よるのばけもの

4575240079よるのばけもの
住野 よる
双葉社 2016-12-07

by G-Tools

夜になると、僕は化け物になる。寝ていても座っていても立っていても、それは深夜に突然やってくる。ある日、化け物になった僕は、忘れ物をとりに夜の学校へと忍びこんだ。誰もいない、と思っていた夜の教室。だけどそこには、なぜかクラスメイトの矢野さつきがいて――。


夜になると化け物になるというのは比喩表現なのかと思ったが、本当に変形して異形の何かになるのか。真っ黒で六本の脚を持ち、目玉が八つもついている。どう考えても、地球の生物ではない。クトゥルフ神話大系に出てきそうな何かになっているのだが、この化け物設定があまり生かされないのが意外である。

宿題を学校に置き忘れたので、安達が化け物の姿で取りに行ったところ、何故か深夜の学校に、虐められっ子の同級生、矢野さつきが居た。化け物の姿をしているのに、何故か矢野は恐がる様子もなく、正体が安達であると見破ってしまう。

正体をバラされたくなければ、深夜の学校に来るよう言われてしまったので、翌日から通う事になってしまった。昼間は人間の姿なので、虐められっ子とは接点が無いのだが、夜休みの時間になると、一緒に過ごし、色々と話す事になる。

矢野さつきは、好きな呪文がファイヤ派なのかかメラ派なのか、ハリー・ポッターを観るのは映画派なのかDVD派なのか、ラピュタ派なのかナウシカ派なのか等、どうでもよいような事をよく聞いて来る。

教室がおかしな事になっているのに、良いクラスだなんて、教師は馬鹿と節穴とクズしかいないのは、現実と同じ感じである。虐めの最初のトリガーを引いているのが、矢野さつき本人だから仕方がない部分もあるのだが、虐めは無視までだろう。誰しも、嫌いな人間と無理に付き合わないくらいの権利はあるからね。しかし、それ以上は、虐めではない。物を壊したら器物損壊罪、物を隠したり捨てたら窃盗罪、暴力行為は暴行罪、傷害罪であり、全て犯罪だから。この国は、犯罪者を「虐め」の一言で片づけすぎである。

夜休みと、憂鬱な昼間の学校が、交互に語られるのだが、夜の学校で元田という生徒が化け物を見た事を聞かされる。元田は夜の学校に侵入して、化け物を捕まえようとしているらしい。

クラスメイトの靴がボロボロにされるという事件が起こるが、証拠もないのに元田は矢野さつきが犯人だと決めつける。元田はクズ野郎だ。というか、このクラスにはクズしかいない。夜休みの時間は良いのだが、このストレスばかりかかる不愉快な昼の時間は、後で綺麗に片付くのか?

夜の化け物は一体だけだったが、昼間はヒロイン以外の全員が化け物だった。虐めに気づいている教師ですら、「難しいことはいい、生き延びなさい。大人になればちょっと自由になれる」としかアドバイス出来ない化け物だった。確かに、大人になれば逃げる自由くらいは与えられる分、ひたすら耐えるか死ぬかの二択しか用意されない中学時代よりはマシと言えるかもしれないけど、それで事態が好転する訳ではないからね。

クラス内部の同調圧力によるファシズムが、そのまま日本の姿でもあるわけだし。学校の外に出たところで、この国は全員が同じ時期に同じ方向を向いて同じ事をするように、同調圧力で強制しているじゃないか。大人になって、クラスの外側に出られるようになり、ほんの少しの自由を得たところで、待ち構えているのは日本という名前の、より大きな教室でしかない。

何も解決しないどころか、この先は卒業まで酷い事になるのが目に見えているし、最後まで不快感が残る話のままだった。イヤミスと比べたらマシだけど、心が荒んで化け物になりそうだ。


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