夏への扉

4152090596夏への扉[新訳版]
ロバート・A・ハインライン 小尾芙佐
早川書房 2009-08-07

by G-Tools

ぼくが飼っている猫のピートは、冬になると“夏への扉”を探しはじめる。家にたくさんあるドアのどれかが夏に通じていると信じているからだ。そしてぼくもまた、ピートと同じように“夏への扉”を探していた。最愛の恋人と親友に裏切られ、仕事を失い、生命から二番目に大切な発明さえも奪われてしまったぼくの心が、真冬の空のように凍てついてしまったからだ。失意の日々を送っているぼくにも、ピートが信じる“夏への扉”は見つかるのだろうか。


かなり昔、ハインラインの最高傑作だと、ハインラインが大好きなSF者な方から渡されて読んだのだが、中身をほとんど覚えていないので、新訳版を図書館から借りて来た。無茶苦茶、面白かった気がしたのだが、かなり思い出補正が入りまくっていたようである。

主人公のダンは、ベルというクズ女の色香に惑わされ、会社を乗っ取られてしまう。親友のマイルズにも裏切られていた。さらに、冷凍睡眠で30年後の未来世界へ飛ばされてしまう。

飼い猫のピートを過去世界で失い、30年後に目覚めてみれば、自分が得るはずだった投資による利益も吹っ飛んでいて、ほぼ無一文に近い状態になっている。

このままならBAD ENDなのだが、軍が極秘で研究していたタイムマシンの存在を知り、過去に戻ろうとする。このタイムマシンは、机の引き出しから出て来る青い悪魔が所有するような高性能のものではなく、同じ質量のものを過去と未来へ飛ばすという、ギャンブル要素の高すぎる代物だった。

タイムマシン本体で好きな時代へ行けるのではなく、過去と未来どちらかに身一つで飛ばされるのである。ダンは主人公補正で行きたかった過去方向に飛ぶ事が出来たのだが、50%の確率だと、私が飛んだら絶対に未来にしか行けないと思う。

未来世界では、裏切り者のマイルズはすでに死んでいて、クズ女のベルは落ちぶれたババアになっているので、クマの着ぐるみで「ねえねえ、今どんな気持ち?」と言ってあげたくなる。ざまあwwwwwwとしか思えない。

過去世界で色々と仕込んで、まだ10歳だったマイルズの血の繋がらない娘と結婚する事に関しては、このロリコンめリア充爆発しろ! と言いたい。

かつて読んだ時は「無人島に持って行きます」レベルだったのに、再読すると普通の秀作SFくらいにしか思えなかったのは、私の人生の扉が夏へは繋がっていなかったからかもしれない。全ての扉が冬どころか、出口の無い重力井戸のような場所にしか繋がっていなかったよ。もう扉の向こうじゃなくて来世に期待するしかない\(^o^)/

ダンが未来世界をユートピア的に捉えているのも、上手くシンクロ出来なかった原因のひとつかな? 私にとって未来世界は、人類が爆発したらいいのにと思いたくなるようなディストピアでしかなかった。
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月は無慈悲な夜の女王

月は無慈悲な夜の女王 (ハヤカワ文庫 SF 207)月は無慈悲な夜の女王 (ハヤカワ文庫 SF 207)
(1976/10)
ロバート A.ハインライン

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原題を勝手に変えてしまうというのはよくある話で、実はこれもそのまま訳したら「月はきびしい女教師」になってしまうのだ。時々、センスの無い人が的外れな邦題つけている場合もあるが、これに関しては見事というしかない。女教師では売れないだろう。絶対に、無慈悲な女王のほうが良い。

近未来世界において、月は世界連邦の植民地となっていたが、実情は犯罪者や政治犯を投げ込んだだけの究極の監獄であった。どこにも逃げられない、最強の監獄である。すでに、犯罪者だけではなくてその子孫も生まれ、独自の世界を形成してはいるのだが、一方的に搾取されるだけの存在である事は、従来の植民地と何も変わらなかった。

ここで、人工知能コンピューターが登場する。それは人間同様に思考する事が出来た。しかし、その事は彼(コンピューター)に関るエンジニアしか知らなかった。他に誰も、機械が自律的に思考するなどと考えはしなかったのだ。彼は生きていた! 攻殻機動隊的に言えば、ゴーストが宿ったのだ。その人工知能を仲間にして、月世界を独立させるための戦いが始まる。

経過がアメリカ独立戦争に似ていて面白い。これは自国に対する、ハインラインの皮肉なのでしょうか? ともかく、作者が巷で言われているような単なる右翼ではないという事は、本書を読めば判るでしょう。

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