん?」「だから何?」と言いたくなる様なつまらない終わり方だらけだった。なんでこんなどうでも良い話ばかり書くのか。ショートショートでも、星新一とは雲泥の差だった。


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マリアージュ・マリアージュ

マリアージュ・マリアージュマリアージュ・マリアージュ
(2012/11/30)
金原 ひとみ

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かたときも離れたくなかったのに――。結婚が運ぶ幸せと不幸せ。六つの短篇。二十歳のとき彼に出会い、二十一で結婚した。いっときも離れたくなかった。子どもが生まれ、いつしか私たちは冷えていった。やがて理想的な恋人を得て、ふと気づく。ほんとうは、夫とだけ愛しあいたかった――。結婚のあとさきをめぐる女たちのひりつく心。『マザーズ』でドゥマゴ賞を受賞の著者による最新短篇集。


評価がイマイチな感じだけど、芥川賞受賞作以外の初期作品と比べたら深みが出てきて読めるようにはなってきたと思う。6編入っているが、恵まれているはずなのに何が不満なのか、BAD END気味な結末へと向かっていく話が多くて疲れる。

金遣いの荒い年上女、不倫男女、子育て放棄して逃亡した挙句に離婚届を置いて娘を連れ去る馬鹿女など、萎えるような話が多かった。夢も希望も経済もデフレ・スパイラル状態で、未来の無い重力井戸へと落ち込むこの国においては、お前らみんな勝ち組リア充クラスタなんだよ! と、登場人物に言いたい。とりあえず今回も全くシンクロ出来なかった。


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夜蜘蛛

夜蜘蛛夜蜘蛛
(2012/10/24)
田中 慎弥

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日中戦争の傷を抱えながら戦後を生きてきた「父」が、昭和天皇の死に際しくだした決断とは。


今まで微妙作ばかりだったので期待していなかったのだが、今までで一番良かった。芥川賞系にありがちな自慰行為臭が無く、まっとうな純文学に仕上がっていて普通に読めた。毎回、このクオリティで書いてくれたらいいのに。

日中戦争で負傷した事のある戦前世代の父と、その息子の親子関係を描く。冒頭と最後だけが作家による文章で、大半は男が父について書いた手紙の内容になっている。

家族の生い立ちや日中戦争から始まり、老いた父との関係、そして昭和から平成に時代が変わりゆく頃の出来事が語られる。手紙形式なので地の文だけで物語が進んで行くが、男の語る内容に引き込まれるので読みやすい。


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私の中の男の子

私の中の男の子私の中の男の子
(2012/02/24)
山崎 ナオコーラ

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19歳で小説家としてデビューした雪村は、周囲から当然のように「女性作家」として扱われることに戸惑いを隠せない。性別なんて関係なく、作家として生きたい―。それからの雪村は、担当編集者の紺野と、仕事に意欲を燃やし出す。大学では時田という友人もでき、順調に仕事も増えてきた雪村だったが、またしても自分が「女性」であるがゆえの大きな壁が立ちはだかってきて…!?社会で働き、世界を生きるすべての女性に届けたい、著者随一の「生き方小説」。


いつものように浅くてペラい人々の人間模様だった。大学時代から小説家としてデビューした喪女系のもっさりした主人公が気色悪い。女である事を隠し、作家として評価されようとするのだが、周囲との人間関係がペラペラすぎて嘘臭い。物語の展開も、厨二病の女子中学生が頑張って考えました! みたいな感じのご都合主義だし。

喪女主人公、登場人物の関係性がペラい、どうでもいい感じでご都合主義展開と、毎度のパターンで萎える。人生の浮き沈みや波乱万丈展開とも無縁だし、「だから何? で?」って言いたくなるような、どうでもいい話を読まされてもなぁ……。


