誰のための綾織

4562038896誰のための綾織 (ミステリー・リーグ)
飛鳥部 勝則
原書房 2005-05

by G-Tools

あの日、あの新潟の大地震の夜、私たちは拉致され、ある小さな島に監禁された。誘拐者たちは「おまえたちに、あの罪を認めさせるため」に連れてきたのだという。復讐だった。今にも私たちを殺してしまいそうな怒りだった。その夜、ひとりが木の枝で刺されて死んだ。しかし、私たちの誰も気づかずに、彼女を殺せたはずがないのだ。犯人はどうやって「そこ」に入ったのか。そして次のひとりが死んだ…。誰が生き残ったのか、そして誰が殺したのか。作中作に秘められた「愛」がすべての鍵。


ミステリーの禁じ手に挑戦してハズしている作品。読んでいてかなり違和感はあって、そう来るだろうとは思ったけど、作中に●●が存在しないなんてアンフェアすぎる。

物語の進行途中でも言い訳のように作者が登場しており、この構成がまた微妙。普通の物語ではなくて、誰か別の人物(設定では事件の当事者となった女子高生)が書いた話を飛鳥部が編集に見せているという構図。

盗作問題で絶版となったが、元ネタとされる作品を読んでいないので自分では確認出来ず。


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上石神井さよならレボリューション

上石神井さよならレボリューション上石神井さよならレボリューション
(2013/09/05)
長沢 樹

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成績不振の写真部員設楽洋輔は、眉目秀麗で天才で変態の岡江和馬の勉強指導と引換えに、鳥好きの美少女愛香の盗撮を請け負う。そんな中、人が不可解に消える事件に巻きこまれ・・・。必笑の青春ミステリ。


べ、べつに表紙のJKに釣られたわけじゃないんだからねっ! 

成績不振でクールな写真部男子が、学内屈指の美少女に専属カメラマンになるよう頼まれ、妙なフェチ保持者の天才イケメンには(*´Д`)ハァハァ出来る盗撮を頼まる。両方の依頼をこなしつつ、日常ミステリーに巻き込まれていく。

ミステリー自体は水に濡れず対岸に渡った方法や、走って逃げた相手がいきなり消えた理由など、かなりショボい事件を解き明かすので盛り上がりに欠けるのだが、キャラクター小説として読めば、なかなか良い感じである。主人公男子は醒めた感じだけど、よくいるヘタレ系じゃないし、美少女は天然系で男に媚びないし、天才イケメンは変態だし、地味可愛い系女子は羞恥プレイに目覚めるし、GJである。川に転んで水浸しになっても怒らなかったり、散らばった虫を拾って集めてあげるようなヒロインは、あんまりいないから堪らんな(*´Д`)ハァハァ

謎解き部分は、ちょっと無茶な展開をしたりするし、読者に対してあまりフェアではないので、ミステリ者には楽しめないかもしれない。美少女ヒロインが世界を狙えそうなくらい足が速いのに陸上部の誘いを断り、モデルにスカウトされるくらい可愛いのに誘いを断り、鳥の写真に拘り続ける理由が明かされなかったのは残念。設定未回収だし続編出たりする? せっかくの美少女なのに、全くフラグが立たなかったのだが、設楽洋輔は第三の女子狙いだったのか?



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真夜中のパン屋さん 午前2時の転校生

真夜中のパン屋さん 午前2時の転校生 (ポプラ文庫 日本文学)真夜中のパン屋さん 午前2時の転校生 (ポプラ文庫 日本文学)
(2012/12/05)
大沼 紀子

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夜が深まる頃、暗闇に温かい灯りをともすように「真夜中のパン屋さん」はオープンする。今回のお客様は希実につきまとう、少々変わった転校生。彼が企む“計画”によりパン屋の面々は、またもや事件に巻き込まれていく。重く切なく、でも優しい、大人気シリーズ第3弾。


0時に開店しているので、午前2時は3冊目になる。希実のクラスに腹話術の人形を抱えた怪しい転校生が!? 自己紹介で腹話術人形を使ったら、浮きすぎて高校生活が厳しくなるんじゃないの? 変な奴には関わらないようにしようと思う希実だったが、空いている席が隣だったので、いきなり話かけられる羽目に。

怪しい男子高校生はミミックだったこだまと腹違いの兄だった! という事は、父親は完璧主義者で嫌な医者、美作という訳で……。

希実は美作を逆恨みする相手に轢かれそうになったり、こだまの母が問題医者に入れ込んでいるのを何とかしようとしたら危険なモノが出てきたり、今回もトラブルに巻き込まれまくるのだった。


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完全なる首長竜の日

【映画化】完全なる首長竜の日 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)【映画化】完全なる首長竜の日 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)
(2012/01/13)
乾 緑郎

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選考委員が即決した『このミス』大賞受賞作! テレビ・雑誌各誌で話題、その筆力を絶賛された大型新人のデビュー作、待望の文庫化です。少女漫画家の和淳美は、植物状態の人間と対話できる「SCインターフェース」を通じて、意識不明の弟と対話を続けるが、淳美に自殺の原因を話さない。ある日、謎の女性が弟に接触したことから、少しずつ現実が歪みはじめる。映画「インセプション」を超える面白さと絶賛された、謎と仕掛けに満ちた物語。


第9回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作。

このミス大賞だけど、植物状態の人と対話可能な「SCインターフェース」というテクノロジーが登場するのでSFっぽい。自殺未遂で意識が戻らなくなった弟と対話を続ける女性漫画家が主人公となるが、次第に現実と仮想現実の境界が曖昧になって来る。

弟が現実のほうに侵食して来るのか、自分が弟の内面世界に引っ張られているのか分からなくなってくるのだが、「マトリックスや」「インセプション」みたいなネタだと、容易く結末が予想出来てしまうのが残念だった。

映画「インセプション」を超える面白さと絶賛された、謎と仕掛けに満ちた物語。とAmazonの紹介文にあるけど、さすがに「インセプション」は超えていないと思う。

漫画家として暮らす日常部分や、過去の島暮らし部分などもよく描かれているのだが、ラストだけは意外性が無かった。読み手が容易く予想する結末の、さらに上を行くようなサプライズがあれば神作品になれたかもしれないのに。

