冥の水底

4062191431冥の水底
朱川 湊人
講談社 2014-10-29

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医者である市原玲人は、友人の平松光恵に、首から上だけが狼のいわゆる「狼男」の死体写真を見せられる。彼女はその写真と大切な取材手帳を市原に託し、忽然と姿を消した。時は20年遡る。阿巳雄山の奥に、特殊能力を持つ「マガチ」とよばれる人々が暮らしていた。マガチの青年シズクは、初恋の少女を忘れられず、彼女を追って東京で暮らし始めるが……。一途な純粋さが胸を抉る、一気読み必至の、純愛ホラー巨編。


主人公の市原玲人は、古くからの友人である平松光恵に狼男の死体写真を見せられる。光恵と会った直後に彼女が行方不明となったため、市原は殺人事件の容疑者として警察に追われる事となる。

時系列を遡り、マガチと呼ばれる特殊能力を持つ者として生まれた青年が、好きになった女性を追って上京するパートが交互に入ってくる。過去部分は、マガチの青年シズクが書いた手紙という形になっている。

市原が平松の行方を探し始めると、殺人事件が発生し、無能な警察が自分を容疑者だと思って追いかけてくるようになる。最初は狼男の写真を偽物だと信じていなかった市原だが、やがてマガチから警告を受け、直後に血の繋がらない息子まで行方不明となり、引くに引けなくなってしまう。

息子を取り戻すため、今まで7人も殺して来た恐ろしいマガチと対峙しなければならなくなった市原だったが、やがてシズクの悲しい人生を知る事となる。切ない系ホラーになっているので、異形に生まれてしまった者が出て来るのだが、恐くはない。


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朱川湊人

攻略対象書籍は以下。

都市伝説セピア』★★★★★
『白い部屋で月の歌を』
さよならの空』★★★☆
花まんま』★★★★★
かたみ歌』★★★★★
わくらば日記』★★★★☆
赤々煉恋』★★★★
水銀虫』★★★☆
いっぺんさん』★★★☆
スメラギの国』★★★★
わくらば追慕抄』★★★★
本日、サービスデー』★★★★
あした咲く蕾』★★★★
ウルトラマンメビウス アンデレスホリゾント』★★★☆
太陽の村』★★★★
銀河に口笛』★★★★
鏡の偽乙女 薄紅雪華紋様』★★★★
オルゴォル』★★★☆
遊星ハグルマ装置』★★★★
箱庭旅団』★★★★★
満月ケチャップライス』★★★★
サクラ秘密基地』★★★★
なごり歌』★★★★☆
黄昏の旗』★★★★
月蝕楽園』★★★☆
『冥の水底』
キミの名前』★★★★
『無限のビィ』
『今日からは、愛のひと』
『黒のコスモス少女団 薄紅雪華紋様』
『わたしの宝石』

エッセイ
超魔球スッポぬけ!』★★☆


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月蝕楽園

4575238694月蝕楽園
朱川 湊人
双葉社 2014-07-16

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事務用品の製造販売会社に勤める私は、入院している部下の見舞いに行く。心に、ある不安を抱えながら…「みつばち心中」夫の一言が、私のなかの思ってもみなかった欲求を呼び起こした…「噛む金魚」など、深く激しい、熱く切ない愛のかたちを濃密に描いた5編を収録。直木賞作家が描く究極の愛。至上の恋愛小説集。


いつもの朱川湊人作品と違うと思ったら、恋愛小説集なのか。少し不思議なホラー、或はSFがかった他作品とは違って、普通の話が多い。そして、ほぼBAD ENDだから読むのが辛い。

「みつばち心中」は、若いOLの指先に執着してしまうお局主任の話。若い娘のほうは末期癌で会社からいなくなってしまうのだが、指先にしか執着しないので、百合なのか、指先フェチなのかよく分からない感じになっている。末期癌だから最後はBAD ENDだった。

「噛む金魚」は、医者と結婚したが、最初に自分が相手を受け入れられなかったため、四十を過ぎても処女のままという恐ろしい状態の主婦が、何とかロスト・バージンするためにいろいろと画策する話だった。これは、ただの不倫バレBAD ENDよりもキツいなぁ。完全に飼い殺し状態じゃないか。

「夢見た蜥蜴」は、高層階で飼われている“蜥蜴”が、ご主人様を失って、自分が何者なのかを知る話だった。記憶を失う以前も悲惨だけど、自分を取り戻した後もリアル人生ゲームの難易度が高すぎる。最初から違和感がありまくりだったから、蜥蜴の正体はすぐ分かったけど。

「眠れない猿」は、好きになった女性の過去のために、殺人を犯してしまった猿顔のブサメンによる独白。親に恵まれず、容姿に恵まれず、頭も良くなくて、ようやく好きな相手に出会えたと思ったら運命に恵まれず。やるせないBAD ENDが待っている話だった。

「孔雀墜落」は、性同一性障害で女の恰好をしている弟と、会社の上司と不倫を続ける姉の話だった。これも、弟のほうが下半身直結厨なキチガイ犯罪者の起こす事件に巻き込まれてBAD ENDだった。

5編全てが救われない話ばかりで、全俺が萎えた!


