パン屋を襲う

410353429Xパン屋を襲う
村上 春樹 カット メンシック
新潮社 2013-02

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僕は二度、パン屋を襲撃した。一度めは包丁を体に隠して、二度めは散弾銃を車に載せて―。初期作品として名高い「パン屋襲撃」「パン屋再襲撃」が、時を経て甦る。ドイツ気鋭画家のイラストレーションと構成するヴィジュアル・ブック。


『パン屋再襲撃』をドイツ人画家カット・メンシックの絵をつけてヴィジュアル・ブックにしたもの。『図書館奇譚』のように、後書きで変更点が示されてはいないので、内容はそのままなのかもしれない。『パン屋再襲撃』が手元に無いので、比べられないから分からないけど。

「パン屋襲撃」と「パン屋再襲撃」が収録されている。「パン屋襲撃」のほうは、二日間も水しか飲んでいなかった二人組が、空腹感を満たすために、パン屋を襲撃しようとする。等価交換すべきものを持っていないので、食べるためには襲撃するしかないのだが、何故それがパン屋なのかは謎である。

パン屋は、商店街の中にある、ごく普通のパン屋だった。パン屋の親父は頭の禿げた50すぎの共産党員だった。当時の村上春樹が共産主義について何か思うところがあったのか、私はベテランのハルキストではないので、ただファッションとして共産主義者のパン屋を出したのかは分からない。

パン屋の中には、客がオバサンだけだったのだが、こいつが予想外に厄介な相手であった。買うべきパンを悩みまくり、なかなか出て行ってくれないのだ。パン屋の親父はワグナーを聞いていた。ワグナーが出て来るあたり、共産主義者も、ただのファッションで出している可能性が高くなった気がする。

やっとオバサンが出て行ってくれたので、パン屋を襲撃するのだが、パン屋の親父は殺されたくないからパンは好きなだけ食べても良いという。悪に走っている自分達が恵みを受けるわけにはいかないので、交渉の結果、ワグナーを聞けば、パンを食べても良いという事になってしまう。


「パン屋再襲撃」は、パン屋を襲撃してから随分と経ってからの話。パン屋を襲撃した仲間とは別れ、大学に戻って無事に卒業し、法律事務所で働きながら司法試験の勉強をし、妻と知り合い結婚した。まっとうに生きているのに、いきなりパン屋を襲撃した時のような空腹に襲われる。

その空腹は、妻にも伝染し、呪いのようになっている。パン屋を襲撃した事があると話してしまった結果、もう一度パン屋を襲わないと、呪いが解けないと妻に言われる。パン屋を探し始めたが、夜中だから何処も開いていない。何故か妻はレミントンのオートマティック式散弾銃を持っていて、大事になってくるのだが、パン屋が開いていないので、マクドナルドで妥協する事にする。

パン屋再襲撃の予定が、何故かマクドナルド襲撃になってしまったが、実名で出してマクドナルドに怒られたりはしないのか? 村上春樹ほどネームバリューがあれば、フィクションの中で襲われても宣伝になるから構わないのだろうか?

散弾銃で脅し、ハンバーガーを30個も焼かせるのだが、パン以外は奪わないというわけの分からないマイルールによって、飲み物の代金はちゃんと払う。例えマクドナルドでも、襲撃したらもう人生終了なんじゃないのかと思ったが、この夫婦は捕まらず、形を変えて『ねじまき鳥クロニクル』の世界に行くのか? 『ねじまき鳥クロニクル』が未読なので、どう繋がっているのか分からないけど。


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図書館奇譚

4103534303図書館奇譚
村上 春樹
新潮社 2014-11-27

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図書館の地下のその奥深く、羊男と恐怖と美少女のはざまで、ぼくは新月の闇を待っていた。あの名短篇が、ドイツの気鋭画家によるミステリアスなイラストと響きあう。新感覚アートブック第三弾!