評価が微妙なのは、「このミステリーがすごい!」大賞受賞作なのに、普通のミステリーとはズレているからかな? 「このなんちゃってSFがすごい!」大賞受賞作(そんなものは無いが)だったら、もう少し評価されたかもしれない。

『今日の早川さん』的にクラスタを設定するならば、私はSF者であって、ミステリー者ではないので、個人的には楽しめた。ミステリー者だと、ミステリー成分が足りなさすぎて満足出来ないかもしれない。



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和菓子のアン

和菓子のアン (光文社文庫)和菓子のアン (光文社文庫)
(2012/10/11)
坂木 司

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やりたいことがわからず、進路を決めないまま高校を卒業した梅本杏子は、「このままじゃニートだ!」と一念発起。デパ地下の和菓子屋で働きはじめた。プロフェッショナルだけど個性的な同僚と、歴史と遊び心に満ちた和菓子に囲まれ、お客さんの謎めいた言動に振り回される、忙しくも心温まる日々。あなたも、しぶ~い日本茶と一緒にいかがですか。


主人公が和菓子の力で覚醒して凄腕の職人にでもなるお仕事小説かと思っていたのだが、どこにでもいそうな、ごく平凡でちょっと太った女の子の日常を扱った、和菓子屋さんミステリーだった。

高校は卒業したが進学もせず、このままではニート化するとバイト探しを始めた梅本杏子は、デパ地下にある和菓子屋に採用される。男性が苦手なので、男がいない店を選んだつもりだったが、イケメン社員が現れて困る。意地悪キャラなのかと思いきや、まさかイケメンが乙女男子とは(笑)。

最初は主人公の梅本杏子が小デブ設定なので萎えそうになったが、真面目に仕事に取り組むので高感度が上がった。客が持ち込む日常の謎を解くのだが、活躍するのは杏子じゃなくて中身がオヤジギャルな店長だった。

やはり、人が死なない癒し系の日常ミステリーは良いよね。トリック優先でパズルやゲーム感覚で人命が消耗して行くような、殺伐としたミステリーは、読んでいて心が荒む。雰囲気は大崎梢の本屋さんミステリーみたいな感じで、些細な謎を解くのが面白い。


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殺人鬼フジコの衝動

殺人鬼フジコの衝動 (徳間文庫)殺人鬼フジコの衝動 (徳間文庫)
(2011/05/07)
真梨幸子

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一家惨殺事件のただひとりの生き残りとして、新たな人生を歩み始めた十歳の少女。だが、彼女の人生は、いつしか狂い始めた。人生は、薔薇色のお菓子のよう…。またひとり、彼女は人を殺す。何が少女を伝説の殺人鬼・フジコにしてしまったのか?あとがきに至るまで、精緻に組み立てられた謎のタペストリ。最後の一行を、読んだとき、あなたは著者が仕掛けたたくらみに、戦慄する!


最後の一行を、読んだとき、あなたは著者が仕掛けたたくらみに、戦慄する! とか書かれていたので、ウィリアム・カッツの『恐怖の誕生パーティ』くらいの衝撃を期待していたのだが、どうやらキャッチが大げさすぎたようだ。こんな煽り方されたら、過度に期待してしまうではないか。『恐怖の誕生パーティ』はラスト1ページで本当に戦慄したけど。

殺人鬼となったフジコの狂気な人生が描かれているのだが、実際にあった出来事を小説として書かれた事になっている。書いた本人とは別の人間の手で語られるという形式なのだが、大半はフジコ視点で物語が進む。

親から虐待され、学校でも虐待されるフジコは、一家惨殺事件の生き残りとして、新たな人生を歩み始める。叔母さんに引き取られて成長するが、母親のようにはならないと反発しつつも、クソくだらない男に引っかかって、同じように破滅人生へと突き進んで行っているじゃないか。

両親や友人、知人、クラスの悪ガキ、馬鹿教師、付き合う男、義父、仕事の先輩と、これでもかという程、悪意のある人間ばかりが出てくる。というか、善人やいい人なんてこれっぽっちも出てこない。

悪意ある人間によってフジコの人生が狂わされ、フジコによって悪意ある人間の人生もまた狂わされ破壊されて行く。フォースの暗黒面に堕ちた人間しかいないのか。殺人鬼の人生を描いたノワール小説でありながら、周囲の人間も悪意ある人間だらけなので、フジコの悪行が相殺されてしまって、読んでいても嫌悪感が沸いてこない。

最初のほうは止むを得ずといった感じで、自らの身を守る為だったのだが、次第に自分の快楽を追及するために殺人鬼と化して行く。なかなか捕まらないが、日本の警察もそこまで馬鹿じゃないだろう。


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ラジオキラー

ラジオ・キラーラジオ・キラー
(2007/12/21)
セバスチャン・フィツェック

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その日が、彼女の人生最期の日となるはずだった。高名な犯罪心理学者でベルリン警察の交渉人イーラの心には、長女の自殺が耐え難くのしかかっていたのだ。しかし、ベルリンのラジオ局で起こった、人質立てこもり事件現場へと連れ出されてしまう。サイコな知能犯が、ラジオを使った人質殺人ゲームを始めようとしていたからだ。おまけに犯人の要求は、事故死した婚約者を連れてくるという不可解なものだった。リスナーが固唾を呑む中、犯人との交渉を始めたイーラは、知られたくない過去を、公共電波で明らかにせざるを得なくなる。そして事件は、思いも寄らぬ展開へと、なだれ込んでいくのだった…一気に読ませる、驚異のノンストップ・サイコスリラー。


交渉人のイーラは、自殺すると決めた直後、死ぬのを邪魔され、ラジオ局で起こった人質立てこもり事件の交渉を任されてしまう。相手は放送される番組を利用したゲームを行い、リスナーが失敗すれば人質を殺して行くと言うのだ。