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佐渡の三人

佐渡の三人佐渡の三人
(2012/09/26)
長嶋 有

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「佐渡の三人」―佐渡行その1。おばちゃん(大叔父の奥さん)が亡くなった。儀礼嫌いの大叔父に代わり、なぜか私と弟、父の三人が佐渡にある一族の墓へお骨を納めに行くことに。「戒名」―ワンマンな祖母は生前に自分で戒名を決めてしまった。問題は字数が足りないことだ、と寝たきりの祖父母を世話する、ひきこもりの弟がいう。「スリーナインで大往生」―佐渡行その2。祖父が亡くなった。享年99歳9カ月。「惜しい!」「スリーナインだ」と家族は盛り上がって…。「旅人」―佐渡行その3。大叔父が亡くなった。祖母との「ダブル納骨」のため、父の後妻を含め一族7人が佐渡に集まった。…そして、「納骨」の旅はまだまだつづく。


四編入っているけど、登場人物は同じで時系列が進んでいく。おバカな感じな『エロマンガ島の三人』のシリーズ化かと思ったら違った。三人の中に一人だけ女性作家が混ざっているけど、性別を変えただけで中の人が長嶋有なんじゃないかと思ってしまう。

「佐渡の三人」は、おばちゃんの納骨に佐渡まで行く話。父と自分と弟で、まだ慣れてないので段取りが悪くてあたふたしている。続いて「戒名」は、祖母が勝手に戒名を決める話。「スリーナインで大往生」では祖父が亡くなり、再び佐渡まで納骨の旅に。最後の「旅人」では大叔父と祖母を納骨しに行く。

物語が進むたびに誰かが欠けて行く。事件や事故ではないものの、死人が出まくりである。


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共喰い

共喰い共喰い
(2012/01/27)
田中 慎弥

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女を殴る父と、同じ目をした、俺。川辺の町で暮らす17歳の少年。セックスの時に暴力を振るうという父親の習性を受け継いでいることを自覚し、懼れ、おののく…。逃げ場のない、濃密な血と性の物語。第146回芥川賞受賞作。


第146回芥川賞受賞作。

いろんな人に叩かれまくりんぐな感じであるが、中身が面白いか否かはともかく、ちゃんとストーリーがあって純文学してるし、他の芥川賞系オナニー作品と比べたら随分とマシじゃないのか?

DV男でロクデナシの父を持つ高校生が、その悪しき血を受け継いでいる事を自覚して行く、なんとも暗くて救いのない話だった。父と同じようになっていく自分をおそれるが、彼女同じような事をしそうになってしまう。

ある意味、父と母を同時に失ってしまうようなBAD ENDで萎える。とりあえず、こういうロクデナシ連中すらモテ期があるのが気に食わない。


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実験

実験実験
(2010/05)
田中 慎弥

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「俺が小説を書こうが書くまいが、他人にとってはどうでもいいんだよ。」文芸誌の新人賞を貰って四年が経った。結婚もして、本も出た。しかし小説一本の生活は想像していた以上に厳しかった。ある日、うつ状態になった幼なじみに会いに行き、ようやく次の小説のきっかけを掴んだ気がしたのだが―。


題名がこんなだから、また芥川賞系統のオナニー実験作だろうと思ったが、表題作は意外に読めた。売れない作家と鬱ヒッキーニート化した幼なじみの話なのだが、作家が意地悪すぎる。次の話を作るため、鬱病になっている幼馴染のキモニート君を煽って「頑張れ」と言い続け、追い詰めて行く。

キモニート君のほうも三十台半ばで童貞どころか女と関わった事も無い底辺だが、その底辺層を自分の肥やしにしようとする作家もクズである。両方が気色悪いが、脳内妄想垂れ流し系の意味不明作品ではなくて、一応はストーリー性のある話なのでまだ読めた。

どうやら死んでしまった男の話らしい「汽笛」はありがちな内容で、家族に出て行かれた駄目中年の「週末の葬儀」はどうでもいい感じの話だった。さして能力も無い初老の主人公が勝手に自分の人生を悪い方向に持っていくような話は全くシンクロ出来ない。外部からの悪意に晒されて、もっと酷い人生を過ごしている奴らがいくらでもいるんだYO!