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キミの名前

4569821693キミの名前 箱庭旅団
朱川 湊人
PHP研究所 2014-12-13

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「キミが知らないだけで、この世界には、いろいろな秘密があるんだよ」過去でも未来でも、現実の世界でも夢の世界でも、自由自在に出入りができる旅行者(トラベラー)である少年。白馬を道連れに、“傍観者"として覗いた世界をそれぞれ「箱庭」に見立てた、14のショート・ストーリー。飼い猫の正体は“惑星調査員"(「マミオ、地球を去る」)、無職の兄と遭遇した時間の“ずれ"(「俺と兄貴が火曜日に」)、伯母にしか見えない小さな鬼(「鬼が来る正月」)、カバンの中に住む“なにか"(「シュシュと空きカバンの住人」)、 キリストと同じ誕生日の女(「クリスマスの呪い」)、“あの世"に行く前にかけた魔法(「跨線橋の秋」)、人間だけが知らない世界の原理(「バルル原理」)、ナブラ族の勇士と結婚した孫娘(「サトミを泣かせるな」)、夢の世界を自由に行き来できる男(「夢見王子」)、“天国に繋がった海"で出会った少年(「さよなら、旅行者」)などなど。物語はいつまでも終わらない――直木賞作家が綴る、切なくて心温まる珠玉の連作短篇集。


箱庭旅団シリーズの完結編。今回も怖くないホラーから少し不思議系SFまで、様々な短編が入っている。

飼い猫が実は地球を調査しに来た地球外知生体だった話から始まる。リサイクルショップで手に入れた格安のバッグから女の人が出て来る話は、主人公が怖がって封印しちゃうから、何も分からないままで終わって残念だと思ったら、ちゃんと続きが読めたので良かった。

バッグの中に住んでいる幽霊よりも、見えない鬼と戦うおばさんの話のほうが怖い。統合失調症だったのか、本当に鬼がいるのか分からないままなのが恐ろしい。

夢の中にある町で出会った夢見王子が実在の人物だったという話は面白くなりそうな設定なのだが、少し不思議な話のまま終わってしまった。

孫娘が連れて来た結婚相手はナブラ族の戦士で、「サトミを泣かせるな」と言ったところ、とんでもない事になってしまう。不老長寿なら良いけど、老いたまま不死になるのは微妙だよね。

最後に、多重世界を旅する少年(作中内では青年の時もある)が自分の居場所に戻って来て終わる。それぞれの短編はそれなりに面白かったけど、『箱庭旅団』の時のような神展開が無いのは残念だった。


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黄昏の旗

4569815316黄昏(たそがれ)の旗
朱川 湊人
PHP研究所 2013-10-12

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「見ている風景は、誰も似たようなものだわ。そこから何を見つけるかは、あなたの心しだい……」どんな時代にも、どんな場所でも、映画や本のような作られた世界のなかでも、自由自在に行き来できる「旅行者(トラベラー)」である少年が、白馬とともに旅する世界をそれぞれ「箱庭」に見立て、短篇の名手が物語を紡ぐ。国道四号を悠々と歩きつづけるゾウ(「誰もゾウにはかなわない」)、夕暮れの車窓から見えるオレンジ色の旗(「黄昏の旗」)、ジェフじいさんが壊した機械人形(「ヴォッコ3710」)、幽体離脱して好きな女性の危機を救った男(「人間ボート、あるいは水平移動の夜」)、アンデス山中で見たファニカの正体(「ひとりぼっちのファニカ」)、最果ての岬に響く哀調に満ちたバイオリンの音(「傷心の竜のためのバイオリンソナタ」)、真っ白な水着を着た僕たちの女神(「三十年前の夏休み」)などなど。笑いあり、涙あり、恐怖あり……直木賞作家が贈る、ちょっと不思議で懐かしい連作短篇集。


『箱庭旅団』がかなり良かったので、同じレベルのものを期待したのだが、白馬とともに多重世界を旅する主人公の絡み具合が減ったし、他の話との神クオリティな繋がり方もあまりなくなって、ごくごく普通の連作短編集に近くなってしまったのが残念。前作と比べて、入れ子構造もあまり感じられなくなっている。

短編それぞれも、少し不思議系だけではなくて、ちっとも不思議じゃない弱いオチのものが増えている。竜退治に出かける剣士のファンタジー物から、南米の山奥に何かが墜落してファニカと呼ばれる正体不明の存在に出会ってしまうSF風のもの、数年前の妻子にそっくりな何かが棲むマンションに取り込まれそうになるホラー風味のものなど、守備範囲は広いのだけど。並の作家ならともかく、朱川湊人だけに、今まで見せてきたような凄い技のものを読みたかった。

出番が減ったとはいえ、各短編よりも上位に位置する、より大きな物語としての主人公が登場する事と、万能に近い存在になってしまって同じく多重世界を放浪しているお姉さんが邂逅する点は良かった。短編単体では、格安で手に入れた家に住みはじめた家族が、次第に何か別の性格に代わって行く「アタシたちのステキな家」のオチが秀逸。


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なごり歌

なごり歌なごり歌
(2013/06/28)
朱川 湊人

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きっと、また会える。あの頃、団地は、未来と過去を繋ぐ道だったから。三億円事件の時効が迫り、「8時だョ!全員集合」に笑い転げていたあの頃。ひとつの町のような巨大な団地は、未来への希望と帰らない過去の繋ぎ目だった。失われた誰かを強く思う時、そこでは見えないものがよみがえる。ノスタルジックで少し怖い、悲しくて不思議な七つの物語。ベストセラー『かたみ歌』に続く感涙ホラー。


『かたみ歌』の続編的扱いをされている感じだが、題名がちょっと似ているだけで、続き物ではないよね? 『かたみ歌』は商店街だったが、『なごり歌』は巨大な団地が舞台となる。昭和四十年代、ノスタルジックで少し不思議系の話が七編。同じ団地が舞台となるし、登場人物も被って来たりして、絡み合う感じになっているのが良い。