一見、ただのキ印による占拠事件に思えるのだが、相手の目的が交通事故で死亡した事になっている恋人を探し出す事だと判明し、より大きな事件へと発展して行く。女性が一人死んだ事になっているのに、事後処理があまりにも不可解だし、犯人のところには、死亡事故発生後に恋人から電話がかかってきている。

交渉せず、強行突入して犯人を殺そうとする上層部に疑問を抱くイーラ。自殺するはずだったのに、とんでもない事件に巻き込まれて散々な目に遭っている。ハリウッドのジェットコースター・ムービー的展開で面白かった。



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青空の卵

青空の卵 (創元推理文庫)青空の卵 (創元推理文庫)
(2006/02/23)
坂木 司

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僕、坂木司には一風変わった友人がいる。自称ひきこもりの鳥井真一だ。複雑な生い立ちから心を閉ざしがちな彼を外の世界に連れ出そうと、僕は日夜頑張っている。料理が趣味の鳥井の食卓で、僕は身近に起こった様々な謎を問いかける。鋭い観察眼を持つ鳥井は、どんな真実を描き出すのか。謎を解き、人と出会うことによってもたらされる二人の成長を描いた感動の著者デビュー作。


ただのいい人と引き篭もり探偵の短編集か。日常ミステリーとなっており、人は死なないし、トリック優先主義もないので楽しめる。ミステリーとしては弱い感じで、初期作品だから最近のものと比べると拙い感じがするが、引き篭もり探偵の毒舌と、泣き虫ないい人が良い味を出している(笑)。

性格悪そうな美女に遭遇したり、好青年のフリをした目の不自由な青年、舞台役者に妙なものばかりプレゼントするおばさん、片言の日本語しか話さないお子様。日常的な事件を毒舌男が無理やりな感じで解決する。短編だけど、後の話とリンクして続いていくのも良かった。


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屋上ミサイル

屋上ミサイル (上) (宝島社文庫) (宝島社文庫 C や 2-1)屋上ミサイル (上) (宝島社文庫) (宝島社文庫 C や 2-1)
(2010/02/05)
山下 貴光

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屋上ミサイル (下) (宝島社文庫) (宝島社文庫 C や 2-2)屋上ミサイル (下) (宝島社文庫) (宝島社文庫 C や 2-2)
(2010/02/05)
山下 貴光

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大統領がテロ組織に拉致監禁されるという大事件がアメリカで発生していたものの―日本の高校生たちにとって、それは遠い国の出来事だった。それよりも、もっと重要なことがある。例えば、校舎の屋上でスケッチをすることだとか。美術の課題のため、屋上にのぼった高校二年生の辻尾アカネ。そこで、リーゼント頭の不良・国重嘉人や、願掛けのため言葉を封印した沢木淳之介、自殺願望を持つ平原啓太と知り合う。屋上への愛情が共通しているということから、国重の強引な提案で“屋上部”を結成することになった四人。屋上の平和を守るため、通行人を襲う罰神様騒動、陸上部のマドンナ・ストーカー事件、殺し屋との遭遇などに巻き込まれることになる。それらはすべて、ひとつの事件に繋がっていた!『このミステリーがすごい!』大賞2009年第7回大賞受賞作。


『このミステリーがすごい!』大賞第7回大賞受賞作。

この第7回は、選考委員の評価真っ二つで、かなり揉めたらしい。それで二作受賞となっているのか。片方はまだ読んでいないので、現時点ではなんとも言い難い。しかし、やはり密室で決まってしまう胡散臭さは感じるよなぁ。どちらかの選考委員が病欠したりしたら、バランスが一気に崩れて片方が泣きを見るという事だからね。芥川賞ほど世間とのズレは無いものの、読者より先に選考委員受けしないと駄目だというところが……。かなり主観入るし、結局、好き嫌いになってしまうからね。

アメリカで大統領拉致監禁という大事件が発生しているのに、それとはほぼ何の関係も無く、屋上を舞台にした物語が進行して行く。屋上に絵を描きに来た女子生徒や、不良っぽい少年、屋上から好きな子を覗いているストーカーっぽい少年等が集まり、屋上部として活動を始める。

しかし、殺害されたと思われる人物が写った写真を拾ったり、誰かが置き忘れたらしい本物の銃をたまたま拾ったりと、選考委員にも指摘されている通り、かなりご都合主義な部分がある。話が盛り上がり始めるのも遅いし、面白いからという理由だけで自分達から事件に首を突っ込んで行くのが嘘臭いなぁ。

様々な事件がバラバラに発生するのだけど、これがなかなか繋がらない。死体写真の謎も、何故か置いてあった銃の謎も、ラスト付近まで結びつかないし。主人公の弟が何者かに襲われたり、ストーカーっぽい少年が別のストーカーと間違えられたり、変な都市伝説を作っている犯人やら、いきなり追いかけて来る殺し屋とか、無関係に思える出来事がバラバラになりすぎていて、なかなか物語の核心が見えて来ない。これが伊坂幸太郎のように、ラスト付近で一気に繋がれば凄いのだが、ようやく束ねたという感じでスマートじゃなかった。


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サイコブレイカー

サイコブレイカーサイコブレイカー
(2009/07/06)
セバスチャン・フィツェック

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犯行は、クリスマスイブの前夜に再開された。現場は、ベルリン郊外の精神病院。若く美しい精神科医が何者かに襲われ、サイコブレイカーの被害者に似た状態で発見されたのだ。その数週間前から、若い女性の精神だけを次々と破壊する事件が勃発、その犯人は“サイコブレイカー”と呼ばれ、住民に恐れられていた。猛吹雪で閉じ込められた職員と患者たち。彼らは団結して身を守ろうとするが、一人、また一人と姿を消していく―。しかし、この事件そのものが、実はある心理学実験のためのカルテに書かれた物語なのだ―。ノンストップ・サイコスリラー。


精神病院前で記憶を失っていた男は、そのまま病院に入れられるが、大雪の日に病院前で救急車が横転し、ある人物が運び込まれて来る。彼は、何故か自分で自分の喉を切り裂いていた。

