森見登美彦

攻略対象書籍は以下。

太陽の塔』★★★
四畳半神話大系』★★★★☆
きつねのはなし』★★★☆
夜は短し歩けよ乙女』★★★★☆
【新釈】走れメロス 他四篇』★★★★
有頂天家族』★★★★☆
恋文の技術』★★★☆
宵山万華鏡』★★★★☆
ペンギン・ハイウェイ』★★★★
四畳半王国見聞録』★★★☆
聖なる怠け者の冒険』★★★★
『有頂天家族 二代目の帰朝』
『夜行』

エッセイ
美女と竹林』★★★★
『森見登美彦の京都ぐるぐる案内』


対談
ぐるぐる問答: 森見登美彦氏対談集


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聖なる怠け者の冒険

4022507861聖なる怠け者の冒険
森見 登美彦
朝日新聞出版 2013-05-21

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一年ほど前からそいつは京都の街に現れた。虫喰い穴のあいた旧制高校のマントに身を包み、かわいい狸のお面をつけ、困っている人々を次々と助ける、その名は「ぽんぽこ仮面」。彼が跡継ぎに目をつけたのが、仕事が終われば独身寮で缶ビールを飲みながら「将来お嫁さんを持ったら実現したいことリスト」を改訂して夜更かしをすることが唯一の趣味である、社会人二年目の小和田君。当然、小和田君は必死に断るのだが…。宵山で賑やかな京都を舞台に、ここから果てしなく長い冒険が始まる。


全面改稿されているので、朝日新聞に連載されたものとは内容が異なるらしい。京の町で人を助けるぽんぽこ仮面。ぽんぽこ仮面を狙う組織との騒動に巻き込まれてしまった、怠け者青年が主人公。周囲の人間が様々な思惑で動く中、主人公とされる小和田君が寝たりサボったりするばかりで、全然活躍しないじゃないか(汗)。

ぽんぽこ仮面の正体を暴こうとする浦本探偵と助手の玉川さん。主人公小和田君の先輩である恩田とその彼女桃木さんは、怠け者の小和田君を町に連れ出す。危険な容姿の上司、後藤所長。狸のお面をつけて人を助ける正体不明のぽんぽこ仮面。そして、ぽんぽこ仮面を狙うアルパカそっくりな五代目!?

蕎麦屋から狙われたぽんぽこ仮面が黒幕の正体を突き止めようとすると、背後に大日本沈没党、閨房調査団、テングブラン流通機構と、次々と謎の組織が出てくる多重構造。命令系統の上のほうはだんだん人外になってきて、頂点にいたのは……。

他作品『宵山万華鏡』や『有頂天家族』とも少しだけリンクしているのが楽しい。主人公が全然活躍しないのと、途中で作者が物語に介入する度、現実世界に戻されてしまう点だけが残念だった。


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ぐるぐる問答: 森見登美彦氏対談集

4093885206ぐるぐる問答: 森見登美彦氏対談集
森見 登美彦
小学館 2016-10-25

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四畳半の内側に広がるフロンティアへ!人生初の対談から、超緊張のご対面まで。作家生活10年間の、登美彦氏と豪華ゲストとの対話を網羅!


ぐるぐる問答は、森見登美彦初の対談集で、自分の発言が面白いのか否か不安なまま、頭の中でぐるぐると悩みつつ他の有名人と会って会話をしたもの。登場するのは順に、劇団ひとり、万城目学、瀧波ユカリ、柴崎友香、うすた京介、綾辻行人、神山健治、上田誠、羽海野チカ、大江麻理子、萩尾望都、飴村行、本上まなみ、綿矢りさとなっている。

劇団ひとりとの対談は光と影である。デビュー作をモデルとなった彼女に読んでもらった森見に対して、相手が著書を読んでくれてさえいない可能性がある劇団ひとり。思いっきり勝ち犬負け犬の差が出ているではないか。

