夏のロケット

夏のロケット (文春文庫)夏のロケット (文春文庫)
(2002/05)
川端 裕人

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火星に憧れる高校生だったぼくは、現在は新聞社の科学部担当記者。過激派のミサイル爆発事件の取材で同期の女性記者を手伝ううち、高校時代の天文部ロケット班の仲間の影に気づく。非合法ロケットの打ち上げと事件は関係があるのか。ライトミステリーの筋立てで宇宙に憑かれた大人の夢と冒険を描いた青春小説。第15回サントリーミステリー大賞優秀作品賞受賞のデビュー作。


第15回サントリーミステリー大賞優秀作品賞受賞作。


天文学部でロケットを作り始めた少年達が、大人になってから再会してロケットを打ち上げる物語。新聞記者、研究者、商社マン、カリスマ芸能人と道は分かれているものの、火星まで行きたいという夢は健在なままの男達が、宇宙まで届くロケットを打ち上げようとする。ただし、夢見るだけではなくて、それぞれが打算で動いている。

過激派によるミサイル爆発事件とも絡んで、ロケットを打ち上げようとする彼らも、容疑者として目をつけられ始める。非合法でロケットを打ち上げるのは褒められた事ではないが、この国では合法でやろうとしたら、官僚や財界の力で圧殺されるからなぁ。大人味のジュヴナイルといった感じで、読後も爽やかなのが良かった。


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てのひらの中の宇宙

てのひらの中の宇宙てのひらの中の宇宙
(2006/09)
川端 裕人

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ぼくの子どもがはじめて触れる死。それは、母親の死かもしれない。アスカとミライのふたりの子と暮らすぼく。子どもたちの母親である妻は、癌が再発し入院している。この世界に生と死があることを、子どもたちに伝えなければならない。ぼくたちを取り巻く、生きものを通して。


癌が再発して入院中の妻。幼い子供二人を抱えて日々を過ごす夫。粗筋だけ聞けば単なる病気物に思えるが、ちょっと違う。宇宙の変遷や生物の進化から、親子で生と死を考える父とミライ。幼すぎて訳もわからず踊っているだけのアスカはともかく、このミライというお子様がとてもお子様とは思えぬ知識量で……。会話文が生き生きとしており、躍動感溢れているのが良い。とても魅力的なお子様だ。

この家族の行く先に何が待っているのかは描かれていない。母親が助かるのか、いなくなってしまうのかも判らない。全体通して病気が絡んでくるのだが、某セカチューのように安易な設定ではないので不快感は覚えない。


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The S.O.U.P.

The S.O.U.P. (角川文庫)The S.O.U.P. (角川文庫)
(2004/05)
川端 裕人

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世界中を熱狂させたゲーム、「S.O.U.P.」の開発から十年。プログラマから一転、セキュリティを護るハッカーとして、FBIの依頼もこなす巧に、経済産業省から、悪質なHP侵入者を突き止めてほしいという依頼が入る。犯人を追い詰めた巧が見つけたのは、自分たちの開発した「S.O.U.P.」に巣食う、サイバー・テロリスト集団だった!そして今、世界を巻き込むインターネット戦争が幕を開ける。ネット社会の陥穽を鋭く突いた、エンタテインメント・ノベル。


バーチャルワールドで繰り広げられる腕利きハッカーとクラッカー集団の攻防戦。ハイテクを駆使しながら、ゲド戦記と指輪物語をモデルとして構築された幻想世界。かつて、その世界を作り出した3人だったプログラマーは、政府から依頼を受け、世界を騒がしているeGGと対峙する事となる。

なんか、題名がパッとしないのだが、読んでみたら中身は結構面白かった。現実世界と電脳世界の双方で行われる攻防戦。バーチャルでは、手がけた世界が改変されて乗っ取られており、現実世界では海外まで戦場が拡大して行く。これ、出版直後に読んでいたら、かなり衝撃を受けていただろうなぁ。


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エピデミック

エピデミックエピデミック
(2007/12)
川端 裕人

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東京近郊、農業と漁業の町、崎浜。二月に花の咲きほこる常春の集落で、重症化するインフルエンザ患者が続出?現場に入った国立集団感染予防管理センター実地疫学隊隊員・島袋ケイトは、ただならぬ気配を感じていた。果たしてこれはインフルエンザなのか?ケイトは、総合病院の高柳医師、保健所所員の小堺らと、症例の多発地区に向かう。重症患者が爆発的に増え、死者が出はじめても、特定されない感染源。恐怖に陥った人々は、住民を感染地区に閉じこめ、封鎖をはじめた。ケイトは娘を母に預け、人類未到の災厄を封じこめるため、集団感染のただ中に飛びこんだ―。


首都圏の外れで発生した謎の疫病。たまたま現場に居合わせた国立集団感染予防管理センター実地疫学隊隊員、島袋ケイトが未確認病原体の封じ込めに挑む。最初は鳥インフルエンザかと思ったが、それだとあまりにも生々しくなるからか、原因は少し変えてある。

疫病発生と、その後の対応についてリアルに描かれている。しかし、あまりにも優等生的であるが故に、読み物としては少々物足りない面もある。こういう病原体物では、馬鹿な役人の怠慢や自己中心的な医者の暴走により、事態が深刻なまでに悪化して行くのがセオリーだが、この作品には話を盛り上げる悪役キャラが存在しないのである。どことなく、ドキュメンタリー小説のような感じで、淡々と事態が進んで行く。

たまたま発生場所にエリート主人公がいたり、さほど致命的なポカミスもなく政府が動いているのは、ちょっと都合が良すぎる気がする。今の政府の対応を見ていたら、ここまで綺麗に物事が動くとは思えない。

東京都内まで謎の致死性病原体が蔓延したら面白かったのにな(笑)。いや、ブラック・ジョークじゃなくて、鳥インフルエンザの時はきっとそうなりますから! 欧州だとプレ・パンデミック・ワクチンを人数分用意した国もあるというのに、日本はコストがかかるので医療従事者、警察、消防、自衛隊、政治家あたりにしか供給されません。

この国は、一人当たり原価ベース1,200円のコストをケチって見殺しにしようとしていますからね。プレ・パンデミック・ワクチンに効力があるのか不明だが、1,200円で助かるかもしれないのに、自分の分だけ確保して人数分用意しないのは酷いと思う。(スイス、英国では全員に接種予定、日本はライフラインを守る人と政治家だけに接種で貧乏人は死ね! という設定)

一説では、国内だけでも600万人死ぬと言われており、その中の1人は自分かもしれない。まあ、ワクチンが無くて死んでも、ちゃんと用意しないような奴らを選んだ国民の責任ですが。無論、私は投票してないので責任は取らない!(これを書いた時点での与党は自民党である。念のため。)

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