図書館で借りた「潜水艦建造史」と「ある羊飼いの回想」の二冊の本を返しに来た主人公は、新しい本を探すため、地下にある107号室に案内される。

そこには老人がいて、どんな本を探しているのか聞かれたので、思わず「オスマン・トルコ帝国の税収政策について知りたい」と答えてしまう。老人は本を捜しに行き、「オスマン・トルコ収税史」「オスマン・トルコ収税史の日記」「オスマン・トルコ帝国内における非納税運動とその弾圧について」という三冊を差し出した。

それらの本は貸出禁止だったので、奥の部屋で読まなければならなくなってしまう。本を読むために老人の後をついて行くのだが、そこは迷宮になっていて、主人公は頭が混乱してくる。やがて、暗い部屋に案内され、転げ落ちないように階段を進むように言われてしまう。

老人が規則だからと鍵をかけてしまったので、進むしかなくなるのだが、階段を下り切った部屋には、羊男がいた。羊男に案内されて読書室へ向かうが、辿り着いたのは牢屋だった。

羊男が一か月後に試験をするので、渡された本を暗記しなければならない。ここに来た人間は、知識の詰まった脳みそを吸われてしまうらしい。知識を貸し出すだけでは損をするばかりなので、何処の図書館でも同じ事をやっていると言うのだが……。

牢屋には美少女が食事を運んでくるのだが、羊男はそんな人物は知らない。食事は自分が運んできたと言う。だが、美少女は再び現れた。羊男にとって自分がいない世界でも、自分がいないという事にはならないと言う。どうやら、いろんな世界が混ざっているようである。

美少女は、脳みそを吸われる前に逃げろと助言する。新月の日だけ老人が眠るので、その隙に逃げ出せと言う。新月の日、主人公は羊男と一緒に逃げ出す。音を立ててはいけないから、高級な革靴を脱ぎ捨てて。途中で革靴が気になって、取りに戻りたいと言い出すのだが、何で最初から持ち運ばないのか。

老人のところまで辿り着くと、老人は寝ておらず、脱走する者を待ち構えていた。側には、自分に噛みついた恐ろしい犬もいる。宝石入りの首輪をつけた緑色の目をした犬で、足は太く、爪が六本もある。犬はムクドリを咥えていたが、そのムクドリが大きくなり始めた事で、隙が生まれる。

閲覧室の窓をこじ開けて、早朝の図書館から逃げ出すのだが、いつの間にか、羊男がいなくなり、自分だけになっていた。羊男と美少女がどうなったのか分からないのは不気味である。

この話は百貨店のPR誌に掲載されて、『カンガルー日和』に収められた。その後、『村上春樹全作品1979~1989』に収録する際、変更が加えられる。さらに、絵本化する際に大幅に書き直し『ふしぎな図書館』となった。今回はドイツで出版されたバージョンが元になっていて、文章も変更されている。同じ話だけど、4種類のバージョンが存在するなんて。


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色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年
(2013/04/12)
村上 春樹

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良いニュースと悪いニュースがある。多崎つくるにとって駅をつくることは、心を世界につなぎとめておくための営みだった。あるポイントまでは…。


ようやく読めたけど、密林その他がなんという荒れ模様(汗)。この手の作品はSFやミステリーと違って、出来不出来じゃなく好き嫌いだから仕方ないけどね。題名がこんなだから、視覚に障害がある人の話なのかと思ったら、全然違った。

高校時代に仲良しだったグループから、ある日突然、理由も分からず放り出されてしまった多崎つくるは、精神的に死ぬ寸前まで追いやられ、見た目まで昔とは違う人間に変わってしまう。十数年が経過した後、何が起こったのか確かめるべきだと年上女性に言われて、当時の仲間に会いに行く。

羊男とかリトルピープルとか蛹とか、いつもみたいな妙な何かが絡んできて、もっと非日常的な理由が示されるのかと思いきや、なんだこれ、ある事件によってメンヘラ化した仲間の裏切り行為じゃないか(汗)。相当酷い事が起こっているのだが、淡々と綴られているので、不快な思いもせず流れるように読めるのが良い。

