ほかならぬ人へ

ほかならぬ人へほかならぬ人へ
(2009/10/27)
白石 一文

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二十七歳の宇津木明生は、財閥の家系に生まれた大学教授を父に持ち、学究の道に進んだ二人の兄を持つ、人も羨むエリート家系出身である。しかし、彼は胸のうちで、いつもこうつぶやいていた。「俺はきっと生まれそこなったんだ」。サッカー好きの明生は周囲の反対を押し切ってスポーツ用品メーカーに就職し、また二年前に接待のため出かけた池袋のキャバクラで美人のなずなと出会い、これまた周囲の反対を押し切って彼女と結婚した。しかし、なずなは突然明生に対して、「過去につき合っていた真一のことが気になって夜も眠れなくなった」と打ち明ける。真一というのは夫婦でパン屋を経営している二枚目の男だ。「少しだけ時間が欲しい。その間は私のことを忘れて欲しいの」となずなはいう。その後、今度は真一の妻から明生に連絡が入る。彼女が言うには、妻のなずなと真一の関係は結婚後もずっと続いていたのだ、と。真一との間をなずなに対して問いただしたところ、なずなは逆上して遂に家出をしてしまう。失意の明生は一方で、個人的な相談をするうちに、職場の先輩である三十三歳の東海倫子に惹かれていく。彼女は容姿こそお世辞にも美人とはいえないものの、営業テクニックから人間性に至るまで、とにかく信頼できる人物だった。やがて、なずなの身に衝撃的な出来事が起こり、明生は…。


第142回直木賞受賞作。

なんか、密林の商品説明が、異様に気合入っている。作者の直筆でメッセージまで入っているし。本人としては、一番完成度が高いと思っているのかもしれない。しかし、二編あるうち、受賞作が不倫、もうひとつが結婚直前で浮気しまくりと、かなり萎える。どちらも女性がロクデナシである。

受賞作は、名家に生まれ、兄達と比較して自分が凡庸な事にコンプレックスを抱き続けた男が、決められた相手ではなく、知り合った美女と結婚する。元々決められていた相手は、自分の兄が好きで、その兄は、さらにひとつ上の兄嫁が好きだという、どうしようもない事になっている。

三男は、ようやく普通の幸せを掴んだのかと思いきや、妻が昔から好きだった相手の下に走りグダグダに。トンデモない女である。むしろ別れたほうがGJ! 性悪嫁には逃げられるし、許婚っぽい相手は事故死するし、兄達はハイソすぎて人間失格だし、再婚した上司も病死。なんだこのBAD ENDは……。

お互いが相手だけ見ていれば単純明快なのに、何で人は別の方ばかり向いているのか。結局、巷に溢れる夫婦やカップルは、その大半が妥協と欺瞞の産物でしかないのだろう。


ほんと、三次元嫁はロクなのがいないや(笑)。

やあ(´・ω・`) ようこそバーボンハウスへ。今のは非リア充すぎて破壊され尽くした何者かの残滓が放った戯言に過ぎないので、GJな三次元嫁をゲット出来た人は華麗にスルーして欲しい。



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この世の全部を敵に回して

4094087079この世の全部を敵に回して (小学館文庫)
白石 一文
小学館 2012-04-06

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白石一文が問う、00年代「人間失格」の書。人間は、どこから来て、どこに向かうのか--。生きがたい思いを漫然と抱くすべての人に、作者から突き付けられた八万文字分の言葉の爆弾。


著者の知り合いで、他界したK***氏が遺した文章という事になっているが、どうやらそれは設定上そうなっている様である。K氏による独白だけがひたすら続くので、普通の小説だと思って手に取るとダメージが大きいと思う。

しかし、書いてある事は、その辺の教祖様やエセ知識人の戯言と比べ、真実に近いと思うのだが。こんなに酷い世界を創り上げた何者かは、それに意思があるかどうかに関わらず、きっと、「神」などと崇めるような存在ではなく、ひたすら邪悪な何かに相違ない。

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見えないドアと鶴の空

見えないドアと鶴の空 (光文社文庫 し 30-3)見えないドアと鶴の空 (光文社文庫 し 30-3)
(2007/07)
白石 一文

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勤めていた出版社を辞め、妻の代わりに家事をこなしながら日々を送る主人公、昂一。ある日、妻の親友である由香里と肉体関係を持ったことから、昂一は奇妙な事態に巻き込まれていく。由香里の持つ特殊な「力」や、常識では説明できない出来事の数々。その疑問を解くため向かった土地で、昂一が探し当てたのは、由香里の不幸な生い立ちと、妻の知られざる少女時代の姿だった。


旦那と妻と妻の親友。男一人、女二人で繰り広げる奇妙な三角関係。このままだったら陳腐でありふれた恋愛小説以外の何物でもないのだが、少し違った。妻の親友にして幼なじみが、超能力女だったのだ! そんなに大それた事は出来ないのだが、未来を視たり、触れずに物を動かせたり、壊れたモノを直せたり治せたり……。

親友の結婚相手を誘惑して寝取ってしまう女。だが妻のほうも同じく他所で不倫疑惑が浮上していた!? 女二人に隠された過去が明らかになるにつれて、泥沼状態になるヘタレ男。怨霊まで出てきて襲われる。小道具が面白いから楽しめたが、主人公がニートでヘタレな妻帯者なので、脱力感タップリである。

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どれくらいの愛情

どれくらいの愛情どれくらいの愛情
(2006/11)
白石 一文

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HOW DEEP IS YOUR LOVE? 離れていても、愛し合えるのか。現実よりもリアルで、映画よりも素敵な恋の物語を4話収録。『小説宝石』『オール読物』掲載作品に、書き下ろしの表題作を加えて単行本化。


第136回直木賞候補作。

前半に短編が3つ、後半が候補作となった「どれくらいの愛情」が収録されている。もちろん、表題作が一番の力作ではあるが、他の短編も総じてレベルは高い。但し、登場人物に、嫌な女が多いので、個人的には作中の人物にムカついて胃に悪い。

物語は普通だけど、筆力があるから、どれも読み応えがある。もう、お腹いっぱい。恋愛物だが表層的ではなくて人生そのものを描いた重い内容で、決して安易にハッピーエンドで終わってくれたりはしない。というか、この中にハッピーエンドで終わる作品はありません。

これ、かなりレベルが高いと思うのだが、残念な事に受賞できず。やはり、色物の芥川賞とは違って、直木賞は難易度が高い。

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