京大出身で作中に京都ネタも多いため、何かと比較される万城目学との対談も楽しい。森見はアドリブが効かないので、授賞式などで話す内容を予め決めて丸暗記するらしいが、頭が良くないと、全部覚えたりするほうが大変だよね。さすが京大である。幼少の頃より書いていたものを全て残している森見と、黒歴史として処分している万城目の違いが面白かった。

異次元ファンタジー的な森見に対して、芥川賞系の柴崎友香は全然ジャンルが違うのだが、方言を取り入れているか、意図的にそこから逃げているかの違いが興味深い。

瀧波ユカリは『臨死!! 江古田ちゃん 』という四コマを描いている漫画家である。作家はすでに顔バレしている人が多いからか、写真で登場するのだが、瀧波ユカリは自画像だった。本書で登場しなくても、グーグル先生に聞いたら出て来るけどね。

うすた京介という人は知らないと思ったが、セクシーコマンドーの人か! うすた京介が森見の著書を読んでいなくて、お勧め作品を聞いたり、タヌキの話の続きを勝手に予測したりしているのが笑える。

綾辻行人は有名だから、ミステリー好きなら誰でも知っているレベルの作家だけど、この人は森見の先輩である。森見が生まれた年に、京都大学に入学したようである。作家って高偏差値大学出身者が多いよね。ケータイ小説とかは分からんけど。森見作品が京都を題材としているのに対して、綾辻行人は現実世界の京都はほぼ書いていない。

神山健治は作家ではなくて、『東のエデン』の原作と脚本まで手掛けたアニメーション監督である。何でエデンの東でなく、東のエデンなのか、その理由も述べられているのだが、肝心の『東のエデン』を観ていないので、対談内容に上手くシンクロ出来なくて残念だ。

上田誠も作家ではなく、劇団ヨーロッパ企画の代表で、『サマータイムマシン・ブルース』は舞台だけでなく、映画化もされている。そして、この作品の製作秘話みたいなものも語られるのだが……。舞台どころか、映画も観た事が無いので、上手くシンクロ出来なくて絶望した。

羽海野チカの『ハチミツとクローバー』も未読なのだが、『バトルロワイアル』に出て来る鍋の蓋を、現実世界の格差として捉えている部分は、物凄く分かる。バトルロワイアルでは渡される武器が剣だったり鍋の蓋だったりして、思いっきり当たり外れがあるのだが、持たされたモノで現実世界を生き抜けと言われても、格差がありすぎて不公平だよなぁ。リアル人生ゲームは最凶のクソゲーだから! 負けてもまだ終わりじゃないんだよ、という事を描いているのなら、ハチクロは読んでみたい。とはいえ、森見も羽海野も、世間一般からすれば勝ち組だからなぁ。自分では鍋の蓋だと思っているみたいだが。

大江麻理子はあまりTVを観ないので知らないのだが、テレビ東京のアナウンサーだった人か。もしかしたら美女の前で緊張して、あまり盛り上がらなかったのかもしれないが、対談のページ数が少ないじゃないか。

萩尾望都は名作SFマンガをたくさん描いているので、お互いにSFネタで盛り上がる。ところで、見切り発車で連載したけど、単行本化する時に全部書き直した森見作品があるらしいのだが、どこれは『聖なる怠け者の冒険』かな?

飴村行はホラー系の作家だが、近所の図書館には一冊も置いていないため未読である。ジジババしかいない町だからなぁ。恋愛小説と歴史小説とミステリーばかり入ってくるんだよ。SFとホラーとラノベは読む人がいないからか、干されている感じがするんだ。飴村行が零戦の話や戦記物を読んでいたら、何の役に立つのか彼女に聞かれるのだが、本がすぐ役に立つかどうかでその価値を決めようとするカツマー信者みたいな人は嫌だよなぁ。本なんて読んでもすぐには役に立たないよ。飴村行みたいに、後の人生において伏線となって効いて来る場合もあるけど、そこは人それぞれだからなぁ。

