恒川光太郎

攻略対象書籍は以下。

夜市』★★★★
雷の季節の終わりに』★★★★☆
秋の牢獄』★★★★
草祭』★★★★☆
南の子供が夜いくところ』★★★★☆
竜が最後に帰る場所』★★★★☆
金色の獣、彼方に向かう』★★★★☆
『私はフーイー 沖縄怪談短篇集』
金色機械』★★★★
『スタープレイヤー』
『ヘブンメイカー スタープレイヤーⅡ』


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金色機械

金色機械金色機械
(2013/10/09)
恒川 光太郎

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触れるだけで相手の命を奪う恐ろしい手を持って生まれてきた少女、自分を殺そうとする父から逃げ、山賊に拾われた男、幼き日に犯した罪を贖おうとするかのように必死に悪を糺す同心、人々の哀しい運命が、謎の存在・金色様を介して交錯する。人にとって善とは何か、悪とは何か。


遊廓の支配者となった熊悟朗の元に遥香と名乗る女が訪れる場面から物語が始まる。熊悟朗は相手の殺気を視る能力で生き残り、のし上がって来た。遥香は手を触れるだけで生き物を殺す呪われた力を持つ。どちらも超常的な力を有しているが、さらに題名にもなっている謎の金色様が絡んでくる。

時は江戸時代だが、金色様が守っていた一族が今川義元に攻められる戦国時代まで遡ったりもする。金色様はこの世界の外側から来た存在で、江戸時代だと無敵のチート性能である。物語は時系列を行き来しつつ、熊悟朗や遥香の人生を辿りながら、冒頭のシーンへと繋がって行く。

今までの不思議系ホラーとは違った作品だが、最後で物語が上手く繋がるのは素晴らしい。かなり分厚いので苦戦するかと思ったが、一気に読めた。ちょっとSF要素混ざったファンタジーというのが良い感じである。ネタバレすると面白くなくなるので、内容についてはあまり触れない方向で。


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金色の獣、彼方に向かう

金色の獣、彼方に向かう金色の獣、彼方に向かう
(2011/11/16)
恒川 光太郎

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樹海に抱かれた村で暮らす大輝は、ある日、金色の毛をした不思議な生き物と出合う。ルークと名付けて飼い始めるが、次第に大輝の体に異変が起きてきて……。「樹海」と「サンカ」をテーマに、鬼才が読者を神々の世界に誘う、表題作を含む4編を収録。


不条理な運命に翻弄されるような話が多いのだが、上手く出来た幻想的な話が多いので不快感は残らない。表題作「金色の獣、彼方に向かう」の他「異神千夜」、「風天孔参り」、「森の神、夢に還る」が収録されている。

「異神千夜」は蒙古来襲の時代、宋人に見出されて育てられた対馬の少年が、朝鮮で蒙古軍の奴隷となり、日本に潜入させられる話。一緒に日本に潜入する仲間の一人が、蒙古に滅ぼされた金の巫術師で、妖しげな能力で仲間を支配して行く。ボーグ・クイーンに統制されて自我を失っているような感じが堪らない。

「風天孔参り」は、風天孔という超自然現象を求めて彷徨う集団と関わってしまった女性の物語だが、その女性が宿泊する事になった店のオーナー視点で語られる。案内役に導かれ、順番が来た者から一人ずつ風天孔の中へ消えていくのだが、どうなるのか、どこへ行ってしまうのかは謎である。

「森の神、夢に還る」は、女性と、女性の中に棲む何者かの話で、女性の日常と中にいた者の数奇な運命が描かれる。表題作「金色の獣、彼方に向かう」は、図鑑にも載っていない動物を見つけた少年と少女の物語。その動物と関わる事で超常能力が備わってくる。何かを埋め続けている墓堀人の存在も不気味。

連作形式ではないものの、鼬っぽい謎の獣が出てくるので、何らかの繋がりがありそうな気もして来る。超常的な何かに関わる事となる人物と、それを聞かされる人物が登場する事によって、物語に深みが与えられている。視点を少しズラす手法が上手いと思う。


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竜が最後に帰る場所

竜が最後に帰る場所竜が最後に帰る場所
(2010/09/17)
恒川 光太郎

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恒川光太郎が五つの物語で世界を変える―。風を、迷いを、闇夜を、鳥を。著者はわずか五編の物語で、世界の全部を解放してしまった――。静謐な筆致で描かれた短編は、小説の新たな可能性を切り拓く!


