小林泰三

攻略対象書籍は以下。

『密室・殺人』
『AΩ』
ネフィリム』★★★☆
玩具修理者』★★★☆
人獣細工』★★★☆
肉食屋敷』★★★☆
海を見る人』★★★★
家に棲むもの』★★★☆
『目を擦る女』
『脳髄工場』
天体の回転について』★★★☆
『忌憶』
『モザイク事件帖』
『臓物大展覧会』
『セピア色の凄惨』
『人造救世主』
『人造救世主 ギニー・ピッグス』
『天獄と地国』


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天体の回転について

天体の回転について (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)天体の回転について (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)
(2008/03)
小林 泰三

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科学文明と無縁に育った青年が天空にのびる“天橋立”で出会った女の子は、とびきり可愛い宇宙旅行の案内係だった—無垢な若者が初体験するめくるめく恋と大気圏離脱を描いた表題作、“ロボット工学の三原則”の間隙を突く「灰色の車輪」、男女の権利格差が逆転した社会の秘密を描く「性交体験者」、異星人との驚くべき最悪のコンタクトが語られる「三〇〇万」等、バラエティに富んだアイデアを論理的に突き詰めた、全8篇収録の奇想SF博物館。『海を見る人』に続く傑作ハードSF短篇集。


海を見る人』ほど奇想天外な異世界っぽいSFではなくて、普通になっている。表題作であり、表紙にもなっている「天体の回転について」は、遥か未来、すでに科学文明が終わってしまい、軌道エレベーターが遺跡化している時代の物語である。科学技術を失い、後退してしまった世界の少年が軌道エレベーターに乗ってしまい、ホログラムとして現れるエレベーターガールに惹かれつつ、そのまま宇宙旅行をする事になってしまう。この話は『宇宙旅行はエレベーターで』を読んでいると、非常に判りやすい。

「銀の船」は人面石の話が出てくるので、すっかり火星探査隊の近未来物だとばかり思っていたら、その結末にしてやられた! 小林泰三らしい作品もあるけれども、『海を見る人』と比べたら無難なものが多いかな?


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海を見る人

海を見る人 (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)海を見る人 (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)
(2002/05)
小林 泰三

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「あの年の夏祭りの夜、浜から来た少女カムロミと恋に落ちたわたしは、1年後の再会というあまりにも儚い約束を交わしました。なぜなら浜の1年は、こちらの100年にあたるのですから」―場所によって時間の進行が異なる世界で哀しくも奇妙な恋を描いた表題作、円筒形世界を旅する少年の成長物語「時計の中のレンズ」など、冷徹な論理と奔放な想像力が生み出した驚愕の異世界七景。SF短篇の名手による珠玉の傑作集。


ホラー小説家が書くSFってどうなんだろうかと思っていたが、かなりのハードSFになっているので驚いた。硬すぎて理解出来ない部分があれば、無視してそのまま読み流しても大丈夫だけど。

普通の近未来物ではなくて、時間の流れが変わる世界や、重力が変化する世界、不思議な円筒形世界内部等、普通じゃない世界での物語が七編。異世界なのか、高度に発達した文明が作った人工世界なのかは不明だが、背景設定が尋常じゃないものばかり。

表題作は、時間の流れが違う村で生まれた男女に起こる悲劇だった。恋愛絡みは、重力や時間に引き裂かれるものが多い。これに比べたら、言語や国籍や宗教や民族や出自の壁に阻まれる恋愛小説なんて、些細な障害でしかない。

ある者にとっての死の一瞬も、それを見続ける者にとっては永遠にも等しい。

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ネフィリム―超吸血幻想譚

ネフィリム―超吸血幻想譚 (角川ホラー文庫 59-9)ネフィリム―超吸血幻想譚 (角川ホラー文庫 59-9)
(2007/09/25)
小林 泰三

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吸血鬼最強と怖れられたヨブ。少女・ミカとの約束で自らに血を吸うことを禁じた吸血鬼―。娘と妻の復讐のため、吸血鬼を退治する組織「コンソーシアム」に入った人間・ランドルフ―。吸血鬼を食べ、己の肉体に吸血鬼の臓器を収め、さらに強力なものへ変身する、追跡者・J―。ミカを守ろうとするヨブ。新兵器に身を包んだランドルフ。さらに強力になったJ。三つ巴の戦いが始まる。炸裂する、書き下ろし!ハード・SF・アクション・ホラー・小林泰三ワールド。


ハードバイオレンスホラーSF小説といった感じか。吸血鬼物なのに、重火器や新兵器が出まくるので、SFっぽくなっている。少女を守る最強の吸血鬼ヨブ、妻と娘を殺されて復讐に燃えるランドルフ、人類と吸血鬼の敵ストーカー。三つ巴の戦いが繰り広げられる。

別の作家が作ったキャラを捨て駒にするのは微妙であるが、物語としては楽しめた。全貌が語られないまま終わってしまうので、少女の役割がよく判らなかった。結末が、ちょっとB級的すぎる。

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肉食屋敷

肉食屋敷肉食屋敷
(1998/11)
小林 泰三

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異星からの遺伝子、内臓の臭い、一途な愛の狂気…現実のちょっと向こう側に渦巻く恐怖の世界。日本ホラー小説大賞短編賞作家が恐怖を凝縮させた4つの物語。ジュラシック・パークに刺激された研究者が、6500万年前の地層の中にあるDNAから地球外生命体を復元してしまう「肉食屋敷」、西部劇をモチーフにゾンビの世界を描いた「ジャンク」、人間の一途な愛が恐怖を生み出す「妻への三通の告白」、自分の中にあるもう一つの人格が犯した殺人に怯える「獣の記憶」を収録した小林泰三傑作短編集。