雪で隔離されてしまった病院で、美しい医者が精神を破壊され、恐ろしい一夜が始まる。相手は、今までに三人もの美女を殺したサイコブレイカー。一体、どうやって殺したのかは不明だが、体を傷つける事無く、精神を破壊して相手を殺すという、とんでもない力を持った正体不明の殺人鬼である。

これは何者かが書いた小説であり、被験者はその内容を読まされるだけという、一見すると入れ子構造式の物語になっている。裏の解説で思いっきりネタばれしており、これは面白さが半減してしまったなぁと思いつつ読み進めると……。

何この呪いのビデオならぬ、呪いの文章設定は(笑)。読んでも大丈夫とか言われても、後味の悪さが残るよなぁ。さりげなく別作品ともリンクしているのだが、いつものような、作者にしてやられた感が無いのは何故だろう。


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フェイスメーカー

フェイスメーカー

事故で顔面に重傷を負った女性記者カーリーの顔は、天才的形成外科医の手で見事に修復された。だが彼女はほどなく医師のいかがわしい前歴を知らされる。そして、自分と同じ顔を与えられた女が存在し、しかも彼女が行方不明になっていることも―。医師は完全無欠の顔を作り出し、自分の名を不朽のものにしようとしていたのだ。真相を知りかけたカーリーに、医師の魔の手が迫る。


事故で潰れた顔を、天才形成外科医の手で美しくしてもらったカーリー。しかし、自分に与えられた顔が行方不明になっている女のものだと知る。美人になったとしても、それが誰か別の人の顔だとしたら、これは怖い(笑)。

自分の顔が誰か別の人の顔というだけでも気味が悪いのに、同じ顔を与えられた女性が四人もいて、殺されたり行方不明になったりしているとは……。

形成外科医ラヴァルの暗黒面に気づいてしまったため、この世から消されそうになるカーリー。追い詰められるも、最後はアッサリしすぎな結末。カッツ作品にしてはハッピーエンドっぽいけど、もう一捻りサプライズが欲しかった。

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マンハッタン連続殺人

マンハッタン連続殺人

真夏のニューヨーク。ウェスト・サイドのアパートで、若く美しいひとり暮らしの女性が一人、また一人と殺されていく。いずれも心臓を一突きされて。被害者は加害者を自室に入れ、もてなした気配がある。暴行、抵抗の形跡なし。現場に残された紙粘土のゴンドラが意味するものは?自信たっぷりの殺人犯の挑戦にふるえあがるニューヨーク市民!『恐怖の誕生パーティ』『コパーヘッド』で人気沸騰、ウィリアム・カッツが放つ最新サスペンス。


真夏のニューヨークで起こる連続殺人。被害者は抵抗するどころか、犯人をもてなした形跡すらあるのに、捜査は難航する。犯行現場に必ず残されている紙粘土のゴンドラは一体!? 警察が彼のすぐ側まで迫りながら、気づかないもどかしさ。

連続殺人鬼は最初の1ページから登場しているので、読者が推理するタイプの小説ではない。彼のターゲットとして目をつけられてしまった女性との心理戦になる。


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カラフルな闇

カラフルな闇カラフルな闇
(2006/04/20)
まはら 三桃

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第46回講談社児童文学賞佳作受賞作品。だれもが、闇の中から自分だけの色を見つけだせるはず。不幸をもたらす「闇魔女」のうわさに揺れる少女の、どうにもならない繊細で熱い、手さぐりの青春物語。


第46回講談社児童文学新人賞佳作。

『かっこいいじゃん、闇魔女』このキャッチに、思わず借りてしまった。

街で目撃情報が相次ぐ謎の闇魔女。ちょっとした都市伝説みたいになっていくのだが、闇魔女を見て幸せになった人もいれば、不幸になった人も出てくる。果たして闇魔女の正体は? 出会うとラッキーなのか、アンラッキーのどちらなのか!?

女子中学生が主人公の児童文学。両親の離婚、友人とのすれ違い、不良糞女との対立、それなりに悩みや問題を抱えて生きている。闇魔女という謎の存在が出てくるが、オカルトやホラー要素は皆無。


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ホッグ連続殺人

ホッグ連続殺人 (ハヤカワ・ミステリ文庫)ホッグ連続殺人 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
(2005/01)
ウィリアム・L. デアンドリア

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雪に閉ざされたニューヨーク州スパータの町は、殺人鬼HOGの凶行に震え上がった。彼は被害者を選ばない。手口も選ばない。不可能としか思えない状況でも、確実に獲物をとらえる。そして巧妙に事故や自殺に見せかけたうえで、声明文を送りつけるのだ。署名はHOG―このおそるべき連続殺人事件解決のため、天才犯罪研究家ニッコロウ・ベネデッティ教授が乗り出した!アメリカ探偵作家クラブ賞に輝く本格推理の傑作。


アメリカ探偵作家クラブ賞1980年度最優秀オリジナル・ペーパーバック賞受賞作。

謎解きが苦手なのと、落ち度の無い小市民がどこかの凶悪犯罪者に無為に殺されていくのが憂鬱なので、推理小説はあんまり読まないのだが、これは面白かった。

雪に閉ざされたニューヨーク州スパータの町で、連続殺人事件が発生し、住民たちは恐怖で震え上がる。謎の殺人鬼HOGは、不可能と思える状況でも確実に狙った獲物を仕留めていく。殺人鬼HOGが絡んだ案件は、一見すると殺人事件ではなく、事故や自殺にしか見えないのだ。

絶対に不可能としか思えないような連続殺人になっているので、読み進めるにつれて、本当は誰も殺されていないのではないかと疑いたくなってくる。運悪く起こった事故や自殺に便乗して、殺人鬼HOGが犯行声明文を送りつけて来るのではないのだろうか。しかし中程まで読み進めると、今まさに殺人犯が犯行に及ぼうとする場面が出てきて……。

実はこれ、長門有希の100冊という企画に含まれていたもの。私は「今日の早川さん」的クラスタでいうところのミステリー者ではないので、長門有希がいなければ、きっと本書の存在すら知らず、手に取る事などなかったと思う。