過去の出来事が明かされても、なんだか他人事みたいだし、かつての仲間はもう取り戻せないし、北欧まで旅に出ても二度と取り戻せないものが明らかになるだけで、年上女性との結末すらどう転ぶのか分からないままなのが、もどかしい。


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村上春樹

攻略対象書籍は以下。

長篇小説
風の歌を聴け』★★★☆
1973年のピンボール』★★★
『羊をめぐる冒険』
『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』
『ノルウェイの森』
『ダンス・ダンス・ダンス』
国境の南、太陽の西』★★★☆
『ねじまき鳥クロニクル 「第1部 泥棒かささぎ編」』
『ねじまき鳥クロニクル 「第2部 予言する鳥編」』
『ねじまき鳥クロニクル 「第3部 鳥刺し男編」』
『スプートニクの恋人』
海辺のカフカ』★★★★
アフターダーク』★★★☆
1Q84 book 1 <4月-6月>』★★★★
1Q84 book 2 <7月-9月>』★★★★
1Q84 book 3 <10月-12月>』★★★★
『ねむり』
色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』★★★★


短編
『中国行きのスロウ・ボート』
『カンガルー日和』
『象工場のハッピーエンド』
『螢・納屋を焼く・その他の短編』
『回転木馬のデッド・ヒート』
『パン屋再襲撃』
『ランゲルハンス島の午後』
『TV ピープル』
村上朝日堂 超短篇小説 夜のくもざる』★★★☆
『レキシントンの幽霊』
神の子どもたちはみな踊る』★★★☆
『象の消滅 短篇選集1980-1991』
『東京奇譚集』
『めくらやなぎと眠る女』


エッセイ
『村上朝日堂』
『映画をめぐる冒険』
『村上朝日堂の逆襲』
『‘THE SCRAP’懐かしの一九八〇年代』
『日出る国の工場』
『村上朝日堂はいほー!』
『やがて哀しき外国語』
『村上朝日堂ジャーナル うずまき猫のみつけかた』
『村上朝日堂はいかにして鍛えられたか』
『村上ラヂオ』
『ポートレイト・イン・ジャズ』
『ポートレイト・イン・ジャズ2』
『波の絵、波の話』
『PAPARAZZI』
『使いみちのない風景』
『走ることについて語るときに僕の語ること』
『おおきなかぶ、むずかしいアボカド 村上ラヂオ2』


紀行文
『雨天炎天 ギリシャ・トルコ辺境紀行』
『遠い太鼓』
『辺境・近境』
『辺境・近境 写真篇』
『もし僕らのことばがウィスキーであったなら』
『シドニー!』
『シドニー!コアラ純情篇』
『シドニー!ワラビー熱血篇』
『東京するめクラブ・地球のはぐれ方』


絵本
『羊男のクリスマス』
『ふわふわ』
ふしぎな図書館』★★★☆


評論、対談、他
『意味がなければスイングはない』
『若い読者のための短編小説案内』
『またたび浴びたタマ』
『ウォーク・ドント・ラン 村上龍VS村上春樹』
『村上春樹、河合隼雄に会いにいく』
『夢を見るために僕は目覚めるのです


ノンフィクション
『アンダーグラウンド』
『約束された場所で underground 2』


共著
『夢で会いましょう』
『翻訳夜話』
『翻訳夜話 2 サリンジャー戦記』

1Q84 BOOK 3

1Q84 BOOK 31Q84 BOOK 3
(2010/04/16)
村上 春樹

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こは世界にただひとつの完結した場所だった。どこまでも孤立しながら、孤独に染まることのない場所だった。