文章自体はそんなに上手いと思えないのだが、意表をつく物語構成がすごく好き。表題になっている「肉食屋敷」は、クトゥルフ神話好きならニヤリとする事必至。「ジャンク」は西部劇風のエログロSFスタイルで、ちょっと雰囲気がバンパイアハンターDみたいな感じである。「妻への三通の告白」は、末期癌患者の愛の告白かと思いきや、最後に狂気で締められる。してやられたのは「獣の記憶」である。多重人格障害を絡めた殺人事件なのだが、最後の最後にとんでもないどんでん返しが待っていた!


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家に棲むもの

家に棲むもの (角川ホラー文庫)家に棲むもの (角川ホラー文庫)
(2003/03)
小林 泰三

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ボロボロで継ぎ接ぎで作られた古い家。姑との同居のため、一家三人はこの古い家に引っ越してきた。みんなで四人のはずなのに、もう一人いる感じがする。見知らぬお婆さんの影がよぎる。あらぬ方向から物音が聞える。食事ももう一人分、余計に必要になる。昔、この家は殺人のあった家だった。何者が…。不思議で奇妙な出来事が、普通の世界の狭間で生まれる。ホラー短編の名手、小林泰三の描く、謎と恐怖がぞーっと残る作品集。


邪悪な小林泰三とまで言われる程に、この人の書くホラーは禍々しい。某暗黒神話系統のホラーも書くし、不快な粘液でベトベトになるような気味の悪い話が多い。この短編集に入っているのは暗黒神話や化け物系統のホラーじゃないのだが、人間の暗黒面が現われている分、単に幽霊が出てきたりするものよりも恐ろしくておぞましい。一番怖いのは死んだ人間や異界の化け物じゃなくて、生きた人間なのである。

表題の「家に棲むもの」は、かつてそこに住んでいた者の怨念だとばかり思っていたら、意表をつく結末にしてやられた。「食性」は誰でも考え付く題材だが、落としどころはやはりホラー。「五人目の告白」は、ある事件を別々の視点で捉えながらも実は……。「肉」は典型的な小林作品。肉汁で汚されそうな気色悪さ。「森の中の少女」も隔離された世界で生きる少女が化け物のいる領域へ踏み込んで知る事実に驚かされる。「魔女の家」は精神的に捕らえられた悪夢の様。「お祖父ちゃん絵」も極めて猟奇的。

全部が全部、邪悪なホラーって感じだが、化け物じゃなくて人間が怖いのである。やはり、この小さな世界で最も邪悪なのは人類なのだ。

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人獣細工

人獣細工 (角川ホラー文庫)人獣細工 (角川ホラー文庫)
(1999/12)
小林 泰三

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パッチワーク・ガール。そう。わたしは継ぎはぎ娘。その傷痕の下には私のものではない臓器が埋められている。傷痕を見ていると皮膚が透けて、臓器がゆっくりと蠢動し、じゅくじゅくと液体が染み出してくるのが見えてくる。わたしのものではない臓器。人間のものですらない臓器。…第2回日本ホラー小説大賞短編賞をあの名作「玩具修理者」で受賞した著者が、内臓の匂い漂う絶望と恐怖の世界を構築した表題作に、二編を加えた待望の第二作品集。


表題作は、豚の臓器を移植されまくって生きながらえる少女の苦しみ。単に臓器移植を取り上げただけではなく、やはり小林泰三らしくひたすらグロい。最後の最後が、やはり邪悪。

「吸血鬼狩り」は、ちょっとアッサリしすぎだった。ラストにドンデン返しが待っているとばかり思っていたら、そのまま素直に終わってしまい、伏線も何も無かったので物足りない。

「本」は、同級生に配られた謎の本の影響で、読んだ人間が次々に狂っていくホラー。一見、普通の呪いに思えるが、もっと大きな何物かの意思が働いており、暗黒神話体系みたいな気味悪さが残る。

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玩具修理者

玩具修理者 (角川ホラー文庫)玩具修理者 (角川ホラー文庫)
(1999/04)
小林 泰三

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玩具修理者は何でも直してくれる。独楽でも、凧でも、ラジコンカーでも…死んだ猫だって。壊れたものを一旦すべてバラバラにして、一瞬の掛け声とともに。ある日、私は弟を過って死なせてしまう。親に知られぬうちにどうにかしなければ。私は弟を玩具修理者の所へ持って行く…。現実なのか妄想なのか、生きているのか死んでいるのか―その狭間に奇妙な世界を紡ぎ上げ、全選考委員の圧倒的支持を得た第2回日本ホラー小説大賞短編賞受賞作品。


第2回日本ホラー小説大賞短編賞受賞作。

書名にもなっている『玩具修理者』と、『酔歩する男』の2つの話が入っている。

玩具修理者の方は、外なる神っぽいモノの名前が出てきて、どこかの暗黒神話体系をネタにしている。異形の者は出て来ないけど、何でもバラバラにして修理する男の正体が、もしかすると……。

酔歩する男は、よくもこれだけ地の文が少なく、会話口調でジェットコースターのように話を引っ張れたものだと関心する。

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