津村記久子

攻略対象書籍は以下。

君は永遠にそいつらより若い』★★★★
カソウスキの行方』★★★☆
婚礼、葬礼、その他』★★★☆
ミュージック・ブレス・ユー!!』★★★
アレグリアとは仕事はできない』★★★☆
八番筋カウンシル』★★★
ポトスライムの舟』★★★
ワーカーズ・ダイジェスト』★★★☆
『まともな家の子供はいない』
とにかくうちに帰ります』★★★☆
『やりたいことは二度寝だけ』
『ウエストウイング』
『これからお祈りにいきます』

共著
『ダメをみがく: “女子”の呪いを解く方法』

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とにかくうちに帰ります

とにかくうちに帰りますとにかくうちに帰ります
(2012/02/29)
津村 記久子

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うちに帰りたい。切ないぐらいに、恋をするように、うちに帰りたい――。職場のおじさんに文房具を返してもらえない人。微妙な成績のフィギュアスケート選手を応援する人。そして、豪雨で交通手段を失った日、長い長い橋をわたって家に向かう人――。それぞれの日々の悲哀と矜持、小さなぶつかり合いと結びつきを丹念に描く、芥川賞作家の最新小説集。働き、悩み、歩き続ける人たちのための六篇。


6編入っているけど、表題作含め全て同じ場所で働く人々の話で、繋がっているのが楽しい。不誠実な態度には不誠実で返す事務系OL、自分の物と他人の物の区別が出来ずに道具を何処かへやってしまうおっさん、インフルエンザが流行してるのに無駄に頑張る人など、普通の会社にいそうな人々が登場する。

社内の事務処理に無頓着で、売上しか見ていない馬鹿って結構いるよね。後方支援してくれる人を大切にしない奴は愚か者である。他人の持ち物を勝手に使って返さない馬鹿も、よくいるタイプである。

表題作は集中豪雨に見舞われて、事故も重なり、家に帰るのに難儀する4人の話。帰宅難民化しかけて大変だが、苦労してびしょ濡れで歩いても、家に帰れるだけ幸せだよね。ハイパーブラックだと24時間仕事で会社に住んでるから、帰宅難民とは無縁な人生だし。



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ワーカーズ・ダイジェスト

ワーカーズ・ダイジェストワーカーズ・ダイジェスト
(2011/03/25)
津村 記久子

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32歳は、欲望も希望も薄れていく年だった。けれど、きっと悪いことばかりじゃない。重信:東京の建設会社に勤める。奈加子:大阪のデザイン事務所に勤め、副業でライターの仕事をこなす。偶然出会った2人は、年齢も、苗字も、誕生日まで同じ。肉体的にも精神的にもさまざまな災難がふりかかる32歳の1年間、ふたりは別々に、けれどどこかで繋がりを感じながら生きていく―。頑張るあなたに贈る、遠距離“共感”物語。


東京の建設会社に勤める重信、大阪のデザイン会社に勤める奈加子。主人公が二人いて、視点が切り替わりすぎて落ち着かない。一度、仕事で関わるものの、その後はラスト付近まで別々の会社人生で、接点が無い。遠距離“共感”物語で、別にフラグが立ったりはしないのか(笑)。

会社に関しては、訳のわからんふざけた女もいるものの、ブラックでもないので、淡々と仕事をしつつ過ごせるのが羨ましい。脇役で、たったの80時間も! 残業がある会社で疲れて辞めた人がいるけれども、その程度は普通じゃないの? ブラックだと300時間くらい残業あるよ。残業代は無いけど(をいっ!)。

重信は、仕事されられ過ぎで病んだ人の代わりに、大阪に行く事になるのだが、そこでキチガイ・クレーマーに絡まれて酷い目に遭っている。自分の不満を誰かにぶつけてストレス発散するなんて最低の人間だよな。最近は日本全体が末期症状だから、キチガイ・クレーマーだらけだけどね……。