天吾と青豆、視点が交互に切り替えられて進んできたこの物語に、牛河視点が混じってくる。牛河は教団から指示を受け、教祖を殺害したと思われる青豆へと近づいていく。

青豆に繋がる人物かもしれない天吾を監視し始める牛河。視線に気づき、出て行く美少女ふかえり。天吾と再会しなければならない青豆は、隠れ家を動かず、危機が迫る。

再会を果たした二人は、降りてきた場所から戻ろうとするのだが……。天吾、青豆、牛河のところへやって来る謎のNHK職員だけは正体が分かるのだが、空気さなぎもリトルピープルも、よく分からないまま終わってしまった。


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1Q84 BOOK 2

1Q84 BOOK 21Q84 BOOK 2
(2009/05/29)
村上 春樹

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心から一歩も外に出ないものごとは、この世界にはない。心から外に出ないものごとは、そこの別の世界を作り上げていく。書き下ろし長編小説。


殺し屋、青豆。ベストセラーとなった「空気さなぎ」のゴーストライター、天吾。交わらないまま交互に続いてきた物語が、過去の接点から現在にかけて、次第に関わりを持ち出す。

少女を襲ったとされるカルトの教祖を暗殺する事になる青豆。しかし、「空気さなぎ」に書かれているリトルピープルが空想ではなく、現実側を侵食して来る。これはまだ再会していない天吾の側も同じで、月がふたつある世界へと放り込まれる。

ページ数の割にはサクサク読めるけど、いつもと同じくリトルピープルが何なのか、訳がわからないまま終わりそうで怖い。羊男のシリーズも、幻想的な村上ワールドに放り込まれるばかりで、よく分からないままだったし。


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1Q84 BOOK 1

1Q84 BOOK 11Q84 BOOK 1
(2009/05/29)
村上 春樹

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1949年にジョージ・オーウェルは、近未来小説としての『1984』を刊行した。そして2009年、『1Q84』は逆の方向から1984年を描いた近過去小説である。そこに描かれているのは「こうであったかもしれない」世界なのだ。私たちが生きている現在が、「そうではなかったかもしれない」世界であるのと、ちょうど同じように。


題名がジョージ・オーウェルの「1984」に似ていると思ったら、時間の方向を逆に向けた近過去小説なのか。1984年という設定なのだが、古臭さは感じず、油断すると現代か近未来の話のように思えて来る。時代を感じさせるような要素は極力排除しているからだろうけど。

高速で渋滞に巻き込まれた殺し屋の女が、タクシーの運転手に勧められて歩いて高速を降りたら、自分の知っている世界とは少しズレた場所に迷い込んでしまう。ほとんど同じ日本だが、警察の装備が向上しており、自分が知らない大事件が関わっている事に気づく。

小説家志望の塾講師が編集者に依頼され、17歳の美少女が応募してきた小説を書き直して受賞させる事に。カルト化した宗教法人から逃れてきた少女には識字障害があり、本はほとんど読めなかった。

殺し屋の青豆と、小説家志望の天吾の物語が交わらないまま交互に続いて行くのだが、過去の出来事やカルト化する集団の起こした事件が接点となって行く。



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国境の南、太陽の西

国境の南、太陽の西 (講談社文庫)国境の南、太陽の西 (講談社文庫)
(1995/10/04)
村上 春樹

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一人っ子として、ある欠落感をもっていた始に、小学校時代、同じ一人っ子の女の子の友達が出来る。25年後、37才の時、2人は再会し、激しい恋におちる――。今の僕という存在に何らかの意味を見いだそうとするなら、僕は力の及ぶかぎりその作業を続けていかなくてはならないだろう―たぶん。「ジャズを流す上品なバー」を経営する、絵に描いたように幸せな僕の前にかつて好きだった女性が現われて―。日常に潜む不安をみずみずしく描く話題作。


やはり村上春樹は上手いが、羊男系のやつと比べて、主人公がなんだか嫌な感じで好きになれなかった。さほど努力もしていないような男が、なんとなく人生の階段を登っていく成功物語はちょっとなぁ。そして、その男の人生に巻き込まれた人々は(特に女性)酷い人生に転落しているのが……。 Orz