団地に引っ越してきた少年が、不思議な友達と共にひと夏遊ぶ「遠くの友達」から始まる。フランケンシュタイン顔のブサメンマッチョが可愛い嫁を貰って団地に引っ越したら、元旦那を名乗る男に嫁を返してくれと迫られる「秋に来た男」。三億円事件発生直前に首を吊ったマリアに助けられる「バタークリームと三億円」など。若干、不思議要素が足りないモノも混ざっているが、良作揃いだった。


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サクラ秘密基地

サクラ秘密基地サクラ秘密基地
(2013/03/13)
朱川 湊人

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直木賞受賞作『花まんま』や、涙腺崩壊のキャッチフレーズ『かたみ歌』で、読者の涙を誘った短編の名手・朱川湊人が、家族と写真にまつわるちょっぴり不思議で哀しいお話をお贈りします。二〇一二年秋に、三十九年の長期連載が幕を閉じたミステリ界の巨人・佐野洋氏の連載「推理日記」で、設定の妙を大絶賛された、UFOをでっち上げた同級生の美人の女の子の身の上話「飛行物体ルルー」、とある事故をきっかけにして、優しかった近所のおねえさんの意外な一面を見てしまった少年の淡い慕情の末「コスモス書簡」、ぶっきらぼうで、口より手が先に出る不器用な父と、その父に寄り添うように暮らす聡い男の子、そして同じボロアパートに、とある事情で身を隠すように暮らすことになった私との心の交流を描いた「スズメ鈴松」、ほのかな想いを寄せながら亡くなった同級生の想いが、不思議なカメラに乗り移ってもたらされた写真にまつわる奇妙な出来事「黄昏アルバム」、小学生の男子四人でつくった秘密基地にまつわる哀しい過去を巡る表題作「サクラ秘密基地」など、夕焼けを見るような郷愁と、乾いた心に切ない涙を誘う、短編を六本を収録。


ノスタルジックで切ない系、あるいは怖くないホラーが収録された短編集。出来は良いのだが、BAD ENDな話が多すぎて非リア充にはキツイ。どうしようもない不幸に見舞われたり、運命に翻弄されたりするのが悲しい。殺人事件被害者ENDとか野垂れ死にENDとか、読み進めるのが厳しい話が多すぎるじゃないか(汗)。地下鉄サリン事件直前の話もあるけど、何でオウムを題材にした話が増えてるの?

秘密基地を作って遊んだ時代と忌まわしい出来事を思い出す表題作。偽のUFO写真が原因で仲が拗れた二人の少女が再開するが、日本を震撼させるテロ事件に絡んで酷い人生になりそうな「飛行物体ルルー」。少年時代に好きだった年上のお姉さんの話「コスモス書簡」は二人ともBAD ENDっぽいし、入手したカメラが勝手に写真を写す「黄昏アルバム」は主人公こそ普通の人生を歩んでいるが、カメラに宿る何かは可哀想すぎて全米が泣いた感じだし。「月光シスターズ」は母親がミツコによっておかしくなるし、ラストの「スズメ鈴松」も良い人が報われない。

三次元世界があまりにもうんこすぎるから、せめてフィクションの中では楽しい結末が欲しいのに、こんなBAD ENDだらけだと底辺非リア充の身には堪らんわ~。こういうやるせない感じの話よりも、『箱庭旅団』みたいなのが読みたいデス。


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箱庭旅団

箱庭旅団箱庭旅団
(2012/06/08)
朱川 湊人

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「とにかく旅に出ることだ。世界は本当に広い……今のこの世界だけでも広大無辺なのに、昔や未来、作られたものの世界まで数に入れたら、本当に無限だよ」――それぞれの世界を「箱庭」に見立て、短篇の名手が紡いだ物語が詰まった一冊。


旅に出る男の話から始まり、数々の物語が様々な場所へ読者を連れて行く。幽霊の出るいわくつき物件に引っ越したホラー作家志望の女。宇宙人グレイを騙して黒企業奴隷のように使い倒す悪徳経営者。

人間に化けた烏男。一冊しか蔵書がない特別な図書館。ご宣託で先の事が分かる蕎麦。振り込め詐欺と犬。幸せな家庭のままの自分が住む世界に迷い込む話。夜歩き地蔵と呼ばれる正体不明の化け物。世界の流行を決めている神獣ハヤリスタリ。

怖い話をしている二人の大学生。豆腐屋の青年の切ない話。住む世界が違うようになってしまった男女。いわくつき物件の秘密。ラストで旅に出た男と各短編が繋がる。

それぞれの短編だけでも面白いのに、少しずつ接点が見えてきて、最後により大きな物語として語られるという技が凄い! ただの世界共有系とは一味違う。


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満月ケチャップライス

満月ケチャップライス満月ケチャップライス
(2012/10/05)
朱川 湊人

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あれ以上においしくて元気の出る食べ物は、きっと、この世に存在しない。ある朝、中学一年生の進也は、妹の亜由美に起こされた。台所を見に行くと、知らない男の人が体育坐りで眠っている。夜の仕事をしている母が連れて帰ってきた人らしい。進也はあまり気にせず、いつものように目玉焼きを作りはじめると…「あ、そろそろ水を入れた方が、いいんじゃないですか?」3人家族と謎の男チキさんの、忘れられない物語が始まる。


母と妹の三人で暮らす進也のところに、チキさんという男が住み着いてしまう。母親の恋人ではないその人には、不思議な力があった! 自分の不注意で妹の亜由美は足が不自由となり、駄目男の父親は家庭から出て行き、主人公は自分を責め続けて生きているのだが、チキさんから不思議な力を分けられる。

力によって内向的だった妹の生き方が変わるのだが、危ないカルト教団に目をつけられてしまう。これ、実在するテロ組織じゃないか(汗)。こんな内容で本を出して、狙われたりしないか心配だ。


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遊星ハグルマ装置

遊星ハグルマ装置遊星ハグルマ装置
(2011/06/02)
朱川 湊人、笹 公人 他

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直木賞作家で“泣ける”短篇の名手と“念力”短歌の若き鬼才がコラボ、それぞれの作品から触発された小説と短歌を連詩形式で紡ぐ交感作品集。昭和の少年少女が学校や街で体験する懐かしく不思議な世界へようこそ!