話の内容には全く関係無いのに、三作品に共通して選挙が絡んでくるのは何故だろう……。


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犬と鴉

犬と鴉犬と鴉
(2009/09/30)
田中 慎弥

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三島&川端賞作家の最新作。空から落とされた無数の黒い犬が戦争を終わらせた。悲しみによって空腹を満たすため、私は図書館に篭る父親の元へ通い続ける。歪んだ家族の呪われた絆を描く力作。


力作というよりも、芥川賞系統作家にありがちな脳内妄想自慰行為的実験作だった。三篇入っているけど、全てがクソツマラナイ話ばかりだった。表題作は戦争の話なのだが、戦争の悲惨さを描いた作品なのかと思いきや、変な脳内妄想垂れ流し系で訳がわからないよ。

蔵書を処分しようとする父と、自分が読むと言い続ける子の職人の家系の話もハイパーおもしろくない。もう地団太踏みたくなる程度に面白くない。三番目の、近所で強盗事件があった話も、自分が犯人の役割を与えられたと思い込むキモニートが犯人にもなれず本屋で聖書を破るだけのなんじゃコレ!? 作品だった。

時間の無駄という域を超えてしまっている。これはもう人生の無駄遣いOrz


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少女は卒業しない

少女は卒業しない少女は卒業しない
(2012/03/05)
朝井 リョウ

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今日、わたしはさよならする。図書室の先生と。退学してしまった幼馴染と。生徒会の先輩と。部内公認で付き合ってるアイツと。放課後の音楽室と。ただひとり心許せる友達と。そして、ずっと抱えてきたこの想いと―。廃校が決まった地方の高校、最後の卒業式。少女たちが迎える、7つの別れと旅立ちの物語。恋愛、友情、将来の夢、後悔、成長、希望―。青春のすべてを詰め込んだ、珠玉の連作短編集。


卒業と同時に廃校となる女子高生達の物語。短編形式で主人公は変わっていくが、同じ学校、同じ時期で別視点となるので、他の話と絡んでいて面白い。先生に片思いしていた女子、中退してしまった幼馴染を見守る女子、答辞で告白する女子、進学先が分かれてしまったカップルなどなど、様々な視点で語られる。

どうって事の無い日常ばかりなのだが、他の話の絡み具合が計算されていて、結構凝っているのが良かった。甘酸っぱい青春の一ページばかりなので、もうずーーーーーーーーっと非リアで、現役時代も思い出したくないほどの暗黒時代だった我が身には劇薬すぎて非リア充爆発しちゃいそうになる(涙)。楽しい思い出のあるリア充なんて、みんな死んじゃえばいいのに(呪)。


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歌え! 多摩川高校合唱部

歌え!  多摩川高校合唱部歌え! 多摩川高校合唱部
(2012/06/20)
本田 有明

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混声合唱なのに男子が4人しか残らなかった合唱部。“元気だけが取り柄”の新入部員が押し寄せて―。「自分たちの先輩が作詞した課題曲を思い切り歌いたい」Nコン第70回大会に向けて奮闘した高校合唱部の感動物語。


視点変更が多くて落ち着かないし、物語に引き込むだけの文章力も無い。淡々と状況が説明されているだけで場面転換も多く、登場人物の描き方も不足しているので読んでいて退屈する。

実話を元にしているらしいが、これならドキュメンタリー風に書いてくれたほうがまだ良かった。素材は良さそうなのに、上手く料理されてないから残念な味になってしまった感じ。これでは感動が伝わって来ない。


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ぴんぞろ

ぴんぞろぴんぞろ
(2011/08/17)
戌井 昭人

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浅草・酉の市でイカサマ賭博に巻き込まれた、脚本家の「おれ」。まるでサイコロの目に導かれるように、流れ流され辿り着いた先は、地方のさびれた温泉街。「おれ」はなぜか、そこのひなびたヌード劇場で前説をする羽目になってしまう―。三味線弾きのルリ婆さんと、その孫のリッちゃん、現実感のないまま三人での奇妙な共同生活が続いてゆくが…。パフォーマンス集団「鉄割アルバトロスケット」で活躍中の新鋭が描く、平成“チンチロリン”放浪記。第145回芥川賞候補作。


第145回芥川賞候補作。

イカサマ賭博のために5年間もサイコロを振る練習をした馬鹿な知り合いに誘われ、半ば無理やりな感じで賭博場に連れて行かれた主人公。しかし小心者の知り合いはイカサマがすぐにバレてしまい、ショックで心臓が止まってしまう。