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夜のくもざる―村上朝日堂超短篇小説

夜のくもざる―村上朝日堂超短篇小説夜のくもざる―村上朝日堂超短篇小説
(1995/05)
村上 春樹安西 水丸

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村上春樹が四年にわたって書きためた超短編から、表題作をはじめ37編をチョイス。都会の片隅からひろい上げた、お洒落で、ライトな、そしてちょっとホロ苦い物語。安西水丸によるカラーイラスト入り。


なんだか訳のわからない短編ばかりで仕上がっているが、実は広告用に書かれた話を纏めた物らしい。広告用とは言っても、話の内容は売り出す商品とは何の関係も無いものばかりなのだが。村上春樹が好きに話を書いて、安西水丸がイラストを描いて、言い訳程度に商品が載っている、という感じだったらしい。まぁ、村上春樹好きなら楽しめると思う。


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ふしぎな図書館

ふしぎな図書館ふしぎな図書館
(2005/02/08)
村上 春樹

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村上春樹と佐々木マキが贈る大人のためのストーリー魅力溢れる絵。ぼくは「図書館」から、脱出できるのだろうか?懐かしい“羊男”も登場。


大きさはほぼ文庫サイズなのに、一応ハードカバーだから、図書館の棚で通常サイズの本に圧迫され埋もれていた。小さいのに無理やり同じとこに並べられたら行方不明になりそうで心配だ。

子供が読めるように、平易な文章で書かれた絵本になっているけど、内容的にはホラーだから、大人向けになっている。怖くはないのだが、図書館の下にある謎の地下迷宮に監禁されてしまう。知識を吸収したあとは、邪悪なジジイに脳みそをチューチュー吸われてしまうらしい。

ある日、主人公は借りていた本を図書館に返却しに来た。返却した本は『潜水艦の作り方』と『ある羊飼いの回想』だった。後でドイツ人絵師でリメイクされる作品と比べると、書名が微妙に違っていたりする。

次の本を借りようとしたら、指示された地下室の部屋には、妙なジジイがいて、オスマントルコ帝国の税金のあつめ方について知りたいというと、『オスマントルコ帝国の税金事情』、『オスマントルコ帝国の税金あつめ人の日記』、『オスマントルコ帝国における税金不払い運動とその弾圧』を渡される。

三冊は貸出禁止だったので、図書館で読まなければいけないのだが、読むための場所も決められていて、ジジイに案内あれる。何故か図書館の地下には迷宮が広がっており、主人公は監禁されてしまう。渡された本を暗記するまで閉じ込められたままである。

そこには身の回りの世話をするために羊男がいて、本の内容を暗記した後は、脳みそを吸われる事を知らされる。羊男とは別に、謎の美少女も登場するのだが、その娘の手引きにより、新月の夜に脱出する事になった。

こっそり逃げ出すはずが、邪悪なジジイには行動がバレていて、危機に陥る。ジジイと一緒に、自分を噛んだ事のある大きな犬がいて、飼っていたムクドリを噛んでいた。いきなりムクドリが巨大化するというわけの分からない現象が起こり、その隙に主人公は逃げ出す事が出来た。

よく分からない事が多い小説である。何で図書館の下に迷宮があるのか。邪悪なジジイは何者なのか。何で羊男が地下にいるのか。そもそも羊男とは何者なのか。何で靴を置いて来るのか。何でムクドリが巨大化するのか。

脱出時点で少女と羊男がいなくなってしまうのだが、羊男はこちら側には出られないのかもしれない。家に帰るとムクドリがいなくなっていたのだが、巨大化したムクドリの声が少女だったので、きっと少女の正体がムクドリで、邪悪なジジイから主人公を助けるために身を投げ出したのだろう。

一番謎なのは、最後の最後で、母親が原因不明の病で亡くなる事だった。何で母親が死ぬのだろうか。この部分だけは本当にわけが分からない。



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海辺のカフカ

海辺のカフカ (上) (新潮文庫)海辺のカフカ (上) (新潮文庫)
(2005/02/28)
村上 春樹

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海辺のカフカ (下) (新潮文庫)海辺のカフカ (下) (新潮文庫)
(2005/02/28)
村上 春樹