本上まなみは女優であるが、森見は元から本上まなみが好きだったらしく、デビュー作『太陽の塔』の頃から、有名になったら本上まなみに会おう計画を立てているのが凄い。出て来る自転車の名前が「まなみ号」だと!? よく覚えていないので、図書館に行ったらもう一度借りて来よう。

ラストは綿矢りさ。京都ネタやホラーネタで盛り上がる。森見が「人生ゲーム」という短編が好きだと言うが、確かにあの話は、世にも奇妙な物語風になっていて、綿矢作品の中で一番エンタメ性が高いからね。それにしても、まさか都市伝説スレッドを読むのが好きな2ちゃんねらーだったなんて。

ラストが綿矢りさと書いたが、最後の最後でもう一人出て来た。そして、予想もしない人物との対談が始まるのだが、これがふざけていて、ある意味、一番面白い。さて、後書き予告の通り、10年後に『ぐるぐるしてない問答 森見登美彦対談集2』は出るのだろうか。


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ペンギン・ハイウェイ

ペンギン・ハイウェイ (角川文庫)ペンギン・ハイウェイ (角川文庫)
(2012/11/22)
森見 登美彦

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小学四年生のぼくが住む郊外の町に突然ペンギンたちが現れた。この事件に歯科医院のお姉さんの不思議な力が関わっていることを知ったぼくは、その謎を研究することにした。未知と出会うことの驚きに満ちた長編小説。


ぼくが住む町で起こった不思議な出来事。ペンギンたちが現れ、森の奥には不思議な海が宙を漂う。そして、ぼくの好きなお姉さんは、不思議な力でペンギンを生み出す。

苛められキャラな友人と、クラスの馬鹿なガキ大将の諍いに介入し、嘘八百のスタニワス症候群で相手を怖がらせて泣かせるのは笑った。その後、陰険な仕返しもされるのだが、脳みそのレベルが違いすぎて、同じ土俵で戦ってない感じである。

森の奥で見つけた宙に浮かぶ球体の海と、お姉さんがペンギンを生み出す力に関わりがある事を発見したぼくは、その後に待ち受ける悲しい結末にも気づいてしまう。

少年のキャラが少年らしくなくて面白い。最後まで、お姉さんの正体は分からないままだったけど、世界の外側から遣わされた何かだったのかな。


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四畳半王国見聞録

四畳半王国見聞録四畳半王国見聞録
(2011/01/28)
森見 登美彦

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数式による恋人の存在証明に挑む阿呆。桃色映像のモザイクを自由自在に操る阿呆。心が凹むと空間まで凹ませる阿呆。否!彼らを阿呆と呼ぶなかれ!狭小な正方形に立て篭もる彼らの妄想は壮大な王国を築き上げ、やがて世界に通じる扉となり…。徹底して純粋な阿呆たち。7つの宇宙規模的妄想が、京の都を跋扈する。


四畳半神話体系』の続編かと思って超期待していたのに、なんだ今までの作品に出てきた人々が数多く登場するオムニバスなのか。今までに構築された森見ワールドを全て放り込んでごった煮の闇鍋モードにしたような感じ。ストーリーがあまりにもカオスすぎる。もう完全にディズニーランド・キャンペーン化しちゃっているではないか。

超常能力を持つ面々も、その能力を生かす事なく阿呆として京都で無為に過ごしているし、もう少し弾けて欲しかった。

今回は妄想力の暴走が凄すぎる。一応、今までの作品は押さえているけど、それでもイマイチ波に乗り切れなかった。過去作品を読んでいなくていきなりコレだけ読むと、もう何がなんだか分からないまま終わってしまうと思う。評価高いけど、個人的には妄想の波に上手く乗れず溺れてしまった。『四畳半神話体系』みたいなのを読みたいのだけど。


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四畳半神話大系

404387801X四畳半神話大系 (角川文庫)
森見 登美彦
角川書店 2008-03-25

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大学3回生の春までの2年間を思い返して、実益のあることなど何一つしていないことを断言しておこう。打たんでも良い布石を狙い澄まして打ちまくってきたのは、なにゆえか? トンチキな大学生の妄想が京都の街を駆け巡る!


