異郷の友人

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上田 岳弘
新潮社 2016-01-29

by G-Tools

阪神大震災を予言し、信者を増やす淡路島の新興宗教。イザナキ、イザナミの国生みの地で、新たな世界創世を説く教祖のもと、アメリカ西海岸から謎の天才ハッカー集団が訪ねてくる。彼らは何を企んでいるのか。すべてを見通す僕とは、いったい何者か?世界のひずみが臨界点に達したとき、それは起きた。世界の終末の、さらに先に待つ世界を問う、大注目の新鋭の集大成!芥川賞候補作。


第154回芥川賞候補作。

主人公の山上甲哉は前世記憶を持っている。前世だけでなく、それ以前も存在しており、全ての人生を完全に記憶したまま生きている。一度覚えた事は忘れないので、今回の山上甲哉という人生においては、かなり手抜きをしている。適度にサボるのだが、前世も現代という訳ではないから、今までに習得した歴史や物理、算術の知識が間違っていたりする事もあって、成績が下がって来る。

それでも、それなりの大学に受かり、それなりの食品卸会社に就職し、一般人として生活している。前世記憶を持つというのが本当なのか、それとも勝手に信じているだけの電波系の人なのかは、最後になるまで分からないのだが、前世では歴史に残る大物だったりするのだから、もっと頑張れば良いのになぁ。でも、何度も何度も産まれて来るのなら、毎回全力を出すのは嫌になってくるか。

今までの人生と違って、淡路島で新興宗教団体を興したSという教祖様と、スタンフォード大学に進学したJという野心家の男の人生がリンクしてしまう。相手は自分の事を知らないが、自分は相手の人生を好きに覗く事が出来るのである。

実際には会った事も無かったので、その二人が実在するのか、自分が勝手に作った脳内妄想に過ぎないのか分からなかったが、Jに関しては実在する事が分かったので、日本語でeメールを送り始める。

Jは日本語が読めない外国人だったので、スパムと思いそのままメールを捨てていたのだが、彼が裏組織に所属していたため、上司のEが奇妙なメールに気づいてしまう。Eは世界を本当に支配している者に成り変わろうという野心を持っており、転生を繰り返す山上甲哉の力を利用して世界を正しいあり方にもどそうと、日本までやって来る。

山上甲哉は人間ではなく、神ではないかという疑惑が浮かぶのだが、主要な人物が東北に集結しているところで、東日本大震災が発生して全てが終わってしまった。

何これ? 転生を続ける神の力で何かを始めるのかと思ったら、大震災に巻き込まれるだけの話じゃないか。エンタメ系の話かと思っていたのに、やはり芥川賞系統の純文学だった。他の人間の人生とリンクするような転生者を起用しておいて、こんなどうでも良い結末しか描かれないなんて……。

とりあえず、主人公の山上甲哉が電波さんなのか、本当に転生者だったのか、その結論だけは出たけど。


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