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「君はこれから世界でいちばんタフな15歳の少年になる」―15歳の誕生日がやってきたとき、僕は家を出て遠くの知らない街に行き、小さな図書館の片隅で暮らすようになった。家を出るときに父の書斎から持ちだしたのは、現金だけじゃない。古いライター、折り畳み式のナイフ、ポケット・ライト、濃いスカイブルーのレヴォのサングラス。小さいころの姉と僕が二人並んでうつった写真…。


半分、夢の中での出来事の様な不思議な話。この流れる様な文章は、一体どこから沸き出して来るのだろうか。これも、村上春樹だから完成したのであって、普通の人(ここには普通の作家も含む)が書いたらなら、ただの家出少年の話で、その辺に転がっている駄作と化した事は間違いないだろう。

家出少年、猫と話す老人、太平洋戦争時の山の中。全く関係無い様な話が、徐々に一点に収束していく。なんだかよくわからないまま結末を迎えてしまったが、他の著作とも絡み合ってる? 『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』『ねじまき鳥クロニクル』も読んでみないと確認出来ないけど……。



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1973年のピンボール

1973年のピンボール (講談社文庫)1973年のピンボール (講談社文庫)
(2004/11)
村上 春樹

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さようなら、3フリッパーのスペースシップ。さようなら、ジェイズ・バー。双子の姉妹との“僕”の日々。女の温もりに沈む“鼠”の渇き。やがて来る一つの季節の終り―デビュー作『風の歌を聴け』で爽やかに80年代の文学を拓いた旗手が、ほろ苦い青春を描く三部作のうち、大いなる予感に満ちた第二弾。


第83回芥川賞候補作。

<僕>三部作の二作目。ここまでは、サラサラと流れるような文章で書かれる、倦怠感漂う普通の青春小説。これを読んだ時点では、まさか完結編であんな結末が用意されているとは夢にも思わないだろう。(このシリーズが展開されていた当初は三部作で、これにダンス・ダンス・ダンスも加わっているらしいが未読。)

恩田陸ほどではないけれども、村上ワールドも少しずつ他の作品と関係している。直子という女性が出てくるが、これは「ノルウェイの森」と同一人物なのか、或いはその原型か? 「ゆっくり歩け、そしてたっぷり水を飲め」という台詞は、ほぼ同内容で「アフターダーク」でも出てくる。

「風の歌を聴け」と「羊をめぐる冒険」に挟まれて、やや地味な感じになっている本作ではあるが、近年のツマラナイ受賞作に劣っているとは思えない。

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風の歌を聴け

風の歌を聴け (講談社文庫)風の歌を聴け (講談社文庫)
(2004/09/15)
村上 春樹

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1970年の夏、海辺の街に帰省した<僕>は、友人の<鼠>とビールを飲み、介抱した女の子と親しくなって、退屈な時を送る。2人それぞれの愛の屈託をさりげなく受けとめてやるうちに、<僕>の夏はものうく、ほろ苦く過ぎさっていく。青春の一片を乾いた軽快なタッチで捉えた出色のデビュー作。群像新人賞受賞。


第22回群像新人賞受賞作。
第81回芥川賞候補作。


村上春樹のデビュー作である。もう少し面白かった記憶があるのだが、どうやら思い出補正が入っていたらしく、再読してみたら、芥川賞好みのよく分からない小説だった。

「考えるな!感じろ!」系の小説なので、あれこれ余計な事を考えたり、文章の意味を考えたり、何か隠されているのではないかと裏読みする人には不向きなのかもしれない。

このわけが分からない感じは、かなり芥川賞好みの作品になっていると思うのだが、何で受賞していないのか謎である。初回で受賞させるのは止めよう程度の、嫌らしい大人の事情でも入ったのかもしれないが、芥川賞は村上春樹を取りこぼした節穴賞になってしまった。