またしても脳内妄想系小説かと思ったが、構成には驚いた。四つの話で成り立つ、摩訶不思議なパラレルワールド。最初の話は何とも思わず、二話目で何かおかしいと感じ、三話目にしてようやく作者の意図に気づいたのだ。

どうしようもない駄目大学生となり果てた主人公が、入学したての頃に興味を惹かれた映画サークル「みそぎ」、「弟子求ム」という奇想天外なビラ、ソフトボールサークル「ほんわか」、秘密機関の事を思い出すのだが……。

どの選択肢を選んでも異様な結末が待ち構えているし、人間ぬらりひょんに魅入られているのが笑える。

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有頂天家族

有頂天家族有頂天家族
(2007/09/25)
森見 登美彦

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時は現代。下鴨神社糺ノ森には平安時代から続く狸の一族が暮らしていた。今は亡き父の威光消えゆくなか、下鴨四兄弟はある時は「腐れ大学生」、ある時は「虎」にと様々に化け、京都の街を縦横無尽に駆けめぐり、一族の誇りを保とうとしている。敵対する夷川家、半人間・半天狗の「弁天」、すっかり落ちぶれて出町柳に逼塞している天狗「赤玉先生」――。多様なキャラクターたちも魅力の、奇想天外そして時に切ない壮大な青春ファンタジー。


京の町を舞台に暴れる狸、天狗、そして弁天。天狗の赤玉先生は、琵琶湖で見つけて攫ってきた弁天を弟子にするも、骨抜きにされてしまい、いまや落ちぶれ駄目天狗に。その原因となってしまった弟子の狸が主人公。まさか、主人公とその家族が狸だとは思いもしなかった。

人間でありながら、天狗の技を身につけ、今や天狗以上に天狗らしい美女弁天。金曜倶楽部の七福神に数えられ、弁天の称号まで貰い、忘年会では狸鍋だって食う。そして、半ば儀式となっている狸鍋で食われてしまったのは、主人公矢三郎の父。血族でありながら陰謀を張り巡らせ暗躍する夷川早雲の手にかかり、兄弟に危機が迫る。

人間だけど、人間らしからぬ弁天が素敵です。さすが森見登美彦。ラノベ作家みたいに「美女」とか「美少女」の貧弱なボキャブラリーによる一点張りでゴリ押しする事なく、弁天の艶やかさを巧みに表現している。

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夜は短し歩けよ乙女

夜は短し歩けよ乙女夜は短し歩けよ乙女
(2006/11/29)
森見 登美彦

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私はなるべく彼女の目にとまるよう心がけてきた。吉田神社で、出町柳駅で、百万遍交差点で、銀閣寺で、哲学の道で、「偶然の」出逢いは頻発した。我ながらあからさまに怪しいのである。そんなにあらゆる街角に、俺が立っているはずがない。「ま、たまたま通りかかったもんだから」という台詞を喉から血が出るほど繰り返す私に、彼女は天真爛漫な笑みをもって応え続けた。「あ!先輩、奇遇ですねえ!」…「黒髪の乙女」に片想いしてしまった「先輩」。二人を待ち受けるのは、奇々怪々なる面々が起こす珍事件の数々、そして運命の大転回だった。天然キャラ女子に萌える男子の純情!キュートで奇抜な恋愛小説in京都。