もう一編入っている「オノウエさんの不在」は、干されたという噂のオノウエさんを巡って、周囲の人間が勝手な憶測を言う話だった。ブラックっぽい駄目会社に勤める若者が主人公で、仕事を教えてもらったオノウエさんの身を案じるのだが、こういうブラックにいる時点でもう微妙だよなぁ。


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ポトスライムの舟

ポトスライムの舟ポトスライムの舟
(2009/02/05)
津村 記久子

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29歳、工場勤務のナガセは、食い扶持のために、「時間を金で売る」虚しさをやり過ごす日々。ある日、自分の年収と世界一周旅行の費用が同じ一六三万円で、一年分の勤務時間を「世界一周という行為にも換金できる」と気付くが―。ユーモラスで抑制された文章が胸に迫り、働くことを肯定したくなる芥川賞受賞作。


第140回芥川賞受賞作。

かなり叩かれている感じだけど、ちゃんと物語としては成立しているし、技巧優先の実験作みたいなのと比べたら普通に読めると思うのだが……。津村作品の中では、初期作と比べると力強さが欠けてしまい、小さく無難に収まっているのが物足りない気もするけれども、そう悪くは無い。

ただ、工場勤務の底辺喪女が本気で行く気も無いだろうに、世界一周用のお金を貯めるだけなのは、ストーリーとしてはさほど面白くなかった。ダメ男と結婚した友人が自分のところに逃げてくるも、そんなに面白い展開にならないし。

友人のうち、一応勝ち組に属している人は、空気が全然読めない人間で、相手の事を考慮する能力も欠如していて苛立った。どこかにある幸福でも不幸でもない日常を読まされてもなぁ。まあ、「で?」って言いたくなるような、こういうどうでも良い感じは、いかにも最近の純文学らしくはある。

もう一編入っている「十二月の窓辺」のほうは、更年期障害のキチガイハイミスっぽい上司にひたすらいびられる話で憂鬱な気分にしかなれなかった。作者本人がパワハラで退社しているので、これは実在のパワハラ上司がモデルなのかね? こういう頭おかしい奴が上司になると最悪だよね。いくら仕事が出来ても、自分が間違っていた時に頭を下げられないような奴は最低のゴミである。死んで欲しい。


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八番筋カウンシル

八番筋カウンシル八番筋カウンシル
(2009/02/20)
津村 記久子

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小説の新人賞受賞を機に会社を辞めたタケヤス。実家に戻り、家業を継ごうと考えはじめるヨシズミ。地元の会社に就職するも家族との折り合いが悪く、家を買って独立したいと考えるホカリ。幼なじみの3人が30歳を目前に、過去からの様々な思いをかかえて再会する。久しぶりに歩く地元の八番筋商店街は中学生の頃と全く変わらないが、近郊に建設される巨大モールにまつわる噂が浮上したことで、地元カウンシル(青年団)の面々がにわかに活気づく。そんな中、かつて商店街で起こった不穏な出来事で街を追われたカジオと15年ぶりに再会し…。生まれ育った場所を出た者と残った者、それぞれの人生の岐路を見つめなおす終わらない物語。


八番筋カウンシルって何かと思ったら、商店街の青年団の事か。青年団とは名ばかりで、おっさんだらけになっているのだけど。体を壊し、小説で新人賞を獲って戻ってきたタケヤス、家業を継ごうと戻ってきたヨシズミ、独立しようと考えているホカリ、この三人を中心にして物語が進んで行く。

狭い町内における、人間の小ささ、卑しさ、悪意みたいなもので染められていて、嫌な奴ばかり出てくるので読んでいて萎えて来る。身勝手な大人だらけだし、過去に起こったある出来事が、未だに三人に暗い影を落としている。

町内会の面々は、本当にどうしようもない奴らが多いな。それぞれの家族も、家庭を顧みない駄目親父や、悪意ばかりの祖母、暴力をふるう引きこもりの馬鹿兄貴、空気を読まない弟と、問題ある人だらけなので、こういう人々と関わって生きるのは大変そうだ。

