図書館奇譚

4103534303図書館奇譚
村上 春樹
新潮社 2014-11-27

by G-Tools

図書館の地下のその奥深く、羊男と恐怖と美少女のはざまで、ぼくは新月の闇を待っていた。あの名短篇が、ドイツの気鋭画家によるミステリアスなイラストと響きあう。新感覚アートブック第三弾!


図書館で借りた「潜水艦建造史」と「ある羊飼いの回想」の二冊の本を返しに来た主人公は、新しい本を探すため、地下にある107号室に案内される。

そこには老人がいて、どんな本を探しているのか聞かれたので、思わず「オスマン・トルコ帝国の税収政策について知りたい」と答えてしまう。老人は本を捜しに行き、「オスマン・トルコ収税史」「オスマン・トルコ収税史の日記」「オスマン・トルコ帝国内における非納税運動とその弾圧について」という三冊を差し出した。

それらの本は貸出禁止だったので、奥の部屋で読まなければならなくなってしまう。本を読むために老人の後をついて行くのだが、そこは迷宮になっていて、主人公は頭が混乱してくる。やがて、暗い部屋に案内され、転げ落ちないように階段を進むように言われてしまう。

老人が規則だからと鍵をかけてしまったので、進むしかなくなるのだが、階段を下り切った部屋には、羊男がいた。羊男に案内されて読書室へ向かうが、辿り着いたのは牢屋だった。

羊男が一か月後に試験をするので、渡された本を暗記しなければならない。ここに来た人間は、知識の詰まった脳みそを吸われてしまうらしい。知識を貸し出すだけでは損をするばかりなので、何処の図書館でも同じ事をやっていると言うのだが……。

牢屋には美少女が食事を運んでくるのだが、羊男はそんな人物は知らない。食事は自分が運んできたと言う。だが、美少女は再び現れた。羊男にとって自分がいない世界でも、自分がいないという事にはならないと言う。どうやら、いろんな世界が混ざっているようである。

美少女は、脳みそを吸われる前に逃げろと助言する。新月の日だけ老人が眠るので、その隙に逃げ出せと言う。新月の日、主人公は羊男と一緒に逃げ出す。音を立ててはいけないから、高級な革靴を脱ぎ捨てて。途中で革靴が気になって、取りに戻りたいと言い出すのだが、何で最初から持ち運ばないのか。

老人のところまで辿り着くと、老人は寝ておらず、脱走する者を待ち構えていた。側には、自分に噛みついた恐ろしい犬もいる。宝石入りの首輪をつけた緑色の目をした犬で、足は太く、爪が六本もある。犬はムクドリを咥えていたが、そのムクドリが大きくなり始めた事で、隙が生まれる。

閲覧室の窓をこじ開けて、早朝の図書館から逃げ出すのだが、いつの間にか、羊男がいなくなり、自分だけになっていた。羊男と美少女がどうなったのか分からないのは不気味である。

この話は百貨店のPR誌に掲載されて、『カンガルー日和』に収められた。その後、『村上春樹全作品1979~1989』に収録する際、変更が加えられる。さらに、絵本化する際に大幅に書き直し『ふしぎな図書館』となった。今回はドイツで出版されたバージョンが元になっていて、文章も変更されている。同じ話だけど、4種類のバージョンが存在するなんて。


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