パン屋を襲う

410353429Xパン屋を襲う
村上 春樹 カット メンシック
新潮社 2013-02

by G-Tools

僕は二度、パン屋を襲撃した。一度めは包丁を体に隠して、二度めは散弾銃を車に載せて―。初期作品として名高い「パン屋襲撃」「パン屋再襲撃」が、時を経て甦る。ドイツ気鋭画家のイラストレーションと構成するヴィジュアル・ブック。


『パン屋再襲撃』をドイツ人画家カット・メンシックの絵をつけてヴィジュアル・ブックにしたもの。『図書館奇譚』のように、後書きで変更点が示されてはいないので、内容はそのままなのかもしれない。『パン屋再襲撃』が手元に無いので、比べられないから分からないけど。

「パン屋襲撃」と「パン屋再襲撃」が収録されている。「パン屋襲撃」のほうは、二日間も水しか飲んでいなかった二人組が、空腹感を満たすために、パン屋を襲撃しようとする。等価交換すべきものを持っていないので、食べるためには襲撃するしかないのだが、何故それがパン屋なのかは謎である。

パン屋は、商店街の中にある、ごく普通のパン屋だった。パン屋の親父は頭の禿げた50すぎの共産党員だった。当時の村上春樹が共産主義について何か思うところがあったのか、私はベテランのハルキストではないので、ただファッションとして共産主義者のパン屋を出したのかは分からない。

パン屋の中には、客がオバサンだけだったのだが、こいつが予想外に厄介な相手であった。買うべきパンを悩みまくり、なかなか出て行ってくれないのだ。パン屋の親父はワグナーを聞いていた。ワグナーが出て来るあたり、共産主義者も、ただのファッションで出している可能性が高くなった気がする。

やっとオバサンが出て行ってくれたので、パン屋を襲撃するのだが、パン屋の親父は殺されたくないからパンは好きなだけ食べても良いという。悪に走っている自分達が恵みを受けるわけにはいかないので、交渉の結果、ワグナーを聞けば、パンを食べても良いという事になってしまう。


「パン屋再襲撃」は、パン屋を襲撃してから随分と経ってからの話。パン屋を襲撃した仲間とは別れ、大学に戻って無事に卒業し、法律事務所で働きながら司法試験の勉強をし、妻と知り合い結婚した。まっとうに生きているのに、いきなりパン屋を襲撃した時のような空腹に襲われる。

その空腹は、妻にも伝染し、呪いのようになっている。パン屋を襲撃した事があると話してしまった結果、もう一度パン屋を襲わないと、呪いが解けないと妻に言われる。パン屋を探し始めたが、夜中だから何処も開いていない。何故か妻はレミントンのオートマティック式散弾銃を持っていて、大事になってくるのだが、パン屋が開いていないので、マクドナルドで妥協する事にする。

パン屋再襲撃の予定が、何故かマクドナルド襲撃になってしまったが、実名で出してマクドナルドに怒られたりはしないのか? 村上春樹ほどネームバリューがあれば、フィクションの中で襲われても宣伝になるから構わないのだろうか?

散弾銃で脅し、ハンバーガーを30個も焼かせるのだが、パン以外は奪わないというわけの分からないマイルールによって、飲み物の代金はちゃんと払う。例えマクドナルドでも、襲撃したらもう人生終了なんじゃないのかと思ったが、この夫婦は捕まらず、形を変えて『ねじまき鳥クロニクル』の世界に行くのか? 『ねじまき鳥クロニクル』が未読なので、どう繋がっているのか分からないけど。


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