短編ばかりなので感想が書きにくいのだが、ベタな表紙でわかるように、昭和のノスタルジー風味が効いた作品が多い。朱川湊人の短編小説(分量的にショートショート?)と笹公人の短歌が交互に続くのだが、読み手に短歌を愛でる能力が欠如しているので、笹公人作品に関してはスルーする方向で。作品が良くないというのではなく、短歌を読んでも読み手の能力的に理解不能、評価不能なので(汗)。

小説のほうは32編、基本的に独立しているのだが、シリーズ化しているものもあり。意思を持ったぬいぐるみの話が結構好きだな。念願の田舎暮らしを始めたら、夜中に幽霊の類とは別系統の恐ろしいモノが現れる話、どんどん生徒や教師が死んでいく移動教室、電信柱の化け物に人が喰われる話、などなど。ノスタルジー風からおバカ系、ホラー系と幅広く入っている。


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オルゴォル

オルゴォルオルゴォル
(2010/10/08)
朱川 湊人

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「実は前から、ハヤ坊に頼みたいことがあってなぁ」東京に住む小学生のハヤトは、トンダじいさんの“一生に一度のお願い”を預かり、旅に出る。福知山線の事故現場、父さんの再婚と新しい生命、そして広島の原爆ドーム。見るものすべてに価値観を揺さぶられながら、トンダじいさんの想い出のオルゴールを届けるため、ハヤトは一路、鹿児島を目指す。奇跡の、そして感動のクライマックス!直木賞作家による感動の成長物語。


知り合いのお爺さんから頼まれたオルゴールを、渡すべき相手に届けるため、鹿児島まで行く事になった少年の物語。最初は携帯ゲームを買うためのお小遣いが欲しかっただけで、行く気など無いのだが、不思議な縁が繋がって行き鹿児島に。

離婚して大阪に行ってしまった父を訪ね、近所に住んでいたお姉さんと共に広島を経由して鹿児島まで旅するのだが、阪神大震災や福知山線の事故、原爆投下など、現実世界で起こった様々な惨事も絡んでくるので内容が重たくなる。少年の思考でオブラートされてはいるけれども、なんとなくその背後に著者自身の考えが混ざっているような気がして少し萎えた。

少年を描いた小説としては秀逸なのかもしれないが、いつものようなノスタルジックで不思議系統の物語のほうが好きだなぁ。この話は手堅すぎて、不思議成分が足りなかった。


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鏡の偽乙女 ─薄紅雪華紋様─

鏡の偽乙女 ─薄紅雪華紋様─鏡の偽乙女 ─薄紅雪華紋様─
(2010/08/26)
朱川 湊人

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大正三年、東京。画家を志し、家を飛び出す槇島風波。闇を幻視する美貌の天才画家、穂村江雪華。根津蟋蟀館に集う異形の面々。心を略奪する美の蒐集家。変わりゆく帝都を彷徨う未練者たちの怪異。


画家を志して家を飛び出した青年が、美貌の天才と出会い、怪異に巻き込まれて行く。少し不思議系の物語が五編。墓場で傘のような未練者を見てしまい、引っ越した先の根津蟋蟀館では、自分の部屋に先住者の姿が。穂村江雪華と出会ってから、怪奇現象や異形の何かと遭遇しまくる槇島風波。

そのうち、生命無き未練者と取引して、大切な物を奪い取って行く蒐集家と呼ばれる何かが存在する事が分かってくる。怪奇小説だけど、怖がらせず物語に引き込む力量が素晴らしい。


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銀河に口笛

銀河に口笛銀河に口笛
(2010/03/05)
朱川 湊人

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僕らは親愛なる秘密結社「ウルトラマリン隊」を結成して、みんなが持ち込んでくる不思議な事件の謎に挑んでいた。そんな小学三年生の二学期の始業式の日、不思議な力を持った少年リンダが転校してきた…。虹の七色に乗せて送る、ちょっぴりほろ苦い少年たちの成長物語。


太陽の村』で妙な方向に行きかけた感じだけど、またノスタルジックな雰囲気の、どことなく懐かしい感じの小説に戻って良かった。などと思うのは、一定年齢以上の世代だけなのかもしれないけど。

ウルトラマリン隊を結成した少年達が、ある日、不思議な力を持った少年リンダと出会う。少年なのに、何でリンダという女性名なのかというと、苗字が……。

リンダを加えた少年達は、猫探しから始まって、夜の町を徘徊する恐怖? 風鈴男と対峙したり、失われた100万円を探したり、学内に存在しない謎の美少女(幽霊?)の正体を探ったりする事になる。

自分達の小学校には存在しない、魔女っこマコちゃんによく似た謎の美少女がGJ! 騙されちゃいけません。こんな可愛い子が女の子なはずないじゃないですか(笑)。

ノスタルジックな雰囲気でありながら、さりげなくSFなんだよね。リンダが何処から来たのか、最後まで謎だけど。


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ウルトラマンメビウス アンデレスホリゾント

ウルトラマンメビウス アンデレスホリゾントウルトラマンメビウス アンデレスホリゾント
(2009/12/17)
朱川 湊人

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ウルトラマンたちは、なぜ命を賭けて戦うのだろう。異星人である私たちのために。若き地球防衛隊員を通して描く、ウルトラマンメビウスの活躍と葛藤。一級品のSF小説として描かれた、ファン必読の新たな「ウルトラマン」像。