メインとなる三人は、それぞれ自分の土俵で人生と向き合い、戦っているのでまだ救われるけど、あまり楽しい話じゃないし、現在と過去を行き来するので、時系列混ぜこぜで読み難かった。


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婚礼、葬礼、その他

婚礼、葬礼、その他婚礼、葬礼、その他
(2008/07)
津村 記久子

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友人の結婚式に出席中、上司の親の葬儀に呼び出されたOLヨシノのてんやわんやな一日。若者たちの群像小説「冷たい十字路」併録。


第139回芥川賞候補作。

表題作のほうは、休みの日に旅行しようと予約を入れた直後、友人の結婚式を知らされ、仕方なくキャンセルして結婚式に行くものの、上司から葬儀に呼び出されて散々な一日となる女性の話。

結婚式はともかく、上司の親が死んだからと無理やり呼び出し、社員総出で強制参加とか、どれだけブラックなんだよ。トンデモ会社だが、こういう頭がおかしい会社だらけで、人間ではなく社蓄として生きるのは、先進国のフリをした人類外国家日本に住む、家畜人ヤプーである以上、仕方が無いのかもしれない。

良い意味で、最近の純文学らしくなく、ちゃんと物語として出来上がっているので読めるけど、題材があんまり楽しくないよなぁ。愚かな人間模様はよく描けていると思うけど、糞会社や、教職のクセして愛人作ってウハウハ人生歩んだ挙句、死してなお無関係な人間まで巻き込む爺さんに憤りを覚えた。

「冷たい十字路」のほうは、自転車で暴走する馬鹿高校生が事故を起こし、その事故現場に居合わせた人や関係者、小学校の教師など複数目線で切り替わる話だった。


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ミュージック・ブレス・ユー!!

ミュージック・ブレス・ユー!!ミュージック・ブレス・ユー!!
(2011/06/25)
津村 記久子

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アザミよ、ヘッドホン1個耳に引っ掛けてどこへ行く―。オケタニアザミは「音楽について考えることは、将来について考えることよりずっと大事」な高校3年生。髪は赤く染め、目にはメガネ、歯にはカラフルな矯正器。数学が苦手で追試や補習の連続、進路は何一つ決まらない「ぐだぐだ」の日常を支えるのは、パンクロックだった!超低空飛行でとにかくイケてない、でも振り返ってみればいとおしい日々…。


第30回野間文芸新人賞受賞作。

音楽小説かと思ったけど違った。大阪に住む高校3年生、オケタニアザミの日常だった。音楽にどっぷり嵌り、どこでもヘッドホンで聞き続ける受験生。バンドは喧嘩別れで解散、紹介してもらった別のグループは嫌味な大学生だらけで、しかも不採用。歯は矯正中で、頭はそんなに良くないのか、追試や補習だらけ。

最近の携帯小説みたいな陳腐さが無い分、まともに読めるけど、ややダメな感じの女子高生の等身大な日常だからか、すでに青春が遠く過ぎ去った身としては、あまり楽しく読めなかった。やはりこれは、現役世代が読むべき本でしょう。

みんなが順風満帆な感じで合格を決めて行くのに、主人公だけバッドエンドな感じになるのが生々しいが、無理せず自然体で生きているので、全然へこたれないのが救い。

過酷な生存競争に投入された暗黒時代生まれとしては、こういうぐだぐだな生き様が許される世代は羨ましい。


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アレグリアとは仕事はできない

アレグリアとは仕事はできないアレグリアとは仕事はできない
(2008/12)
津村 記久子

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「この会社に来て、もっとも低い立場からそのキャリアを始め、今もそこに留まっているミノベ」の、職場での孤独な戦いと人間模様を、独特のユーモアとパワーで描く意欲作。


アレグリアって外国人か何かかと思っていたら、会社に設置された多機能の大型機械なのか! このアレグリアという機械はコピーも出来るのだけど、他の機能と比べて何故かコピーだけ上手く行かない。急に止まったり待機モードになってしまうので、仕事が出来ずにアレグリアを敵に回して戦い始めるミノベ。