第137回直木賞候補作。

夜の京都を歩く黒髪乙女。その後を追う一人の先輩。だが、数々の障害が待ち構えており、先輩は乙女に追いつく事が出来ない。乙女の後姿に恋する一人の男がいるなどとは露ほども思わない彼女は、お得意の二足歩行ロボのパフォーマンスとともに、夜の京都河原町へと消える。この乙女がまた、酒豪というかウワバミというか、恐ろしいほどの飲みっぷり。行く先々で出会った人々と酒を飲み交わす。最後は、三階建て電車みたいな乗り物で現れる仙人みたいな爺さん相手に、ニセ電気ブランで勝負。

夜の物語は最初の一話だけだが、短編ではなく登場人物そのままで、季節が移り変わる。夏になれば古本市で、無くしてしまった絵本を探す黒髪乙女。そして、出会いを求める先輩は、絵本を賭けて地獄の激辛鍋勝負! 秋になれば、妙なやつらが出没しまくりの学園祭で、ゲリラ的に劇を敢行する人々に担ぎ出されて主役を演じる黒髪乙女。それを追いかける一人の先輩。冬になれば李白風邪という流行り病で倒れる人々に取り残され、一人元気な黒髪乙女。

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きつねのはなし

きつねのはなしきつねのはなし
(2006/10/28)
森見 登美彦

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京の骨董店を舞台に現代の「百物語」の幕が開く。注目の俊英が放つ驚愕の新作。細長く薄気味悪い座敷に棲む狐面の男。闇と夜の狭間のような仄暗い空間で囁かれた奇妙な取引。私が差し出したものは、そして失ったものは、あれは何だったのか。さらに次々起こる怪異の結末は―。端整な筆致で紡がれ、妖しくも美しい幻燈に彩られた奇譚集。


ちょっと不思議系の四編で、結末が曖昧なのばかりだから微妙。まるで、恩田陸の煙に巻くスタイルみたいだ。他作品のような毒舌っぷりもないから小さく纏ってしまっている。趣向が違うという事だから、どれを読んでも同じ物ばかりと言った金太郎飴型作家よりは断然良いとは思うが。ストーリーよりも雰囲気重視な作品だから、コメントするのが難しい。意表を衝くような展開、結末が待ち構えている訳では無いから、読後も印象が薄いし。まあ、『太陽の塔』よりは面白かったよ。

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宵山万華鏡

宵山万華鏡宵山万華鏡
(2009/07/03)
森見登美彦

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祇園祭宵山の京都。熱気あふれる祭りの夜には、現実と妖しの世界が入り乱れ、気をつけないと「大切な人」を失ってしまう―。幼い姉妹、ヘタレ大学生達、怪しげな骨董屋、失踪事件に巻き込まれた過去をもつ叔父と姪。様々な事情と思惑を抱え、人々は宵山へと迷い込んでいくが…!?くるくるとまわり続けるこの夜を抜け出すことは、できるのか。


連作形式になっており、6編でそれぞれ主人公が変わるのだが、京都の祇園祭宵山を舞台にしており、視点を変えて各話が繋がっている。この世界のモノでは無い何かも絡んで来るところは、やはり森見ワールドらしい。

姉とはぐれ、何かに連れ去られそうになる妹。
友人乙川の大仕掛けな悪戯に翻弄される男。
大仕掛けの舞台裏。
従妹が神隠しにあい、叔父も何処かへ行ってしまうのを止められい女。
何度も繰り返される宵山の閉鎖世界に囚われた男。
妹を見失い、自分も普通とは異なる場所へ迷い込む姉。

各話の並び具合が神! 非日常的とは言っても現実世界の一部に過ぎない祇園祭宵山の夜と、宵山世界がかさなり、不思議な雰囲気を醸し出す。宵山世界に囚われてしまい、何度も何度も宵山当日の朝を迎えてしまう男のタイムループ系も良い。


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恋文の技術

恋文の技術恋文の技術
(2009/03)
森見 登美彦

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京都の大学から、遠く離れた実験所に飛ばされた男子大学院生が一人。無聊を慰めるべく、文通武者修行と称して京都に住むかつての仲間たちに手紙を書きまくる。手紙のうえで、友人の恋の相談に乗り、妹に説教を垂れ―