自分の文章について多くをデレク・ハートフィールドに学んだ主人公が過去を振りかえって語る、1970年の夏の物語になっている。語られる期間は1970年8月8日から8月26日までである。つまり、主人公が過ごした19日間の夏の日々が語られるだけになっている。主人公は一人称で“僕”と名乗っているが、誰なのかは分からない。

当時、大学生だった主人公は、酔っぱらっている間に知り合いになった鼠(これは動物ではなくて、あだ名である)と行動していた。鼠は金持ちを嫌っているのに、自分の家も金持ちである。「金もちなんて・みんな・糞くらえさ。」と言い出すが、鼠自身も糞だという事になる。

飲酒運転で鼠の車は大破するのだが、同乗した主人公と鼠が怪我をしていないのでツイていると喜び、車の心配をしない程度には金持ちである。自業自得とはいえ、普通の大学生なら世界の終りに来たような憂鬱な気分になる事だろう。

本を読まない鼠がジェイズ・バーで酔っぱらってどうでも良い話を始めるか、主人公が過去のエピソードを交えて自分語りを始めるくらいで、ほとんど何も起こらない。

自分語りや、時々挿入されるラジオ局での語り口調が、斜に構えた感じのキザな文体なので、読んでいてむず痒くなって仕方がない。急に死んでしまった過去の彼女というのは、ノルウェイの森で死んでしまう女の子なのだろうか。語られる夏の短い期間に四本指の女性も登場するのだが、フラグは立たなかった。


Amazonでも、やたらレビューが多いのだが、あまり内容に触れず、自分語りを始めてしまう人が結構いる。どうやら主人公だけでなく、読者まで自分語りをしたくなるような小説のようである。幸い、私は黒歴史だらけで、昼の光が当たるような過去なんて無いので、突発性自分語り症候群を発病する心配は無かった。


昼の光に、夜の闇の深さがわかるものか。

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アフターダーク

アフターダーク (講談社文庫)アフターダーク (講談社文庫)
(2006/09/16)
村上 春樹

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時計の針が深夜零時を指すほんの少し前、都会にあるファミレスで熱心に本を読んでいる女性がいた。フード付きパーカにブルージーンズという姿の彼女のもとに、ひとりの男性が近づいて声をかける。そして、同じ時刻、ある視線が、もう一人の若い女性をとらえる―。新しい小説世界に向かう、村上春樹の長編。


たった一晩の物語なのだけど、深夜のファミレスから始まって、夜が明けるまでの間に様々な出来事が起こる。深夜の繁華街をうろつく妹と、眠りから覚めなくなった姉、現実と夢が交錯していてわかりにくい。妹の部分だけなら普通の小説だけど、眠り続ける姉が出てくる部分が不可解な構成で、村上春樹が何を言いたかったのか理解出来なかった。


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神の子どもたちはみな踊る

神の子どもたちはみな踊る (新潮文庫)神の子どもたちはみな踊る (新潮文庫)
(2002/02)
村上 春樹

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1995年1月、地震はすべてを一瞬のうちに壊滅させた。そして2月、流木が燃える冬の海岸で、あるいは、小箱を携えた男が向かった釧路で、かえるくんが地底でみみずくんと闘う東京で、世界はしずかに共振をはじめる…。大地は裂けた。神は、いないのかもしれない。でも、おそらく、あの震災のずっと前から、ぼくたちは内なる廃墟を抱えていた―。深い闇の中に光を放つ6つの黙示録。


村上春樹の短編集。やはり、春樹って天才だと思う。一体どこから、こんなサラサラと水が流れるような文章が出てくるんだろう? 神戸の震災が味付け的に絡んでるのは、その頃に書かれたのかな? 結構、訳のわからない話が多いけど。「かえるくん、東京を救う」なんて、ファンタジーと妄想が混ざった感じの、微妙な世界を構築しております。


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