死体となった知り合いを担がされ、おっさんに事後処理して貰うが、暫く身を隠す事となった主人公が向かわされた先は鄙びたヌード劇場。訳がわからないまま芸人と間違えられ、仕事を手伝わされるのだが、仕切っていた婆さんが事故に遭う。

残された孫のリッちゃんを誘って東京へ連れて来るところで物語が終わる。芥川賞候補作によくある、賞狙いのあざとさは感じないので好感が持てたが、流されるまま受身の人生を送る駄目っぽい主人公には共感出来なかった。


「ぐらぐら一二」のほうは、仕事先で指を飛ばした男の脱力系な物語。指が無くなったのに淡々とし過ぎているし、自分の指を海に投げ捨てて終わってしまうのが微妙すぎる。


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こまんたれぶー

こまんたれぶー (新文芸シリーズ)こまんたれぶー (新文芸シリーズ)
(1996/03)
仁川 高丸

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初潮を迎えた小学五年生の少女、嬢。高級ナプキンを求めて、奇妙な旅へ。異常性愛者のオンパレード、ホモ・オカマ・オナベそしてペニスマン、予期せぬ出会いに導かれながら……。スーパーポップ傑作小説。


初潮に抵抗を感じる小学生女児から始まって、ホモ高校生にオカマおっさん、オナベと、マイノリティばかりが出てくるな。「高級ナプキンを求めて、奇妙な旅へ」とか書かれているけど、非日常展開は皆無だし、登場人物がマイノリティという点以外はごく普通の現実世界だった。ついでに、スーパーポップ傑作小説でもなかった。

高級ナプキンクエストに出る小学生女児はマセガキだし“こまんたれぶー”とか呼ばれ始めるし、訳がわからん(笑)。自らの性衝動を認めたくないホモカップル寸前なホモ男子高校生は暑苦しくて、中年オカマは不細工という、どうにも食指が動かない話だった。くぅっ、せめて女子高生百合カップルで、かよぽりすくらい美形なオカマだったら(をいっ!)。


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ただいま おかえりなさい

ただいま おかえりなさいただいま おかえりなさい
(2009/12/26)
戌井昭人

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文とイラストで綴る、喜怒哀楽の113話。ちょっとユニーク、不思議な本の劇場。


なんだこれは!? 超短編ばかり113話も入っているけど、なんか変な感じでどうでも良い話だらけだなぁ。多少は少し不思議系も混ざっているけれども、「で?」って言いたくなるようなどうでも良い話が多いのには参った。

多田玲子の絵がたくさん入っているので、ページ数の割りには早読み出来るけど、あんまり心に残るモノが無かった。非日常的シチュエーションで有り得ない結末だらけな分、日常系のどうでも良い話を書いた純文学よりは楽しめたけど。


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まずいスープ

まずいスープ (新潮文庫)まずいスープ (新潮文庫)
(2012/02/27)
戌井 昭人

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人間のバカさとダメさが凝縮!本当にまずいものって、世の中にそうそうない。でも、これはかなりまずいかもしれない。サウナへ行くと言ったきり、父が行方不明になった…。パフォーマンス集団「鉄割アルバトロスケット」の鬼才が放つ新潮流小説。


第141回芥川賞候補作。

題名が美味しく無さそうだったけど、意外に小説として読めた。不味いスープを作った直後に失踪してしまった父と、残された家族の変な物語。スープ自体には、さほど意味は無かった。

父いつもフラフラして、時々怪しげな仕事をしている困った人なのだが、数ヶ国語を話せるので、駄目人間というわけでもない。しかしやる事が無茶苦茶で、変なロシア人とハチミツの輸入をしていたら、いつの間にか銃の密輸入をさせられていたり、家で大麻を栽培したり、小学生の息子にバイクを運転させたりと、かなり非常識で危ない。

父に散々振り回された感じの息子が主人公なのだが、従妹のマーや、飲んだくれの母親も結構、困ったちゃんである。アメリカ人の妹がいる事を自分だけが知らなかったという仲間はずれっぷりには笑った。

それにしても、本谷有希子といい戌井昭人といい、劇団系統の人は面白いのを書くけど、芥川賞との相性は相当悪いようで、受賞出来ないなぁ。いつも、文章遊びだけで超ツマラン作品が受賞するからなぁ。


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