スワンソング

スワンソングスワンソング
(2007/09)
大崎 善生

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携帯もメールもなかったあの頃、僕たちの恋は強く激しく深かった。それでも気づくことができなかった。彼女が心の底で、哀しく美しい歌をうたい続けていることを―。同じ職場で結婚秒読みの僕と由香の前に現れた、アルバイトの由布子。ラスト1ページまで突き抜ける哀しみのラブストーリー、大崎“恋愛”小説の最高峰。


やはり大崎善生は上手い。だが、どれもこれもやるせない結末で、ハッピーエンドで終わってくれない。まだ完全制覇していないのだが、登場人物が幸せになる作品ってあるの? 正直、現実世界でウンザリする事ばかりなのに、物語の中でまで憂鬱な気分に浸るのは好きじゃない。

物語の前半で、まだ現役で活躍しているセナの話が出てきたりして、その時点でもう、これは過去へ遡っているだけで、“現在”に相当する部分では悲劇として終わっているのだろうなと思った。

同じ社内で始まった三角関係で、去られる女と新しい女の、両方がおかしくなって行く。精神が破壊されていき、やがて悲劇が訪れる。自らが蒔いた種が大事になり翻弄される男。自分では懸命に頑張っている振りをしつつも、実際には全力で立ち向かっているとは思えない。鬱病になった恋人の元に毎日通い、5回も駐車違反でレッカー移動されてしまうのだが、そこまでせっぱ詰っているならば一緒に住めば良いと思うのだが。

結局、二人の人間を破壊した挙句、仕事は捨てずにドイツへ転勤。その経験を生かして転職するというしたたかさは、読んでいて全くシンクロする事が出来ない。文章も物語も上手いのだが、気分が滅入る。

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ドイツイエロー、もしくはある広場の記憶

ドイツイエロー、もしくはある広場の記憶 (新潮文庫 お 67-2)ドイツイエロー、もしくはある広場の記憶 (新潮文庫 お 67-2)
(2007/12)
大崎 善生

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あの日、あそこで道は分かれていた。すれ違い、交わることはもうないのだろうか……離れても消えない、胸の痛みとときめき。切なく深く心を揺さぶる、彼女達の恋愛小説。


大崎善生って、ある程度歳を取らないと、その良さがわからない作者の1人だと思う。文体がオッサンっぽいし、読み手もそれなりに人生を積み重ねないと(例えそれが無駄な積み重ねであっても)共感出来ないような気がする。そういう訳で、大崎善生を読む人は、中身がオッサンだと思う。読み手が女性であっても、あえてオッサンと呼びたい。オバサンって感じでは無いんだよな。

内容的には目新しくも無い、そして物悲しい短編4つ。どの話もきれいで、手入れの行き届いた水槽を見ているような透明感があるのだけど、巷のレビューを見る限り、いまいち人気が無さそう。「パイロット・フィッシュ」みたいな長編を書いて欲しい。

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大崎善生

攻略対象書籍は以下。

『聖の青春』
『将棋の子』
パイロットフィッシュ』★★★★☆
『アジアンタムブルー』
『編集者T君の謎』
『ロックンロール』
『ドナウよ、静かに流れよ』
『九月の四分の一』
孤独か、それに等しいもの』★★★
『別れの後の静かな午後』
ドイツイエロー、もしくはある広場の記憶』★★★★
『優しい子よ』
『タペストリー・ホワイト』
『傘の自由化は可能か』
スワンソング』★★★☆
ディスカスの飼い方』★★★★
『存在という名のダンス』
『ランプコントロール』
『ユーラシアの双子』

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ディスカスの飼い方

ディスカスの飼い方ディスカスの飼い方
(2009/01)
大崎 善生

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ディスカスを知ることで、世界の全てと繋がろうとした涼一。だが、恋人の由真は、彼の元を去って行った―。『パイロットフィッシュ』から7年。再び、著者が人生をかけた美しいモチーフを通して贈る、至高の長編恋愛小説。