長門有希の100冊とは、ザ・スニーカー 2004年12月号にて紹介された長門有希の本棚にある100冊である。

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迷宮学事件

迷宮学事件 (講談社ノベルス)迷宮学事件 (講談社ノベルス)
(2002/09)
秋月 涼介

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迷宮と迷路は混同されがちだが、構造も、意味も全くの別物である…。高名な隻腕の建築家・東間真介は、自ら設計した、地上部分は左右対称、地下は迷宮構造の屋敷に住んでいた。そこで起きた鏖殺事件。迷宮内の密室で、真介の遺骸は年齢退行をした赤子の姿で発見され…。今、貴方の心奥の昏い迷宮も疼き出す。


デビュー作の続きじゃないのか。建築家が設計した左右対称の屋敷、そしてその地下には迷宮が! 密室状態で死んでいた妻と謎の赤子、そして行方不明となったままの建築家げ。未解決のまま迷宮入りした事件の謎を解くため、北龍館の家主である姉妹と友人、そして下宿人の恭太郎が現場へ向かう。

迷宮に関する薀蓄は結構面白かったけど、波乱万丈展開とはならず、あまり盛り上がらない結末だった。人物描写も薄口で、あまり惹かれない。とりあえず、一作目みたいなDQNネーム・オンパレード状態じゃなかったのは良かった。

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月長石の魔犬

月長石の魔犬 (講談社ノベルス)月長石の魔犬 (講談社ノベルス)
(2001/06)
秋月 涼介

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右眼に藍玉(アクアマリン)のような淡い水色、左眼に紫水晶(アメジスト)のような濃い紫色の瞳をもつ石細工屋店主・風桜青紫(かざくらせいし)と、彼を慕う女子大生・鴇冬静流(ときとうしずる)。先生に殺されたいと願う17歳の霧嶋悠璃。境界線(ボーダー)を彷徨う人々と、頭部を切断された犬の首を縫い付けられた屍体。異常と正常。欲望と退屈。絶望と救い。根源を射つメフィスト賞受賞作!!


第20回メフィスト賞受賞作。

ゲーム感覚で人が殺されて行き、連続殺人鬼を狙う連続殺人鬼がいるという構図は、いかにもメフィスト賞らしい。最初から先生絡みでミスリードを狙っているのがバレバレなのは残念。

沈黙したままの連続爆弾魔、連続少女絞殺犯、連続人肉嗜食殺人鬼。数々の事件が未解決のまま途切れて迷宮入り。連続少女絞殺犯と連続人肉嗜食殺人鬼に関しては、容疑者らしき人物が最後の被害者となっており、その共通点は、左腕が消えているという点。

連続殺人鬼をターゲットに連続殺人を行う存在が疑われているが、解決には程遠い。そんな中、首が切断され、代わりに犬の首が縫い付けられるという猟奇殺人が発生する。

構造はなかなか良さそうなのだが、登場人物の名前が風桜青紫(かざくらせいし)、鴇冬静流(ときとうしずる)、霧嶋悠璃(きりしまゆうり)とかだらけのDQNネームな厨設定。しかも記号化されすぎで、人物描写が物足りない。

美女ばかり出てくるのも、なんだなぁ。石細工屋店主を慕う女子大生も美女。近所に住む臨床医も美女、連続殺人犯の現場を目撃し、殺されたがっている少女も可愛い設定。連続殺人鬼に痛いコードネームばかりつけたがる電波さんな警視も美女だし、殺されて行く被害者も全員美女。ここまれ美女オンパレードでは、価値が下がる。

石細工屋店主の華麗な推理により事件が解決する訳でもなく、女子大生が活躍する訳でもなく、連続殺人鬼を殺して回る殺人犯をメインにしたノワール小説でもなく、何もかもが中途半端な感じだった。暴走しまくって役立たずな美女の警視も嘘臭い。

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恐怖の誕生パーティー

恐怖の誕生パーティ

夫の誕生日に昔の友人を呼んで驚かせようとした妻のサマンサは、彼の過去を調べ始めておかしな事に気づく。在籍したはずの学校や会社、軍にさえ記録が残されていないのだ。自分が誰と結婚したのか分らなくなるサマンサ。

警察は、毎年12月5日に鳶色の髪をした美女を殺すカレンダー殺人犯を追い続けていた。その日は、夫の誕生日でもあった。殺された6人と同じ鳶色の髪を持つサマンサ。一体、誕生日である12月5日に何が起こるのか?

ラスト1ページの衝撃!! 原題は「サプライズ・パーティ」だが、まさか最後の最後で、こんな恐ろしいサプライズが用意されているなんて!! 


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恐怖の幻影

恐怖の幻影

ヴェラ・マッケイの娘アニーは、とつぜん40度以上の高熱と目の痛みに襲われ、ローズロウン病院の救急治療室に運び込まれた。どうにか失明は免れたものの、アニーはその日からさまざまな幻視を体験するようになった。しかも“見た”ことが実際に起こってしまうのだ。線路に落ちた少女が列車に轢かれるシーンは現実に、カンザス州トピーカで起きた。母親の交通事故や高層ビルの爆発事故など自分と母親に及ぶ危険までも次から次へと予見していった。そしてついに、失踪している父親ハリーの殺害まで見たと言いだした。少女の目に映しだされる幻影は、いったい何を意味するのか?霊魂の存在を信じる異端の精神科医ノイバーガーとともに、母親ヴェラはアニーを襲う幻影の謎に迫って行く…。


上記、密林の説明文に関しては誤りがあるので、コピペではなく該当部分を修正してます。


高熱に襲われた娘のアニーが、実際に起こる出来事を幻視出来るようになってしまう。線路に落ちた少女が列車に轢かれる幻視も現実のものとなるのだが、単なる予知に止まらず、自らの運命にも関わってくる。

アニーは行方不明となっていた父親が殺されるシーンまで見てしまうのだが、ヴェラが容疑者にされてしまう。真犯人はすぐ側にいるのに、ここでも、常識と法律の壁が立ち塞がる。