朱川湊人がこんなものを!? 素材がウルトラマンメビウスなので、新刊リクエストするのが恥ずかしいなぁと迷っていたら、誰かがリクエスト入れてくれた。誰か知らないけどGJ! どうも有難うございます。

何でウルトラマンメビウスなんて特撮物SFを書いたのかと思ったら、放映されたうち三話の脚本を担当しているんだね。過去のウルトラマン・シリーズまで絡め、細かい部分まで書き込んでいて、結構ノリノリである。

題名はウルトラマンメビウスだけど、視点は研修中の若手隊員だった。ウルトラマン目線じゃないのか。五話で構成されており、厄介な敵ばかり登場する。気色悪い魔法の杖みたいなのとか、地球を全部自分に融合させようとする植物とか、精神に寄生して食堂のおばちゃんを乗っ取る奴とか、謝罪と賠償を求める宇宙人まで出て来るし……。

主人公のカナタ青年は、父をエイリアンの攻撃で亡くしており、ウルトラマンメビウスも敵視している。とんがりすぎて、他の隊員にも突っかかるし、嫌な感じのキャラになっている。

ウルトラマンメビウスの正体がバレバレになっているじゃないか。

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都市伝説セピア

都市伝説セピア (文春文庫)都市伝説セピア (文春文庫)
(2006/04)
朱川 湊人

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人間界に紛れ込んだフクロウの化身に出会ったら、同じ鳴き真似を返さないといけない―“都市伝説”に憑かれた男の狂気を描いたオール讀物推理小説新人賞受賞作「フクロウ男」をはじめ、親友を事故で失った少年が時間を巻き戻そうとする「昨日公園」など、人間の心の怖さ、哀しさを描いた著者のデビュー作。


オール讀物推理小説新人賞受賞作「フクロウ男」収録。
第130回直木賞候補作。

いっぺんさん』よりもこちらのほうが断然良い。見世物小屋にある河童の氷漬けに魅せられた少年が凄惨な事件に関わってしまう「アイスマン」、オチも気味が悪くて良い感じのホラーに仕上がっている。

「昨日公園」は、親友を喪った直後に公園で過去世界に迷い込み、何度も何度も運命を変えようと奔走する少年の話。これもオチが秀逸。「フクロウ男」は、自分で生み出した都市伝説に嵌ってしまう男の話で、またまたオチの捻り具合が良い。「死者恋」はオチはよく判らなかったが気味悪い。「月の石」のラストはせつない系。

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太陽の村

太陽の村太陽の村
(2010/01/28)
朱川 湊人

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父親の定年を祝うハワイ旅行に出かけた坂木一家は、帰りの飛行機で事故に遭う。意識を取り戻した主人公・龍馬は、自分がタイムスリップして過去の世界に来てしまった事を悟る。どうする俺? おたくで引きこもりの龍馬は、やがて農作業や素朴な村民との触れあいにより、現代とは正反対の生活に喜びを見出していくのだが…。「都市と田舎」、「過去と未来」、「バーチャルとリアル」、「文明と未開」の狭間に揺れる青年の葛藤と成長を直木賞作家が描く。著者新境地のタイムスリップ・エンタテインメント!


直木賞作家による、新引き篭もり小説か? なんか、滝本竜彦の「NHKにようこそ」よりもキレてしまった内容だなぁ。

かろうじてバイトに出かける以外は自室に引き篭もるキモヲタ主人公。バイトも、美少女フィギュア等を購入する資金が必要で出かけるだけで、三次元の女性とも接点なし。部屋は窓も隠れる程、サブカルチャー系統の物質で埋め尽くされ汚部屋と化している。しかも、見た目がデブでブサイク。

そんな、どうしようもない男が、父の定年祝いで無理やり家族旅行に連れ出される。しかし、インドアヲタクゆえに、ハワイがちっとも楽しめずに文句たらたら。そして帰りの飛行機で……。

何が起こったのか分からないまま、気がつけば何処かの海岸。しかも、亀や海坊主扱いされ、子供たちから虐待される。電気もガスも無い辺鄙な場所だったが、村人の生活から考えると、どうやら日本昔話のような世界へ迷い込んでしまったらしい。しかし、自分が知っている歴史とは違う。中央で権力を握っているのは蛇原様、らしい。藤原じゃないの?

村長の家で暮らす事になるのだが、田畑を耕すなり、仕事をしないと生きていけない。引き篭もりデブがヒーヒー言いながら日本昔話みたいな世界で暮らし始めるのだが、悪い地頭に親を殺された桃太郎と、地頭一族の争いに巻き込まれてしまう。

地頭の息子達は、巨漢の乱暴者と、弥勒菩薩の仮面を被る妖術師みたいな奴。おまけに地頭は片言の日本語しか話せない外国人。何が何だか分からなくなって来る。自分も命を狙われる事になったデブは、富士谷山に逃げ込むのだが、山に祀られていたご本尊は、どう見ても太陽の…………。

最初は過去世界と思わせて、平行過去世界なのかと疑わせつつ、実は過去そっくりの未来世界なのかとさらに捻りつつ、その真の姿は!? 結末だけが、なんだかスッキリしないなぁ。聞かされた事が真実なのかどうか、この世界から出て行かないと分からないのだけど、とりあえず妹が可哀想すぎる。


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あした咲く蕾

あした咲く蕾あした咲く蕾
(2009/08)
朱川 湊人

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「赦されること」と「受け入れられること」それがこの世の中で、一番うつくしいことだと思いませんか。世界一、うつくしい物語。


少し不思議な能力を持っていたり、不思議体験をしてしまう人々の話が七編入った短編集。

いきなり、表題作にしてやられる。主人公がまだ子供だった頃、綺麗なおばさんが持つ不思議な力を見せられる。それは、生命を再生させるという特殊能力だったのだが、無尽蔵に湧き出てくるものではなく、自分が持っている力を分け与えるというものだった。つまり、使えば自分の寿命が減ってしまう訳で……。こんな能力は、あっても使えないし、あまり欲しくないよなぁ。この設定の時点で、すでに結末は見えたも同然だったのだが、オチにしてやられた!

