佐伯一麦

攻略対象書籍は以下。

雛の棲家』★★★☆
ショート・サーキット』★★★☆
一輪』★★★☆
ア・ルース・ボーイ』★★★☆
『木の一族』
『遠き山に日は落ちて』
『少年詩篇』 「あんちゃん、おやすみ」新潮文庫
『川筋物語』
『まぼろしの夏 その他』★★☆
『マイシーズンズ』
『無事の日』
『鉄塔家族』
『草の輝き』
『ノルゲ Norge』
『ピロティ』
『誰かがそれを』

エッセイ・その他
『蜘蛛の巣アンテナ』
『読むクラシック――音楽と私の風景』
『散歩歳時記』
『石の肺―アスベスト過を追う』  「石の肺―僕のアスベスト履歴書」新潮文庫
『芥川賞をとらなかった名作たち』
『からっぽを充たす』

共著
『遠くからの声』 古井由吉(共著)

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まぼろしの夏 その他

まぼろしの夏 その他まぼろしの夏 その他
(2000/09)
佐伯 一麦

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ほの暗い生の奥底から、射し始める再生の淡い光。仙台の川べり、ノルウェーの空の下、押し寄せる想いの源流には何があるのか?九つの作品群を通じて浮かび上がる男の消息…沈潜の日々からのゆるやかな寛解を描く、最新作品集。


初期の私小説ばかり読んでいたので、視点が変わると創作なのか私小説の一部なのか混乱して来る。自分を他者視点から見たらしき短編も混ざっているので、従来通りのものも混ざっているのだろう。

夏の話かと思って借りて来たけど、別に季節を選ぶような本ではなかった。全部で9編入っているけど、佐伯一麦は長編のほうが面白い。


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ア・ルース・ボーイ

ア・ルース・ボーイ (新潮文庫)ア・ルース・ボーイ (新潮文庫)
(1994/05)
佐伯 一麦

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loose〔lu:s〕a.(1)緩んだ.(2)ずさんな.(3)だらしのない.…(5)自由な.―英語教師が押した烙印はむしろ少年に生きる勇気を与えた。県下有数の進学校を中退した少年と出産して女子校を退学した少女と生後間もない赤ん坊。三人の暮らしは危うく脆弱なものにみえたが、それは決してママゴトなどではなく、生きることを必死に全うしようとする崇高な人間の営みであった。三島賞受賞。


第4回三島由紀夫賞受賞作。

母親失格な糞親に要らない子扱いされて関係が断絶した青年が、進学校でも糞教師と対立して中退、誰の子だか分からない子を産んだ少女と一緒に生活し始める。これ、実際にあった自分の過去を私小説にしているのか、過去三作と全部シチュエーションが同じで、描かれる時系列が多少ズレている程度。

たまたま知り合った親方について電気工となるのだが、勝ち組人生から労働者になってしまうのが物悲しい。こういう地に足付いた人のほうが、本当は優れているのだけど、今の日本では糞の役にも立たないエリートな勉強馬鹿のほうがエライとされているからね。

家族や学校という檻のような場所から開放され、社会と繋がる事によって居場所を見出す部分には救いを感じた。別作品を読めば、この後にはBAD ENDが待っているので悲しくなってくるけれど。


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一輪

一輪 (新潮文庫)一輪 (新潮文庫)
(1996/02)
佐伯 一麦

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電気工の青年が修理に訪れたのは昼休みの風俗店だった。手作りのサンドイッチを俯いて食べていたヘルス嬢に青年は一目見て恋をした。以来、青年は客として彼女を指名するようになるのだが…。アスベストの被害に遭い長くは生きられない電気工と路地裏の風俗店で息を潜めて生きる女。大都会の裏側で蠢く不器用な男女の切なく哀しい恋を紡ぎ出す傑作「一輪」など、中編二編を収録。


純文学系の作家はツマラナイのが多いけど、佐伯一麦は読ませるなぁ。中身スカスカなまま言葉遊びで自分だけ楽しんでいる最近の純文学作家とは雲泥の差。風俗嬢に一目惚れしてしまった青年の、切なく哀しい物語だった。

風俗嬢のほうは夫のDVから逃げ出してきており、電気工をしている青年のほうは、アスベストで体を蝕まれている。せめて、幸薄い二人がささやかな幸せを手にしてくれたら良いのだが、そうはならない。上手くいかない恋の結末は哀しいけれども、バッドエンドに不快感は無い。

主人公が同じなのか、同じシチュエーションで書かれているだけなのか分からないけれども、内容的に繋がっているようなので、「雛の棲家」→「ショート・サーキット」→「一輪」と、執筆順に読んだほうが良い気がする。


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ショート・サーキット

ショート・サーキット

都市生活を暗部で支える配電工事の労働を通して、現代が孕む危うさを高密度の文体で捉えた。芥川賞候補作を含む最新作品集。


第12回野間文芸新人賞受賞作。
第103回芥川賞候補作。

題名を見てレースの話だと思っていたけど、サーキットは自動車競走用の環状道路の事ではなくて、電気回路のほうだったのか。三篇入っているのだが、すべて同じ主人公で、「雛の棲家」から続いている。単品でも読めるけど、繋がっているので先に「雛の棲家」を読んだほうが良いと思う。

「雛の棲家」の後半で配電工の仕事にありついた主人公だったが、本書ではすでにベテランとなっている。とはいっても、年齢は若いのだけど。子供が三人も生まれてしまい、必死に生きるのだが、暮らしは豊かじゃないし、嫁には拒否されるし、堪らんなぁ。子供のうち二人は病を抱え込んでいるし。危険な現場で作業しているから、自分もアスベストで体をやられて行くし。

やたら配電工事の描写が詳しいと思ったら、実際にそういう仕事をしていたのか。その絡みでアスベスト被害の本も出しているんだね。アスベストの危険性なんて、もうこの頃には世界的には認識されていたのに。この国を牛耳る奴らは金儲け優先で、使い捨てにされる人間の命なんて屁とも思っていないからね。

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雛の棲家

雛の棲家

主人公の斉木鮮は、仙台のエリート高校の3年生で、ただ1人進学しようとせず、教師の質問に答えようともしない反抗少年である。それが、幼なじみの小野田光枝が私生児を孕んで女子高を退学させられ、ひそかに出産したことを知ると、産院を探しあてて訪れ、自分が父親となって生きようとする。「海燕」新人文学賞受賞の気鋭の若手作家、待望の第1創作集!


第3回海燕新人文学賞作「木を接ぐ」収録。

難産のため逆恨みされ、母親から要らない子扱いされた少年は、親を頼らず、高校すら自力で通う。幼なじみの小野田光枝が、私生児を孕み女子高を退学となったと聞き、彼女に会いに行こうと思い立つ。

母のせいで人間関係を上手く構築出来ず、異性相手の関係も持ちようが無いのだが、光枝が産んだ子は、父親が少年であると噂されていた。完全に自分の子ではないにも関わらず、一緒に暮らして行こうと決心する少年だったが……。

これ、何編か入っているけど、独立した短編ではなくて、主人公が同じ少年なんだね。時系列は多少前後しているけど。幼なじみとはアッサリと終了フラグが立っていて、別の話では、他の女性との間に子供が出来て結婚するのだが、自分の子なのか疑ってしまう。

母親がロクデナシだったために、大学へ通える程度の家庭に生まれながら、職を転々とする苦難の人生なのが楽しくない。本書が佐伯一麦の最初の作品であるが、私小説作家なので、これも自分の話なのかな?

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