この物語でも、「恐怖の呼び声」で重要な役割を果たす精神科医ノイバーガーが登場し、母娘の力となる。


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恐怖の呼び声

恐怖の呼び声

最初の夫を失い、再婚でつかのまの幸福を得ながら、今度は一人娘までも事故で失って悲嘆にくれるクリスタ。だが、死んだ娘の声が、思いもかけぬ事故の真相を彼女に告げる。しかも娘の溺死した湖には、まごうことなき殺人事件の証拠が残されていた。死者と交信してしまった彼女は、その告発をどう証明すればいいのか。犯人を暴くことはできるのか。恐怖と戦慄の長編小説。


夫に続いて娘のジェニーまで事故で失ってしまったクリスタ。追い討ちをかけるかのように自らも事故に遭い、臨死状態となる。奇跡的に生還した彼女は、死者と交信出来るようになってしまっていた。

一緒に事故に巻き込まれてしまったリーン、すでに故人である両親、娘のジェニーにも再会する。そして、クリスタはジェニーから、自分が死んだのは事故ではなく、殺されたのだと知らされる。殺害された本人による告発なんて、巷では気が狂ったとしか思われないので、このままでは事件を立証する事が出来ない。

すぐ側にいる犯人を、どうやったら追い詰める事が出来るのか。力になるのは霊魂の存在を信じる異端の精神科医ノイバーガー。彼女は「恐怖の幻影」にも登場する。


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名残り火 てのひらの闇2

名残り火 (てのひらの闇 (2))名残り火 (てのひらの闇 (2))
(2007/09)
藤原 伊織

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堀江の無二の友人・柿島が殺された。その謎に満ちた死に疑問を持った堀江は調査に乗り出す。そこには流通業界に横たわる新たな闇があった! 著者の遺作となった長篇ミステリー。『別冊文芸春秋』連載に加筆修正し単行本化。


てのひらの闇の続編で、遺作である。物語は完結しているのだが、途中まで加筆訂正中だったので、本来ならさらに良い出来になっていたかもしれない。てのひらの闇は、確か読んだはずなのだが、すっかり忘れている……。しかし、出てきた登場人物を使った別の物語(時系列としては数年後)なので、単品で読んだとしても全く問題は無い。

何者かに襲われ、病院に運ばれたものの死亡してしまった柿島の為、堀江が真相を究明する。警察に睨まれながらも、一銭の得にもならない調査を続ける堀江。やがて見えてきたものは……。

藤原伊織作品はハッピーエンドで終わらないのだが、これは事件に巻き込まれた当事者ではなく、被害者の友人だった男の視点で物語が進むので、他作品のようなやるせなさは少ない。何らかの企業犯罪が絡んでいるのかと思っていたら、最後はあまりにもあっけない幕切れ……。

これで全作品コンプリート。もはや新作を読む事が出来ないのは悲しい。途中で終わってしまった「遊戯」の結末が知りたかった。

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遊戯

遊戯 (講談社文庫)遊戯 (講談社文庫)
(2009/05/15)
藤原 伊織

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「現実とネットの関係は、銃を撃つのに似ている」。ネットの対戦ゲームで知り合った本間とみのり。初対面のその日、本間が打ち明けたのは、子どもの頃の忌まわしい記憶と父の遺した拳銃のことだった。二人を監視する自転車に乗った男。そして銃に残された種類の違う弾丸。急逝した著者が考えていた真相は。


読み始める前に覚悟しておかねばならない事は、これが未完だという点である。飽きて放り出したのではなく、出版社が見捨てたのでも無い。「回流」という話を書いたところで藤原伊織が力尽きてしまったからである。ここからとても面白くなりそうなのに、もはや続きを読む事は出来ない。一体、どういう結末が用意されていたのかを知る術は無い。この物語の結末は、藤原伊織と共に永遠に失われてしまった。非常に残念である。

連作短編という事になっているが、全て繋がっているし、主役格も二名なので、各話は長編の一部分として捉えるほうが良いだろう。ネット上で出会った男女。男は派遣関係の会社に勤める中堅サラリーマンで、過去に父親から虐待された過去を持つ。女は長身でモデル系の若者。登録していた芸能プロダクションの顔を立てるために受けたオーディションで合格してしまい、CMに出演する様になる。その二人に付きまとう謎のストーカー男。男性の父親が遺した拳銃と弾薬。伏線が張られたままで、この物語は途切れてしまう。ちなみに、最後に収録されている「オルゴール」は別の短編なので完成している。

事実上の最終話となってしまった「回流」が発表されたのが2006年の3月で、5月17日に著者は他界している。病床にありながらも、ギリギリまで執筆を続けていた事になる。

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ダナエ

ダナエ (文春文庫)ダナエ (文春文庫)
(2009/05/08)
藤原 伊織

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男たちの生き方に共感必至! CM制作を手がける麻生は昔の恋人の窮地を救うため突飛な手を考えた!(「水母」)。広告界と美術界を舞台にした力作3篇を収録!


藤原伊織の数少ない短編集。著書は全作品、極めてレベルは高いと思うが、やはり長編が圧巻である。分量が少ないから、短編だとやや物足りないかもしれない。本書には三篇収録。やはり、表題作となっている「ダナエ」が断然良い。何かと思ったら、ギリシア神話に出てくるペルセウスの母親だった。

ダナエはアルゴス王アクリシオスの娘だったが、孫に殺されると予言されたため、王によって青銅の塔に閉じ込められる。しかし、ユピテル(ゼウス)の子を身篭りペルセウスを産む。成長したペルセウスは円盤投げの最中に手元が狂い、祖父であるアクリシオスに当ててしまうのである。

この神話から描かれたレンブラントの作品「ダナエ」が、1985年に所蔵先のエルミタージュ美術館(サンクト・ペテルブルク)で硫酸がかけられるという事件が起こったのだが、その事件を模倣するかのように、ある日本画家の力作に薬品がかけられてしまうのである。画家は、犯人が神話になぞらえてアクリシオスに当たる人物を狙っているのではないかと考えるのだが……。