他にも、雨の日にだけ他人の心の声が聞こえてしまう少女や、百年くらい使っている中華鍋が特殊能力を持っていたりと、面白い。後半の短編になるにつれ、不思議成分が減少し、何処かでありそうな、常識の範囲に収まる物語になる。

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本日、サービスデー

本日、サービスデー本日、サービスデー
(2009/01/21)
朱川湊人

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世界中の人間には、それぞれに一日だけ、すべての願いが叶う日がある。それが、サービスデー。神様が与えてくれた、特別な一日。本来は教えてもらえないその日を、思いがけず知ることになったら。直木賞作家の幸運を呼ぶ小説。


店舗のサービスデーかと思ったら、高位次元から贈られる人生のサービスデーだった。世界中の誰にでも、願いが叶うサービスデーが一日だけ用意されているという内容。普通は、当事者にその事は知らされず、本人が気づかないうちにサービスデーが終わってしまうのだが、主人公の場合、女悪魔が出てきて秘密を暴露してしまうのである。

嫁は太り、娘は気難しい年頃で、自宅は会社から遠く離れ、会社では抜かされた後輩上司からのリストラ勧告、部下はライバル会社に取引先を奪われそうにと、とんでもない状態なのだが、サービスデー効果で強引に物事が逆転して行く。しかし、嫌な上司が出張する際に、飛行機が落ちればいいのにと願ってしまった事により……。

ちなみにこのサービスデー、公平に与えられるのではなくて、人によっては生後3日後とか、死亡確定の2日前だったりするという意地の悪さ。どちらにしても、まともに願いが叶う筈もない。自暴自棄になって世界滅亡を願っても、同じ日に何千人もサービスデーとなっているので、相殺されてしまうという、微妙に使えないモノなのである。

他の短編は、他人の不幸を肴に幸せを味わうという悪趣味な「東京しあわせクラブ」、手だけの幽霊が出てくる「あおぞら怪談」、兄を見返してやろうとザリガニと格闘する子供の「気合入門」、死後の世界へ片足突っ込んだ女性の「蒼い岸辺にて」。

死後の世界ネタは、王道な展開と着地になっているけれども、実際はそう上手く行かないのが人生。人により、当たりがたくさん入っている人生もあれば、ハズレばかりの人生もある。生きていればそのうちバランスが取れて良い事も訪れるというのは、単なる都市伝説だと思う。不幸と幸せもお金と似ていて、淋しがりやだから同じ場所に集まるものである。

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スメラギの国

スメラギの国スメラギの国
(2008/03)
朱川 湊人

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志郎の新居の前には、猫が不思議と多く集まる空き地があった。そこを駐車場がわりにしたことが志郎を狂わせる不幸の始まりだった。


結婚寸前だった男が、同僚に格安で譲ってもらった車を駐車する際にある事故を起こしてしまい、その事が原因で普通ではない猫達と戦う羽目に陥ってしまう。怖くはないけど、一応ホラー風味が入っている。

最初、猫と敵対する邪悪な人間と戦っている間は、猫を応援していたが、途中からは人類の選手交代で、化け猫に攻撃されれば反撃するのも仕方がないと思うように……。それにしても、この戦いのとばっちりで余計な犠牲者が出てしまうのは可哀想である。

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花まんま

花まんま花まんま
(2005/04/23)
朱川 湊人

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小さな妹がある日突然、誰かの生まれ変わりだと言い出したとしたら-。大阪の路地裏を舞台に、失われてしまった懐かしさを描く作品集。表題作のほか、「トカビの夜」「妖精生物」「摩訶不思議」など全6篇を収める。


第133回直木賞受賞作。

ノスタルジックな雰囲気の、もっと普通の物語かと思っていたので、あんまり食指が動かなかったのだが、これも朱川作品らしい不思議系の物語だった。『都市伝説セピア』は少しホラー要素が強く、暗い作品が多かったけど、これはもっと温かみのある不思議な話が多い。

体が弱かった在日の少年が、死後トカビ(朝鮮の鬼みたいな妖怪?)になって近所で不思議な事が起こったり、露店で買ったクラゲのような妖精生物の不思議な能力で絶頂体験にハマる少女とか、助からない人の最期を看取り、死の呪詛により苦痛から解放する送りん婆などなど、全てが不思議な物語。

表題作は、前世の記憶を持って産まれて来た妹の話。まだ幼いのに急に大人びてきて、習った事も無い漢字を使い、どこの誰だか知らない人間の姓名を綴り、それが過去の自分であると言うのだ。住んでいた場所が彦根で、家族の名前まで覚えており、自分がどこでどうやって死んだかまで覚えているのである。聞かされた兄は、妹が別の誰かではなく、自分の妹のままでいるよう必死になるのだが……。

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超魔球スッポぬけ!