能登で悪戦苦闘する、守田一郎という男による書簡形式となっている。小説の中に書簡部分があるのではなくて、最初から最後まで手紙ばかりなので、変わってはいるけど読み難い。そして、感情移入する事が出来ない。

友人や妹、作家森見などを相手に守田一郎が手紙をやり取りするのだが、ほとんどが守田から誰かに送られたもので構成されており、相手の返信は読めないのである。よって、守田が一人相撲で相手に手紙を送り続けているような印象で、読んでいて疲れて来る。


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美女と竹林

美女と竹林美女と竹林
(2008/08/21)
森見登美彦

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美女に会ったら伝えてくれ。俺は嫁を大事にする男だと。妄想と執筆に明け暮れた、多忙にして過酷な日々。森見登美彦氏を支えてくれたのは、竹林であった。美女ではないのが、どうにも遺憾である。虚実いりまぜて、タケノコと一緒に煮込んだ、人気文士の随筆集。


一応はエッセイという事なのだが、著者の妄想が暴走しまくるので、本人が出てく小説にしか思えなくなって来る。しかも、妄想による嘘だらけなので、私小説ではない感じで(笑)。

京都の西、桂にある知り合いの竹林で竹を切るという、あんまり面白くもなさそうな題材なのだが、ちっとも竹を切らずに妄想ばかりなのが笑える。題名が美女と竹林なのに、ちっとも美女が出てこない。

森見が作家を引退し、竹林で大儲けして、机上どころか月面まで竹林で覆い尽くそうかという壮大な物語になって行く。しかも、竹林の奥で美女を拾って結婚、幸せな人生を謳歌する。一緒に竹を切っていた司法試験狙いの友人は、未だに美女を拾う事が出来ず独身、何で俺が独身のままなのだと森見にクレームをぶつけるのであった。

無論、全ては著者本人の妄想な訳で、現実ではない。このエッセイはフィクションであり云々と、但し書きをつけねばならぬ程に嘘ばかりである。ここまで豪快にやられると、竹を切る友人や、竹林を所有する知人、手伝いに来た編集まで実在せず、本人の脳内妄想なのではないかと疑いたくなる。これ、ひょっとして90%は嘘で出来てない? これをエッセイと呼んで良いのだろうか。


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新釈 走れメロス 他四篇

新釈 走れメロス 他四篇新釈 走れメロス 他四篇
(2007/03/13)
森見 登美彦

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あの名作が、京の都に甦る!?暴走する恋と友情。若き文士・森見登美彦の近代文学リミックス集!その時、彼の腕を通りすがりの女性が必死で掴み、「ちょっとすいません!」と叫んだ。思わず見返した相手は驚くほどに可憐な乙女であり、目に涙を溜めている。芽野は決して女性に腕を掴まれたぐらいでのぼせ上がるような人間ではないけれども、理由を聞く前から彼女の涙にもらい泣きしていた。(「走れメロス」より)異様なテンションで京都の街を突っ走る表題作をはじめ、先達への敬意(リスペクト)が切なさと笑いをさそう、五つの傑作短編。 山月記/薮の中/走れメロス/桜の森の満開の下/百物語を収録。


他人の褌で相撲を取りやがって……。そう思いながら読み始めたものの、ちょっと似ていたり、似ていなかったり、すごくふざけた内容に変貌していたりして、これはこれで面白い。特徴的な森見ワールドが展開されている。全て別個の話のようでありながら、登場人物や背景設定が微妙に繋がっているので、思わず読み返してしまった。