ハードボイルドでありながらもせつない系。基本的に、ハッピーエンドで終わる話は無く、どれを読んでも物悲しい。もっともっと書いて欲しかった。東野圭吾のエッセイ『きっと最後の御挨拶』には、倒れていない頃の藤原伊織が出てきて、しかも酔っ払っている。この頃、すでに病に蝕まれていたのかと思うとやるせない。

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治療島

治療島治療島
(2007/06/21)
セバスチャン・フィツェック

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目撃者も、手がかりも、そして死体もない。著名な精神科医ヴィクトルの愛娘ヨゼフィーネ(ヨーズィ)が、目の前から姿を消した。死に物狂いで捜索するヴィクトル、しかし娘の行方はようとして知れなかった。4年後、小さな島の別荘に引きこもっていた彼のもとへ、アンナと名乗る謎の女性が訪ねてくる。自らを統合失調症だと言い、治療を求めて妄想を語り始めるアンナ。それは、娘によく似た少女が、親の前から姿を隠す物語だった。話の誘惑に抗し難く、吹き荒れる嵐の中で奇妙な“治療”を開始するヴィクトル、すると失踪の思いもよらぬ真実が…2006年ドイツで発売なるや、たちまち大ベストセラーとなった、スピード感あふれるネオ・サイコスリラー登場。


精神科医ヴィクトルの娘が病院で失踪するのだが、手掛かりが掴めない。生死すら定かではないまま、四年が過ぎてしまう。諦め切れぬまま、ヴィクトルは小さな島に引き篭もるのだが、謎の女性アンナがやって来て真実が明らかになる。

作家だと名乗るアンナの症状は、書いた物語の人物が現実世界に現れてしまうというもの。すでに現役ではないヴィクトルは治療を断ろうとするのだが、彼女が語る物語は、単なる偶然とは思えぬ程、失踪した娘の話とシンクロしすぎていた。

↑ 訳者解説でも、この辺りまではバラしているので許容範囲という事で。これ以上は、何を書いても重要なネタばれになりそうなので書けない。アンナの正体は? 何で物語の出来事が酷似しているのか? 犯人なのか? 娘はどうなったのか? 謎だらけで先が全く見えないまま、驚愕のラストへ!

セバスチャン・フィツェックの第一作。初手から恐るべき完成度。謎解き部分で今まで積み上げてきたものが一気に崩されてしまうのはアンフェアかもしれないけど、解答に驚きすぎて、不満は残らない。単なるバッドエンドで終わらないのも良い。

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理由あって冬に出る

理由(わけ)あって冬に出る (創元推理文庫)理由(わけ)あって冬に出る (創元推理文庫)
(2007/10)
似鳥 鶏

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芸術棟に、フルートを吹く幽霊が出るらしい―吹奏楽部は来る送別演奏会のため練習を行わなくてはならないのだが、幽霊の噂に怯えた部員が練習に来なくなってしまった。幽霊を否定する必要に迫られた部長に協力を求められ、葉山君は夜の芸術棟へと足を運ぶが、予想に反して幽霊は本当に現れた!にわか高校生探偵団が解明した幽霊騒ぎの真相とは?コミカル学園ミステリ。第16回鮎川哲也賞佳作入選、期待の新鋭のデビュー作。


表紙がこんなのだから、もっと甘酸っぱいジュブナイル小説みたいな青春ミステリーなのかと思ったが、あまり恋愛要素が無いな。人物描写が不足しており、キャラが区別しにくい。

校舎に幽霊が現れるという騒動で、怯えた吹奏楽部員が練習出来なくなり困った事に。そこで、幽霊の正体を探る事になるのだが、トリックに力を使いすぎた感じで、人物描写と人間関係が薄口で荒すぎる。主人公と探偵役はともかく、女性陣はメインヒロインをひとり中心に添えた方が良い気がする。主人公の妹が脈絡無く、突然脇役で出てきたりするし。妹がいる設定なら、最初のほうからちゃんと使えば良いのに。途中で僅か数行出てきても……。

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シリウスの道

シリウスの道〈上〉 (文春文庫)シリウスの道〈上〉 (文春文庫)
(2006/12)
藤原 伊織

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シリウスの道〈下〉 (文春文庫)シリウスの道〈下〉 (文春文庫)
(2006/12)
藤原 伊織

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東京の大手広告代理店の営業部副部長・辰村祐介は子供のころ大阪で育ち、明子、勝哉という二人の幼馴染がいた。この三人の間には、決して人には言えない、ある秘密があった。それは…。月日は流れ、三人は連絡をとりあうこともなく、別々の人生を歩んできた。しかし、今になって明子のもとに何者からか、あの秘密をもとにした脅迫状が届く!いったい誰の仕業なのか?離ればなれになった3人が25年前の「秘密」に操られ、吸い寄せられるように、運命の渦に巻き込まれる―。著者が知悉する広告業界の内幕を描きつつ展開する待望の最新長編ミステリー。


大手広告代理店に勤める辰村祐介の部署に回って来た巨額の案件。受注にこぎつけるために奮闘する部員だったが、別件でトラブルが発生したり、社内で足を引っ張ろうとする無能な派閥が暗躍したり、25年前に起こったある事件まで絡んでくる。

基本はビジネス小説になっており、他作品と比べると事件の重要度は比較的低め。藤原伊織作品は、いつもラストがハッピーエンドで終わらないのだが、これに関してはマシだった。ただ、有能な部下が一人去って行くのは残念だ。

それにしても、このチームには有能な人材が多い。仕事内容も充実していて楽しそうなのが羨ましい。どんな仕事でも楽しいというのは、やりがいのある仕事に運よくありつけた者の戯言にすぎない。社内で足を引っ張る輩はどこにでもいるものだが、こういう人物を重用する時点で組織は腐敗し始めている。敵の結末は語られていないが、是非、諭旨解雇になって欲しいところである。