超魔球スッポぬけ!超魔球スッポぬけ!
(2007/04)
朱川 湊人

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なんか題名がいつもの路線と違う……。表紙も妙なマンガかラノベみたいだし、一体、どんな小説を出してきたのかと思いきや、これは小説ではなくてエッセイだった。題名通りに、本当にスッポ抜けていて、なんだか朱川湊人らしからぬユルユルな内容だが、面白さを追求した割りには、どうもイマイチな気がする。(普通くらいには面白いけど。)

作家って、小説が面白いタイプとエッセイのほうが面白いタイプに分かれていて、両方面白い人は少ない気がする。(無論、両方面白くないなんて人は論外!)そして、朱川湊人は前者。絶対に小説のほうが面白い。面白く書こうとしてネタに走ってはいるものの、やはりエッセイに関しては、原田宗典には及ばない。まぁ、この作家の意外な面が覗けたのは良かった。

それにしても、出てきた時から結構、完成度が高かったけど、デビューするまでに相当苦労している様で……。適当に書いたラノベでデビューする男子高校生がいたり、訳判らん文章作法無視な駄文でデビューする女子高生や女子中学生がいたりするのに、朱川湊人が作家になるべく会社を辞めてから8年間もデビュー出来ないのを考えると、作家になるのも運なのかと思ってしまう。もっとも、ペラいままで運良くデビューしてしまった人の大半はすぐに消え去るので、ずっと生き残れる実力派としてデビューするための準備期間だと考えれば、一概に運が悪いとは言い切れないのかもしれない。

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いっぺんさん

いっぺんさん (いっぺんさん)いっぺんさん (いっぺんさん)
(2007/08/17)
朱川 湊人

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<直木賞作家が描く命と友情と小さな奇跡の物語>『花まんま』で直木賞を受賞し、ノスタルジックホラーの旗手として多くのファンを魅了する朱川湊人氏が、ほぼ一年ぶりに刊行する待望の短編集。いっぺんしか願いを叶えない神様を探しに友人と山に向った少年は神様を見つけることができるのか、そして、その後友人に起きた悲しい出来事に対してとった少年の行動とは……。感動の作品「いっぺんさん」はじめ、鳥のおみくじの手伝いをする少年と鳥使いの老人、ヤマガラのチュンスケとの交流を描く「小さなふしぎ」、田舎に帰った作家が海岸で出会った女の因縁話「磯幽霊」など、ノスタルジーと恐怖が融和した朱川ワールド八編です。


不思議な話、ちょっと気味悪い話が盛り沢山の短編集。少し不条理系の話も入っているのだが、この系統の物語を書く他の作者と違って、後味が悪くて嫌な感じが残る事は少ない。舞台設定を過去に遡る事で、ノスタルジックな雰囲気を醸し出しているからだろうか。不幸な結末を迎えてしまう話でも、ノワール小説やホラー小説を書いている作家の作品を読んだ後みたいな胃のむかつきは残らない。冒頭にある表題作「いっぺんさん」と、一番最後にある「八十八姫」が秀逸。

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かたみ歌

かたみ歌 (新潮文庫 し 61-1)かたみ歌 (新潮文庫 し 61-1)
(2008/01)
朱川 湊人

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忘れてしまってはいませんか?あの日、あの場所、あの人の、かけがえのない思い出を。東京・下町にあるアカシア商店街。ある時はラーメン屋の前で、またあるときは古本屋の片隅で―。ちょっと不思議な出来事が、傷ついた人々の心を優しく包んでいく。懐かしいメロディと共に、ノスタルジックに展開する七つの奇蹟の物語。


ノスタルジックホラー連作短編。基本的に各話は独立しているものの、東京の下町にあるアカシア商店街が舞台となる。そして、そこにある幸子書房という芥川っぽい店主がいる古本屋が重要な役割を果たす。

ホラーとは言っても怖がらせる部類ではなく、せつなかったり物悲しい話が多い。これも完成度が高い。なんで朱川湊人が長くデビュー出来ずにくすぶっていたのか謎である。いきなり上手くなってデビューしたのか、出版社の目が節穴だったのか、どっちなのだろう?

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さよならの空

さよならの空さよならの空
(2005/03/29)
朱川 湊人

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拡大を続けるオゾンホールを食い止めるため、化学物質ウェアジゾンが開発された。しかし、それは思わぬ副作用をもたらすことに。散布した空で夕焼けの色が消えてしまうのだ。開発者のテレサは八十数歳のアメリカ人女性科学者。テレサは胸の奥に秘めたある想いを達するため日本へ向った。日本に着いたテレサは小学校三年生のトモルとキャラメルボーイと名乗る若者と数奇な運命で巡り合い、最後の夕焼けのポイントへと向う。オール読物推理小説新人賞、日本ホラー小説大賞短編賞を受賞。彗星の如く現れた小説界の大本命・朱川湊人が贈る現代の寓話。


オゾン層が致命的なまでに破壊され、極地だけではなく、不意に発生し移動するオゾン・ホールまで出現する近未来。ある科学者が穴を塞ぐための化学物質を作り出すのだが、それには世界を変えてしまう副作用があった。

世界を変えるとは言っても、少なくとも肉体的な影響は無い。基本的に、安全無害な物質なのである。問題は、その物質を大気に散布すると空の風景が破壊され、夕焼けが見えなくなってしまうのである。夕焼けの代わりに出現する、ひび割れた灰色の空。未来世界では、人類の存続と引き換えに、夕焼けを見る事が出来ないのである。

美しい空が失われる事を悲観して自殺した美少女シャルロッテを初の殉教者として、国連や科学者に対するバッシングが激化して行く。そんな中で、イエスタディと名乗る人物が、化学物質を散布するための専用飛行機をハイジャックするのだが、彼の過去には、ある痛ましい出来事が秘められていた。