恋愛小説というジャンル分けになっているのだが、恋愛部分は回顧シーンだけで、ほぼ熱帯魚飼育小説と化している。どこかの誰かの恋愛話なんて、少しも興味が無い私としては、むしろお魚飼育小説になってしまっている方が読みやすかった。

ディスカスなんて、ちっとも知らなかったのだが、主人公がのめり込む熱帯魚ブリーダーの世界は興味深かった。

それにしても、この人が書く小説に出てくる男も、ロクデナシが多いよなぁ。吉田修一作品の登場人物ほど糞ではないけれども。「恋愛小説は男ではなく女を殺せ」という鉄則は守っているものの、お魚に囲まれて、女みたいに別腹人生を謳歌しているのは、なんとも後味が悪い。

熱帯魚バカな男に出会い、お魚に負けてしまったヒロインの悲劇に全米が泣いた!!


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孤独か、それに等しいもの

孤独か、それに等しいもの (角川文庫)孤独か、それに等しいもの (角川文庫)
(2006/09/22)
大崎 善生

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今日一日をかけて、私は何を失ってゆくのだろう―。高校三年の初秋、ピアスの穴を開けようとする私に、恋人がささやいた一言―大切なものを失くしてしまうよ。あれから九年を経て、私は決まりきった退屈きわまりない毎日を過ごしていた…(「八月の傾斜」)。憂鬱にとらえられ、かじかんでしまった女性の心を映しだし、灰色の日常に柔らかな光をそそぎこむ奇跡の小説全五篇。明日への小さな一歩を後押しする珠玉の作品集。


パイロットフィッシュ」の完成度が高すぎたのだろうか。この短編集は、どうも物足りない。文章は良いのだけど、ストーリーに引き込まれる前に話が終ってしまう。なんだかやるせない話が続くし、鬱だよ。悪くはないんだけど、気分が滅入る。

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パイロットフィッシュ

パイロットフィッシュ (角川文庫)パイロットフィッシュ (角川文庫)
(2004/03/25)
大崎 善生

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人は、一度巡りあった人と二度と別れることはできない―。午前二時、アダルト雑誌の編集部に勤める山崎のもとにかかってきた一本の電話。受話器の向こうから聞こえてきたのは、十九年ぶりに聞く由希子の声だった…。記憶の湖の底から浮かび上がる彼女との日々、世話になったバーのマスターやかつての上司だった編集長の沢井、同僚らの印象的な姿、言葉。現在と過去を交錯させながら、出会いと別れのせつなさと、人間が生み出す感情の永遠を、透明感あふれる文体で繊細に綴った、至高のロングセラー青春小説。吉川英治文学新人賞受賞作。


第23回吉川英治文学新人賞受賞作。

魚は飼ったことないから知らなかったけど、パイロットフィッシュは水槽の環境を整える為に使われるらしい。目的の魚を飼う環境になったら、捨てられたりその魚の餌にされてしまうのである。このパイロットフィッシュになぞらえて物語は進んでいく。歳をとる程に、この悲しい物語に共感できる部分が増えていくのではなかろうか、と思います。

冒頭の一節。
人は、一度巡りあった人と二度と別れることはできない。なぜなら人間には記憶という能力があり、そして否が応にも記憶とともに現在を生きているからである。

いきなり、私の考え方と真っ向から対立するような命題をつきつけられて、記憶について考えさせられた。未来が確実に少なくなる一方、過去の占める割合が多くなり、沈み込んだ記憶の量も増え続ける。その沈み込んだ記憶が不意に蘇ってきたら、そして、それが悔いの残るモノであったら……。

無意識のうちに自らの記憶と対峙するが故に、この物語に反応してしまったのかもしれない。ストーリー的にはどうって事ないのだが。最初の1ページは特に上手いと思う。

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