またしてもハイレベルな新作。長編じゃなくて五つの短編だった。

「風を放つ」は、風のような何かを封じ込めた物を持っているという女性から話を聞く大学生が主人公なのだが、電話で喋るだけで、実際にその現物を見ないまま中途半端に途切れるので物足りない。少し不思議なだけで終わってしまった。

「迷走のオルネラ」は、父を轢き殺されて母子家庭になっていた少年が、キチガイに母まで殺されてしまい、成長してからキチガイを使って何かを成す物語。たんに復讐するだけならありがちだけど、思いもよらぬ方法でキチガイを別の存在に変える。キチガイには娘がおり、彼女がマンガ家として作り出したものが表題作となり、物語と作中内マンガの内容が上手く絡み合う。

「夜行の冬」は、従来の恒川作品らしさが一番出ている感じ。夜行様が通る日は外に出てはいけないと言われていた男が、外に出てしまい、夜行の列に加わってしまう。目的地も明かされぬまま、何処か別の場所へと旅するのだが、これは現状に不満で、別の自分になりたい人には堪らない。非常に上手く出来た●●世界物だった。ネタばれすると面白くないので伏字でしか書けないけど。

「鸚鵡幻想曲」は、擬態している別の何かを見抜いて元の姿に戻してしまう能力を持つ男と出合った主人公の物語。自分が、それと気づかないまま、別の何かとして生きているとう設定までならありがちだけど、この物語は正体バレしてからが本番。南へと旅立った主人公が、ある事件に巻き込まれた女性に救いの手を差し伸べる。

表題作が無いと思ったら、これがそうだった。「ゴロンド」は主人公の名前だが、人間ではなく、正体不明の何かである。激しい生存競争に勝つうち、成長して変形して行き、本来の姿となるのだが、竜が今いる場所、帰っていく場所、そして竜がその世界からいなくなった理由が幻想的で素晴らしい。


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南の子供が夜いくところ

南の子供が夜いくところ南の子供が夜いくところ
(2010/02/27)
恒川 光太郎

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島に一本しかない紫焔樹。森の奥の聖域に入ることを許されたユナは、かつて〈果樹の巫女〉と呼ばれた少女だった……。呪術的な南洋の島の世界を、自由な語りで高らかに飛翔する、新たな神話的物語の誕生!


恒川光太郎、またしても安定していてレベルが高い。今のところハズレ作品無しなので、安心して手に取れる。

今までのようなホラーっぽさが少なくなり、ファンタジー要素が増えた。脱サラに失敗し、無理心中寸前の家族が、怪しい女性の手引きで南の島へ。少年は親と離され、異国の島で過ごす事になる。普通の人間とは異なるユナと名乗る女性は、若く見えるがすでに120歳らしい。

最初は少年の話だったのだが、連作っぽく繋がっていて、ユナが人間を超えてしまういきさつや、三百年以上も前の侵略の話、近海を荒らしまわっていた海賊の話など、時系列がバラバラで少しずつリンクする物語が七編続く。


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最後の「夜の果樹園」が異次元すぎて一番面白かった。
以下、ネタバレ。

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草祭

草祭草祭
(2008/11)
恒川 光太郎

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団地の奥から用水路をたどると、そこは見たこともない野原だった。「美奥」の町のどこかでは、異界への扉がひっそりと開く―。消えたクラスメイトを探す雄也、衝撃的な過去から逃げる加奈江…異界に触れた人びとの記憶に、奇蹟の物語が刻まれる。圧倒的なファンタジー性で魅了する鬼才、恒川光太郎の最高到達点。


今回も不思議な物語が五編でハイレベル。短編なのだが、物語の舞台や設定、登場人物が少しずつ繋がっている。時系列は順番ではないので、全部読まないと全ての繋がりが見えてこない。美奥という妖しい場所に魅入られる。

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秋の牢獄

秋の牢獄秋の牢獄
(2007/11)
恒川 光太郎

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十一月七日、水曜日。女子大生の藍(あい)は、秋のその一日を、何度も繰り返している。毎日同じ講義、毎日同じ会話をする友人。朝になれば全てがリセットされ、再び十一月七日が始まる。彼女は何のために十一月七日を繰り返しているのか。この繰り返しの日々に終わりは訪れるのだろうか――。 まるで童話のようなモチーフと、透明感あふれる精緻な文体。心地良さに導かれて読み進んでいくと、思いもかけない物語の激流に巻き込まれ、気付いた時には一人取り残されている――。


長編ではなく、短編が三つ入っている。表題作は、同じ一日に閉じ込められてしまった女性の物語。ケン・グリムウッドの「リプレイ」みたいに、同じ人生が繰り返されるのだが、期間がより限定されていて、たった一日となっている。何かをしても、それは翌日には持ち越されない。次の“同じ日”に持っていけるのは記憶だけ。

何度目覚めても翌日へは行けない。閉鎖された時間に囚われていない人々は、全く同じ事を繰り返すのだが、ある日、本来はその場所にはいないはずの人物に出会う。自分と同じ人間に出会い、独りではなくなった彼女は、一日に囚われた人々の集会に参加するようになる。

しかし、閉鎖された一日の無限ループから消えてしまう者もいて、それは北風伯爵と呼ばれる異形の存在の仕業とされていた。北風伯爵に捕まると食べられて消滅してしまうのか? それとも、翌日へ行けるのか?