こういう事、結構あるよね。機械が仕事の邪魔をするのに、経営者や責任者のボンクラどもが放置したままで、実際にそれを使わなければならない最前線の人間だけが苦労するという……。何処にでもありそうな会社の日常で、妙なリアリティがある。

工夫しようと努力しようと、ダメなものはダメなのだから、さっさと使える機械に変えて欲しいよね。実は、アレグリアがミノベのいう事を聞かないのには原因があって、後半で明らかにされる。

「地下鉄の叙事詩」は、複数の人物による視点変更で、満員の通勤電車内という同一空間に渦巻く悪意と苛立ちを描く。人間の愚かさや醜さが絡み合っていて、読んでいて楽しい内容ではないけれども、強烈だ。満員電車はストレスが溜まる過酷な環境だけど、まだ満員電車に乗れるだけ幸せなんだけどさ(汗)。

ブラックだと、始発に乗って、会社に住んでて、たまにあるかどうかの休みの日の始発で家に寝に行く感じになるからね! 満員電車で往復する人は、「うわーい良かった! ブラックじゃないから毎日満員電車で通勤出来ちゃうわ!」と、ポリアンナみたいに無理やりポジティブになるべきであろう。満員電車に乗って文句溜め込むような奴は、まだ本当の地獄を知らない。


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君は永遠にそいつらより若い

君は永遠にそいつらより若い (ちくま文庫)君は永遠にそいつらより若い (ちくま文庫)
(2009/05/11)
津村 記久子

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大学卒業を間近に控え、就職も決まり、単位もばっちり。ある意味、手持ちぶさたな日々を送る主人公ホリガイは、身長175センチ、22歳、処女。バイトと学校と下宿を行き来し、友人とぐだぐだした日常をすごしている。そして、ふとした拍子に、そんな日常の裏に潜む「暴力」と「哀しみ」が顔を見せる…。第21回太宰治賞受賞作にして、芥川賞作家の鮮烈なデビュー作。


第21回太宰治賞受賞作。

デビュー作なのに、完成度が高すぎる。雨が降る中、傘もささずに知人が10年前に無くした自転車の鍵を探し続ける意味深な始まりで、そこから過去へ飛ぶのだが、この謎めいた冒頭とラストが奇麗に繋がるのは素晴らしい。

舞台は京都で、恋愛に拙い喪っぽい女性の学生生活をユーモラスに綴っていくのだが、読み進めるにつれ、自殺、暴力、虐待、強姦と、重苦しいネタがどんどん加味されていく。ちょっと変わった女性の日常かと思いきや、弱者の視点に立ちながらも、襲いかかってくる悪意に負けず、戦い続ける人々の物語だった。

どんどん重苦しい事実や事件が加わっていくのだが、主人公のキャラが面白いので、憂鬱な気分にならず、面白く読み進める事が出来た。


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カソウスキの行方

カソウスキの行方カソウスキの行方
(2008/02/02)
津村 記久子

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郊外の倉庫管理部門に左遷された独身女性・イリエ(28歳)は日々のやりきれなさから逃れるため、同僚の独身男性・森川を好きになったと仮想してみることに…。第138回芥川賞候補作。


第138回芥川賞候補作。

芥川賞系統作家なので、あんまり期待していなかったのだが、これは予想を大きくハズれて面白かった。こういうのこそ、正統派の純文学だろう。もうこの作品で、いきなり受賞しても良いくらい。書いてる本人と選考委員だけが勝手に楽しんでいる自慰行為的な作品ばかりではないんだね。なんか、久しぶりにまともな作品を読んだ気がするよ。

カソウスキって何かと思ったら、“仮想好き”ですか(笑)。しょうもない会社の内部事情で倉庫管理部門に左遷された女が、やる気無くしてダラダラと会社で過ごすのだが、通勤するモチベーションを上げるため、好きでもない男を、無理やり好きになったという設定にしてしまうのである。

いい加減な仕事ばかりするので、主人公の女には全く好感が持てないが、カソウスキというぶっ飛んだ妄想は面白い。


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