やはり表題のメロスが素晴らしい。本物とはかけ離れたダメ男なメロスが良い味出しています。こんなのもう、メロスじゃないや(笑)。

文学史に残る作品を、現代風に、かつゲテモノ風味にアレンジ。何度も同じ手を使ったら萎えるかもしれないけど、この一作だけで終わるならば良いんじゃないでしょうか。

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太陽の塔

太陽の塔 (新潮文庫)太陽の塔 (新潮文庫)
(2006/05)
森見 登美彦

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私の大学生活には華がない。特に女性とは絶望的に縁がない。三回生の時、水尾さんという恋人ができた。毎日が愉快だった。しかし水尾さんはあろうことか、この私を振ったのであった!クリスマスの嵐が吹き荒れる京の都、巨大な妄想力の他に何も持たぬ男が無闇に疾走する。失恋を経験したすべての男たちとこれから失恋する予定の人に捧ぐ、日本ファンタジーノベル大賞受賞作。


第15回ファンタジーノベル大賞受賞作。

『ぐるぐる問答: 森見登美彦氏対談集』に、第一作の中に「まなみ号」という自転車が登場するという事が書かれていたので、確認するために、もう一度、図書館から借りて来た。

以前、読んだ時は、ファンタジーノベル大賞という部分に釣られたのに、前半がちっともファンタジーになっておらず、気持ち悪い京大生が周囲に脳内妄想を撒き散らしている話でガッカリした覚えがある。再読してみたところ、ファンタジー部分に過度な期待を抱かなければ、それなりに面白い作品だった。

水尾さんにフラれてしまったのに、未だに固執する主人公の森本は、水尾さん研究と称して、ストーカーじみた事をやっている。水尾さんの住んでいる場所まで行って、見守ったりしていたところ、水尾さんに頼まれたのか、他の男に追い払われてしまう。愛用の自転車まなみ号は、誰かに持ち去られて行方不明になるし、踏んだり蹴ったりな感じである。

本屋にいる時、水尾さんではなく、邪眼を持つ植村嬢に声をかけられ、忘年会の事を聞かれる。植村嬢の視線に晒されると、男達の下らない妄想が粉砕されてしまうのであるが、これは森本が勝手に植村嬢の視線を恐れているだけで、本当に中二病的な力が宿っているわけではない。

植村嬢の事だけでなく、コーヒーを買いに行く店のお姉さんを相手に、彼女の人生を勝手に妄想するし、ケンタッキーフライドチキンでアルバイトをしている三田村さんの家が、養父が働かない酷い奴なので、生活に困って大学も辞めてしまったなどと、勝手な妄想をしている。

水尾さんの近くにいる遠藤という法学部の男から、法的に対処云々な嫌な手紙が届いたので、ラブレターお断り的な返信をする。暫くすると、アパートの部屋の出口がガムテープで塞がれるという嫌がらせを受けたため、水尾さんからのプレゼントに偽装したゴキブリキューブで仕返しをする。

京大生狩りに遭遇し、襲われかけたところを逃げ出し、何故か遠藤に助けて貰う。遠藤もまた、水尾さんストーカーであった。遠藤は、水尾さんと太陽の塔の関係が知りたいらしい。水尾さん研究と称して周囲をうろついている主人公も、遠藤と同じじゃないか。

その後、水尾さんからプレゼントが届いていたので、喜んで開けてしまうが、中からゴキブリが飛び出して来た。自分で仕掛けたゴキブリ爆弾が戻って来て、自分がそれに引っかかるなんて馬鹿である。京大生だから勉強は出来るけど、やはり馬鹿である。

ある日、夜の京都でおかしな叡山鉄道を見つけ、辿り着いた駅から乗ってしまうのだが、到着した場所で水尾さんを探していると、そこには遠藤がいた。どうやら、夜中に街中を走る叡山鉄道で行ける場所は、水尾さんの夢の中のようである。もうページが無くなりそうだが、ここまで来てようやく、少しだけファンタジーらしくなってくる。

『ぐるぐる問答: 森見登美彦氏対談集』で、モデルとなった彼女に読んでもらったと書かれているのだが、これがファンタジー小説ではなく、恋愛小説の形をした、とても長いラブレターだったとしたら、水尾さんとのフラグは立ったのだろうか?


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