夕焼けって、無いと困るものだろうか? 少なくとも私は全く動じない。夕焼けと生存どちらを選ぶかと問われたら、迷わず夕焼けを捨てる。ほぼ全ての人類が行って来た事に対する当然の報いなのであるから、夕焼けが見られなくなる事に対する抗議行動をする権利等、存在しない。文明の利器に一度として頼らず、アマゾンやチベット奥地で原始的な生活を続けてきた人ならともかく、我々は多かれ少なかれ、オゾン・ホールを作る事に加担してきた筈である。

結末は少し幻想的と言うか、オカルトっぽいというか……。別次元だか異世界だかあの世だか知らないけど、そういう代物を出してくると萎える。SFとまでは言えない、ちょっとユルい感じの物語。

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水銀虫

水銀虫水銀虫
(2006/09)
朱川 湊人

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期待の直木賞作家が描く鬱小説。誰もが抱える水銀虫。彼等は寄生する人の心に宿り自殺へと導くのだ。水銀虫に導かれた者達の暗い一日を描いた7つの短篇集。


朱川湊人の新作を発見。短編集だけど、周囲に水銀虫という狂気がいそうな気味悪さ。水銀虫が出てくる話もあれば、そうでないのもあるけれども、読後感は辺りに水銀虫が這いずりまわるような後味の悪さが残る。

ストレートなホラーではない分、余計に不気味さが増幅されていく。この世のモノでない何かで怖がらせるのではなく、人間の内部に巣食う狂気を描いているのだ。やはり、生きている人間が一番怖いのである。

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赤々煉恋

赤々煉恋 (創元推理文庫)赤々煉恋 (創元推理文庫)
(2010/01/30)
朱川 湊人

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赤々とした炎のようになにかに恋焦がれ、そして切望する人たちの行く末は――。そんな五人の物語を描く、直木賞作家・朱川湊人の新機軸。切なさと悲しさの溢れる連作短編集。


5編入った短編集。最初の「死体写真師」だけは、展開が黒系乙一みたいで読後感悪かったけど、他のはよかった。「レイニー・エーレン」は、実際にあった某事件を彷彿さえるような背景設定だけど、なんだか物悲しい。お化けは出るけど怖くない。「私はフランセス」は、倒錯した性的嗜好がもたらす痛いのかせつないのか純愛なのかよくわからない物語。本人が幸せならそれでも良いのかもしれないが。

「いつか、静かの海に」は人外の何かを育て続ける男と出会う少年の物語。ベッドに横たわるそれは姫と呼ばれ、女性の姿をしているが、下半身が無い。猟奇趣味で切断されたのではなくて、まだ完成していないのである。病魔に倒れる男から姫を託された少年は……。

なんといっても、一番気に入ったのは「アタシの、いちばん、ほしいもの」である。ただの不登校女子高生の話かと思ったら……。

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わくらば追慕抄

わくらば追慕抄わくらば追慕抄
(2009/03/26)
朱川 湊人

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人や物の「記憶」を読み取れるという不思議な力をもった姉の鈴音と、お転婆で姉想いの妹ワッコ。固い絆で結ばれた二人の前に現れた謎の女は、鈴音と同じ力を悪用して他人の過去を暴き立てていた。女の名は御堂吹雪―その冷たい怒りと憎しみに満ちたまなざしが鈴音に向けられて…。今は遠い昭和30年代を舞台に、人の優しさと生きる哀しみをノスタルジックに描く、昭和事件簿「わくらば」シリーズ第2弾。


『わくらば日記』の続編。これがシリーズ化するとは思わなかった。物から過去を読み取れる姉を持つ、妹のワッコちゃん視点で描かれる。しかし全てが過去を思い出す形式となっており、実際にはワッコちゃんも老齢だし、姉は夭逝しているのが悲しい。

前作では、遺留品から殺人事件を解決したりしたのだが、その能力がパワーアップし続けている感じである。やはりこの能力の酷使がが原因で、命を縮めてしまうのだろうか。宇宙塵から地球創世の姿すら視る事が出来るので、よくあるサイコメトラーとは桁違いなのだが、今回はこの世の外側まで視てしまう! 

本作では、同じ能力を持つ薔薇姫が登場するのだが、敵対者となるのかと思いきや、中途半端な存在のまま進展せず。姉との関わりも謎のままだし、あまり絡んで来ないのがもどかしい。きっと、第三弾が出てくるのだろうけど、このままでは消化不良状態である。

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わくらば日記

わくらば日記わくらば日記
(2005/12)
朱川 湊人

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昭和三〇年代。当時私は東京の下町で母さまと姉さまと三人、貧しいながらも仲むつまじく過ごしておりました。姉さまは、抜けるように色が白く病弱で、私とは似ても似つかぬほど美しい人でしたが、私たちは、それは仲の良い姉妹でした。ただ、姉さまには普通の人とは違う力があったのです。それは、人であれ、物であれ、それらの記憶を読み取ってしまう力でした…。小さな町を揺るがすひき逃げ事件、女子高生殺人事件、知り合いの逮捕騒動…不思議な能力を持つ少女が浮かび上がらせる事件の真相や、悲喜こもごもの人間模様。現代人がいつの間にか忘れてしまった大切な何かが心に届く、心温まる連作短編集。


高度成長期以前の、貧しくてもまだ心に余裕があった時代の情景がきれいに描写されている。きっと、かなりのオッサンなのだろうと思ったら……、意外に若かった。ごめんなさい。文体が若くないから、50代くらいの親父が書いているのかと思ってしまった。

物や人を手掛かりに、過去の出来事を視る能力を持つ姉と、いかにも下町娘という感じの妹の物語。姉の特異な能力故に、警察に(半ば強引に)依頼されて、未解決殺人事件の現場で透視する破目になったりもする。登場人物は同じで、5つの短編から成る。

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