日本各地の固定された場所に出現と消滅を繰り返し、家守となった者は外に出られなくなる「神家没落」、幻術を使う老婆の後継者となってしまうが、金儲けを目論む悪人に拉致監禁されてしまう女性の「幻は夜に成長する」も面白い。それにしても、何かに捕まってしまう話ばかりだね。

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雷の季節の終わりに

雷の季節の終わりに雷の季節の終わりに
(2006/11)
恒川 光太郎

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現世から隠れて存在する小さな町・穏で暮らす少年・賢也。彼にはかつて一緒に暮らしていた姉がいた。しかし、姉はある年の雷の季節に行方不明になってしまう。姉の失踪と同時に、賢也は「風わいわい」という物の怪に取り憑かれる。風わいわいは姉を失った賢也を励ましてくれたが、穏では「風わいわい憑き」は忌み嫌われるため、賢也はその存在を隠し続けていた。賢也の穏での生活は、突然に断ち切られる。ある秘密を知ってしまった賢也は、穏を追われる羽目になったのだ。風わいわいと共に穏を出た賢也を待ち受けていたものは―?透明感あふれる筆致と、読者の魂をつかむ圧倒的な描写力。『夜市』で第12回日本ホラー小説大賞を受賞した恒川光太郎、待望の受賞第一作。


第20回山本周五郎賞候補作。

前作よりも、さらに力強くて魅力的。「夜市」も悪くは無いけど、短いから物足りなかった。今回は、かくれ里のように怪しげな「穏」と呼ばれる場所が舞台。下界と呼ばれる現世からは隔絶された場所で、そこには雷の季節が存在するのだ。そして、雷の季節には鬼にさらわれて人が消える。少年の姉も雷の季節に消息を絶ち、同時に風わいわいという憑き物に囚われる。何かが自分に憑依している事を隠して生活する少年は、穏の外れにある墓町へ出入りするようになり、闇番と共に、行方不明となった少女の亡霊に出会ってしまう。連続殺人事件に巻き込まれた少年は、鬼衆に処刑される前に逃亡するのだが……。

後半は別パート。下界で邪悪な継母に殺されそうになった少女は、より邪悪な男の手にかかり、自分達が暮らす世界から隔絶された場所にさらわれて殺される寸前、風霊鳥の助けで逃げ延びる。

前半と後半で一見バラバラの物語が、最後で見事に融合する。時系列も異なるのだが、上手くラストまで繋がっていく。二作目にして、ここまでの技を出してくるのは素晴らしい。

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夜市

夜市夜市
(2005/10/26)
恒川 光太郎

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大学生のいずみは、高校時代の同級生・裕司から「夜市にいかないか」と誘われた。裕司に連れられて出かけた岬の森では、妖怪たちがさまざまな品物を売る、この世ならぬ不思議な市場が開かれていた。夜市では望むものが何でも手に入る。小学生のころに夜市に迷い込んだ裕司は、自分の幼い弟と引き換えに「野球の才能」を買ったのだという。野球部のヒーローとして成長し、甲子園にも出場した裕司だが、弟を売ったことにずっと罪悪感を抱いていた。そして今夜、弟を買い戻すために夜市を訪れたというのだが―。第12回日本ホラー小説大賞受賞作。


第134回直木賞候補作。
第12回日本ホラー小説大賞受賞作。

ホラー大賞受賞作でありながら、全然怖くない。異世界へと紛れ込んでしまう不思議系なお話。選考委員が絶賛しているから、どんな結末が待っているのかと思ったら、そんなに意表をつくような終わりでも無かったので肩すかしを喰らった気分だ。

悪くは無い。ほんの少しだけずれた異世界が幻想的な雰囲気を醸し出しているし、話も上手く纏まっているのに、某選考委員の持ち上げが、過度な期待を抱かせてしまうのだ。この展開を思いつかないのなら、某選考委員は作家を辞めたほうが良いと思う。

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