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蚊トンボ白鬚の冒険

蚊トンボ白鬚の冒険〈上〉 (講談社文庫)蚊トンボ白鬚の冒険〈上〉 (講談社文庫)
(2005/04)
藤原 伊織

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蚊トンボ白鬚の冒険〈下〉 (講談社文庫)蚊トンボ白鬚の冒険〈下〉 (講談社文庫)
(2005/04)
藤原 伊織

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ランナーの道を断念して以来の全力疾走をした日、若い水道職人・達夫は、羽音とふしぎな声を聞く。奇妙な能力を持った蚊トンボ“白鬚”が頭に侵入してきたのだった。達夫はシラヒゲの力で、オヤジ狩りに遭っていたアパートの隣人・黒木を救う。黒木は、株取引で巨額の損失を暴力団に与え、血眼で行方を追われる身だった。彼らは、黒木の居場所を達夫に吐かせるため、恋人・真紀をターゲットにしたが、凶悪な気を放つ赤目の男の介入に、達夫は闇社会に真っ向から挑む道を選んだ。長編小説。


いおりんにしては、珍しくおっさん主人公じゃない。そして、頭の中に蚊トンボ白髭と名乗る謎の生命体が寄生してしまうという、ちょっと非日常的すぎる設定なのが異色作。何そのド根性ガエルみたいな話は(笑)。

奇抜設定だったので、妙に記憶に残っているのだが、ミステリー者には受けが良くなかったみたいで、2002末のこのミス22位という結果に終わったようである。

それにしても、おっさん主人公だろうが若者主人公だろうが、ハッピーエンドでは終わってくれないんだね……。人間が滅びない限り、闇社会って無くならないんだろうか。

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前世療法

前世療法前世療法
(2008/05/21)
セバスチャン・フィツェック

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ある日のこと、ベルリンの敏腕弁護士である45歳のシュテルンは、ガールフレンドの看護師カリーナから、工場の跡地に呼び出された。彼女と共に現れた10歳の少年ジーモンは、自分がその場所で15年前に人を殺したのだと話すのだった。一笑に付すシュテルン、しかし地下室からは、彼の証言どおりに白骨死体が発見される。その前世殺人の証言は、死に至る病に苦しむ孤独なジーモンのために、カリーナが善意で受けさせた前世療法以後始まっていたのだ。新たな前世殺人を語り始めるジーモン、そしてシュテルンの回りで次々と起こり始める奇怪な出来事、逃げられない渦に巻き込まれる彼らの運命やいかに…他では味わえない、恐怖と感動のサイコスリラー。


名前につられて借りたのだが、オカルト的な書籍ではなくて、サイコスリラー小説だった。脳腫瘍で死にかけている十歳の少年が、主人公となる中年弁護士に助けを求めてくるのだが、彼は人を殺してしまったと主張するのである。

殺したの十五年前!! 少年はまだ十歳なので、十五年前に人を殺す事は不可能である。しかし、少年が埋めたと証言する場所からは本当に骸骨が出てしまう。しかも、この一件だけではなく、他にもたくさん殺していると主張し始めるのだった。

警察には疑われ、少年には助けを求められ、さらには謎の何者かに脅迫される羽目に陥る。真相は最後になるまで明かされないので、一気読みする事になるだろう。これは面白い! ネタばれすると、ラストのサプライズが無くなってしまうので、これ以上は書けない。

この『前世療法』が、セバスチャン・フィツェックの三作目。一作目の『治療島』と二作目の『ラジオ・キラー』も読みたくなってきた。

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てのひらの闇

てのひらの闇 (文春文庫)てのひらの闇 (文春文庫)
(2002/11)
藤原 伊織

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飲料会社宣伝部課長・堀江はある日、会長・石崎から人命救助の場面を偶然写したというビデオテープを渡され、これを広告に使えないかと打診されるが、それがCG合成である事を見抜き、指摘する。その夜、会長は自殺した!!堀江は20年前に石崎から受けたある恩に報いるため、その死の謎を解明すべく動き出すが…。


能力はあるけどリストラ寸前の、くたびれた中年男が主人公。やはり、自分と同世代が主人公だと描きやすいのか、いつもおっさんの物語だよな(笑)。

渡された人命救助のテープが偽物だと見抜いた直後、会長が自殺する。思い通りに事が進まない社会、社内の人間関係が結構リアル。

ところで、これが「名残り火」に繋がるんだよね……。これも、実際に読んだのが大昔で手元に無いから、詳細を思い出せない(汗)。

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雪が降る

雪が降る (講談社文庫)雪が降る (講談社文庫)
(2001/06)
藤原 伊織

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母を殺したのは、志村さん、あなたですね。少年から届いた短いメールが男の封印された記憶をよみがえらせた。若い青春の日々と灰色の現在が交錯するとき放たれた一瞬の光芒をとらえた表題作をはじめ、取りかえようのない過去を抱えて生きるほかない人生の真実をあざやかに浮かびあがらせた、珠玉の6篇。


実際に読了したのが大昔で、手元に無いしチラシの裏も書いていなかったので簡潔に。

藤原伊織の短編集。六篇入っていて、どれも手堅い力作だけど、やはり長編の方が良いね。短編だとすぐに終わってしまうので、やや物足りない。それにしても、藤原伊織は報われない話が多い。

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ひまわりの祝祭

ひまわりの祝祭 (講談社文庫)ひまわりの祝祭 (講談社文庫)
(2000/06)
藤原 伊織

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直木賞・乱歩賞受賞第一作! 圧倒的評価を得たダブル受賞作「テロリストのパラソル」をしのぐ書下ろしニューハードボイルド!幻の歴史的名画をめぐり、かつてアートの世界に生きた孤高の男がたどる清冽な愛。


妻を喪い世と断絶した男が、幻の「ひまわり」をめぐる争いへと巻き込まれていく。生きている間に評価されず、暖炉の燃料として数多くの作品が燃やされてしまったゴッホ、実際に世に出ていない本物がどこかに眠っていたなら……。

完成度は高いと思うのだが、パターンが似ているので『テロリストのパラソル』と比較してしまう。やはり藤原伊織作品、ラストはハッピーエンドで終わってくれない。

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